衰退する日本で起業した外国人に教わったこと

2017年07月21日 06:00

バブル崩壊後、失われた20年と言われ、日本は経済成長とは無縁で、世界から取り残された国になってしまったと言われています。一方では、私の体感ですが、20年前に比べて外国人の経営するエスニック料理の店などが、増えている気がしています。先日、友人と行った飲食店も、ネパール人経営者が先月オープンしたばかりでした。気になったので、どうして、あえて日本という場所で起業をしたのか、その理由をネパール人経営者に聞いてみました。

私の雑談に気さくに応じてくれたのは、江古田に『MODERN INDIAN RESTAURANT ひまわり食堂』という店をオープンしたばかりの、ビバス・パウデイルさんという30代半ばのネパール人の方です。

ビバスさんは、人と同じ事をしていてダメという考えを持っていて、ひまわり食堂で出している料理も独特です。下に写真で紹介しましたが、鉄鍋でグツグツ煮えている油そばの上にトンカツが乗っていて、それをナンと一緒に食べる『満州トロトロ担々油そば(満トロ)』というメニューが看板だそうです。味は、とっても美味しかったですし、ラーメン好きの人々の間で話題になりつつあるそうです。

さて、ビバスさんは、旅行関連の専門学校の学生として来日したそうです。日本に来た理由は、とても良いイメージを持っていたからだそうです。それを聞いて、きっとビバスさんも、日本の漫画やアニメのファンなのだろうと私は思いました。しかし、全く違っていて驚きました。あえて、誰のファンなのかと言えば、日本のODAの実施機関であるJICAでした。ビバスさんの出身の街に無かった水道を、JICAが作った事で日本に良い印象を持ったそうです。

ビバスさんは、最初から、日本で何かしらをやりたと思って来日したそうです。ですが、具体的に何をやるかというのは、明確で無かったそうです。そして、学生生活をしながら、言葉の問題でクビになったりしながらも、日本で飲食店などを中心に、様々なアルバイトを経験しました。そうやって、日本で生活していく中で、ネパールで想像していた日本人と、現実の日本人が違うことに気づいたそうです。例えば、ビバスさんは、日本は車社会なので、日本人は少ししか歩けないと思っていたそうです。そこまで、日本の事を知らない状態で来日していたのかと、ビバスさんの話は聞けば聞くほど驚かされました。

そうして時が経ち、学生生活も終えたビバスさんは、ついに、日本で商売を始める事を決意しました。その時、本当は旅行会社を始めようと思ったそうです。ですが、それは難しそうという事で、飲食関連での起業を決意したそうです。そして、まずは北千住に最初の店をオープンし、それ以降、思ったほど儲からないと言いながらも、着実に店舗を増やしているそうです。

私は、それを聞いて、再び驚きました。旅行会社をやるのも大変でしょうけど、飲食店だって初期投資が大変そうだからです。そこで、きっとビバスさんには、何らかの在日ネパール人のコネがあったりするのかなと思いました。しかし、それを聞いてみたら、当時27歳のビパスさんは、初期投資の750万円を自分で用意して店をオープンしたと教えてくれました。

日本人にだって、27歳で750万円を用意するは、かなり大変な事ですよね。恐らく、自分で貯めるだけでは用意できずに、親などから借り入れる必要があるんじゃないでしょうか。だから、きっとビバスさんの実家が大金持ちで、そこから開業資金を援助してもらったのだろうと私は予測しました。その予想は正解でしたが、半分だけでした。

ビバスさんは自分で働いたお金と、親に出してもらって750万円を用意したそうです。実家は、どのぐらいの金持ちなのかというと、1000万円ぐらいの家に住んでいると教えてくれました。確かに、ネパールの平均年収は30万円ほどだそうです。だから、1000万円の家に住めるって事は、ネパール人の中では、相当なお金持ちなのでしょう。

とはいっても、自宅の金額と、たいして変わらないような金額を出資するのは、簡単な事では無いはずです。そこで、資金を出してくれた両親が、日本でビパスさんが起業する事を、どう思っていたのか聞いてみました。すると、これまた意外な答えが帰ってきました。ビバスさんの両親は、日本に対して良いイメージを持っていたため、ビジネスが失敗するという事は一切考えないていない感じだったそうです。

