北朝鮮のミサイルより脅威!人口減少は“内なる黒船” --- 松村 むつみ

2017年07月26日 06:00

北朝鮮のミサイルや中国による脅威が、マスコミで取り沙汰されるようになって久しいですが、実は、日本にはそれよりももっと脅威になりうる国内問題があることはあまり知られていません。というか、うすうす知ってはいても、なんとなく顔をそむけていたい、皆さんそんな気持ちでいるように思われます。それが人口減少と高齢化です。

人口動態予測は、政府系機関の出す予測の中で、比較的ぶれが少なく、的中率の高いものと言われています。

国立社会保障・人口問題研究所の2017年推計(2015年度国勢調査の結果に基づいて算出されたもの)によると、2015年度のわが国の人口は1億2709人であったのが、長期の減少傾向に入り、2040年には1億1092人、2053年には9924人、2065年には8808万人になると推測されています(出生中位・死亡中位予測)。

また、長期参考推計によると、2115年には、出生中位・死亡中位予測では5055万人となっています。合計特殊出生率をより低く見積もった低位出生予測ですと、2115年にはなんと人口は3876万人となり、明治時代の人口と同程度になることが予測されます。人口の内訳では、老年人口が増し、若年者の人口はますます減っていくことになります。

日本の人口の長期的推移:国土交通省国土計画局作成試料より引用

1.日本“総夕張化”はジョークでない。 100年で人口半減、高齢化率38%.

国立社会保障・人口問題研究所の長期参考推計によると、およそ100年後である2115年には現在の人口の半分を割る5055万人となり、高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合。現在は約27%)は38%となります。

人口問題の専門家であるある河合雅司氏は、一定の条件をおいて計算すると、3000年には、2000人ほどしか日本人がいなくなると警鐘を鳴らしています(河合雅司『未来の年表』)。市町村の消滅のみでなく、自衛官など安全保障の担い手が不足したり、災害時の対応やインフラ整備ができなくなる可能性など、国としての存続が危ぶまれる事態になる可能性も予想されます。

財政破綻後に急激な人口減少と高齢化率の上昇を示した夕張市へ「廃墟ツアー」をしたブログ記事をわたしはいくつか読んだことがありますが、日本全国でこのようなツアーが開催されるような将来もあながちブラックジョークとは言い切れないでしょう。

2.個性的な未来図も。本当の高齢化社会の支え合いの構図は?

これまで、「支える人」と「支えられる人」はある程度固定化しているとみられていました。2012年に、税と社会保障の一体改革関連資料で作成された「騎馬戦型社会から肩車型社会へ」の図を覚えておいでの方は多いと思います。20~64歳の現役世代が65歳以上のお年寄りを支えるのですが、1965年は「胴上げ型」(65歳以上1人に対して、20-64歳は9.1人)であったのが、2012年は「騎馬戦型」(65歳以上に対して、20-64歳は2.4人)となり、ついに2050年、「肩車型」(65歳以上1人に対して、20-64歳は1.2人)となってしまう、あの図です。

しかし、この図式はあまりにも、支える人と支えられる人が固定化されており、単純化されすぎているために(単純に人数で割り算がされていますが、本当に専業主婦を分母に入れて良いのか、など、さまざまな疑問があります)、これから来るべき社会を正確に反映していない可能性が大きいのです。

この「支える人」「支えられる人」に関して、従来の図に変わって、様々な人が、非常に興味深い個性的な図を作成しています。

落合陽一さんは、AIなどの技術が高齢者を支え、自動化により若者の生産性も上がってハッピーになるというモデルを示し、SNSでも話題になった経産省次官・若手プロジェクトは、従来の立場を逆転し「支えられる人」として「未成年」を、「支える人」として「高齢者を含む大人」を想定しています。

落合陽一氏のtwitterより引用

経産省 次官・若手プロジェクト「不安な個人、立ちすくむ国家」より引用

3.「不都合な真実」に直面も、自己決定できる面白い時代に

これまでの日本は、人口ボーナスと経済成長、そこから得られた資金で、これまでは「なんとかなっちゃって」いました。たとえ政治が三流で問題の先送りとポピュリズム、バラマキに終止しても(昔は、「経済一流、政治三流」なんて言葉もありましたね)、すぐにとばっちりを受けることはありませんでしたし、他人の価値観に沿って生きていてもなんとかやっていくことができました。「借り物の民主主義」が根付かなくても、「なんとなくみんなこう思っているよね」という価値観にしがみついて自分独自の世界観を持つことをしなくても、「人並みの幸せ」を手に入れることはできたのです。

しかし、そういった時代はすでに過去のものとなりました。近い将来、わたしたちはあらゆる局面に関して、現実に選択を迫られることになるでしょう(いや、すでに迫られています)。ほんとうに移民を受け入れなくていいのか、税率をあげなくていいのか、母子家庭は貧乏なままでいいのか、経済や社会保障のどこまでを国がコントロールすべきなのか。わたしたちは、これまでのように「おまかせの政治」が決定するなしくずしの選択に頼って自分たちは受け身なままでいると、とんでもないしっぺ返しを受けることになります。

そういう意味で、今はとてもおもしろい時代です。本当の意味で、日本人はどういうあり方をしていくのかを、内的な必要性から選択する、これは、近年では、比較的なかったことのように思うからです。日本を変えるのは、これまでは「外圧」が多く、内的な体質は温存させたままであることが多かったように思います。

しかし今後は、外国との関係のみならず、国の内部から、体制変換を迫るひとつの大きな問題がわが国を浸食しかけています。そういった観点から、人口減少を「内なる黒船」と呼んでみました。本コラムでは、ひとつひとつの選択について、みなさんと一緒に考えていこうと思っていますので、引き続きお付き合いいただけると幸いです。


松村 むつみ
放射線科医、人口問題及び医療・介護政策ウォッチャー
アゴラ出版道場二期生

東海地方の国立大学医学部卒業、首都圏の公立大学放射線医学講座助教を得て、現在、横浜市や関東地方の複数の病院で勤務。二児の母。乳腺・核医学を専門とし、日常診療に重きを置くごく普通の医師だったが、子育ての過程で社会問題に興味を抱き、医療政策をウォッチするようになる。日本医療政策機構医療政策講座修了。日々、医療や政策についてわかりやすく伝えることを心がけている。

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