ちなみに、ビバスさんはネパールにお土産を買っていく時に、注意をしている事があるそうです。それは、日本のメーカーの製品であっても、made in chinaと書いてある製品を買わないという事です。理由は企業名よりも何よりも、made in japanを信頼しているからだそうです。とはいえ、最近は、日本のメーカーも日本では、あまり生産していませんよね。だから、ビバスさんは、日本のメーカーが作った、「中国製」と書いてある物を買うと言っていました。理由はネパールの人は漢字が読めないので、日本で買った日本のメーカー品と言えばmade in japanと思うからだそうです(笑)

ここまで聞いて始めて、なぜ不況と言われ続けている日本で今、あえて商売を始める外国人がいるのか分かった気がしてきました。日本人が思っている以上に、まだまだ日本を経済的にも魅力的に感じている外国人は多いようなのです。やはり、現在の日本の経済動向とは関係なく、made in japanブランドに対する昔からの信頼は厚いようです。

次に、ビバスさんに、日本であえて起業する事の、メリット・デメリットは何か聞いてみました。すると、いっぱいあるけどと悩みながらも、ビバスさんは日本ではネパールのように内戦が起きたりしない事と答えてくれました。そして、日本で商売をやれば安全だし、お金がある人がたくさん住んでいるから、売上が立ちやすいと言っていました。日本人には、全く予想できない返答ですよね。

そして、デメリットは何かという質問には、日本では色んな商売が、すでに存在している事と答えました。ネパールには何も無いから、日本によくある店を出すだけでも、目新しい店になるそうです。でも、日本では、そうとう頭を使って工夫をしないと、ライバルも多くて目立たないと言っていました。それでも、ビバスさんは、勉強して頭を使えば、独特なオリジナリティのある店を出すことは可能だと言っていました。実際、ビバスさんが満トロという独特な看板メニューを開発するまで、色々な所で食べ歩きをしたり、多くの試作品を作ったり、試行錯誤していたそうです。

最後に、ビバスさんに、経済の調子が良い別の国ではなく、日本で起業した事に後悔は無いかと聞きました。すると、ビバスさんは、日本人は、日本の良さに気づいていないから、そういう事を質問するんだと言っていました。例えば、日本人は何も思わないかもしれないけど、電車が普通に走っている事だって、凄い事と言っていました。そして、日本人も、その当たり前の光景が、素晴らしい事に気づけば、日本で生活する事が好きになると言うのです。そうなれば、経済成長がどうのこうのではなく、あとは、頭を使って商売をするだけとビバスさんは語ってくれました。そして、同時に、日本人が、自分の置かれている状況の素晴らしさに気づくためには、日本より発展していない海外を実際に見た方が良いとアドバイスしてくれました。

今回、私はビバスさんの話を聞いていて、非常に強く思ったことがあります。それは、日本の経済が停滞している原因は、日本人のメンタルが、ダイエット方法にコダワリすぎる太った人みたいになっているのではないかという事です。よく、「朝走るのが良い」とか、「やっぱり、寝る前に走る方が良い」と、効率の良いダイエット方法を、やたら追い求めている人っていますよね。そういう人って、結果的に、肝心な事をしていなくて、痩せなかったりするものです。それと同じように、我々日本人は、「日本は人口が減っている」とか、そんなことばかり言っていて、肝心な事をしていないのかもしれません。今回、ビバスさんの話に、そんな事を考えさせられ、目からウロコが落ちたような気分になりました。

※他にもブログで、こんな記事を書いています
(2017年、ダイヤモンド社より即興力・インプロについての新刊発売予定!)

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※このブログの著者プロフィール
渡辺龍太 (放送作家・即興力養成コーチ)
ブログ:http://kaiwaup.com
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著書:『朝日新聞もう一つの読み方』(日新報道)
紹介ブログ:朝日新聞の押し紙問題!武田邦彦教授の解説が痛快すぎる
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渡辺 龍太
ニュースや情報番組などを中心に活動する放送作家

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