UAE、米国産石油を初輸入

興味深いタイトルに惹かれてロイター電を読んでみた。”UAE buys first US oil cargo to replace Qatari’s condensate – sources”(July 26, 2017 3:25pm)である。

カタール断交の余波はまだまだ続きそうだが、読者のみなさんには是非、石油(Oil)と言っても一律ではなく、品種がさまざまで、用途も異なることをご理解いただきたいと思う。

コンデンセートとシェールオイルとは性状的に別モノだが、あえて言えば「超軽質」の分類に入る。簡単な装置で石油化学原料のナフサや灯軽油を生産できるので、簡易トッパーに似たコンデンセート・スプリッターが世界のあちらこちらで建設されている。フル装備の精製装置と比べると投資コストがきわめて少なくて済むからだ。

中東産原油の大半は「軽質、中質、重質」で「超軽質」は少ない。

たとえば日本の精製装置は戦後の復興期に、中東産の中質原油(たとえばアラブライト原油)や重質油(たとえばクウェート原油)を基本として設計された。その後、残された埋蔵量から考えて将来は重質原油が供給の主体となるが需要はガソリンや灯軽油などの軽質留分が増加する、との判断から、重い留分をアップグレードする装置を多く建設してきている。

筆者が、米国産シェールオイルが世界の需要増をすべて賄えるものではないと判断しているのは、この基本構造は簡単には変更できないからだ。

さて、ロイター電の要点を次のとおり紹介しておこう。
・シンガポール7月26日発。

・2つの関係筋によれば、UAEはこのほど初の米国産石油を輸入する。

・UAEはサウジアラビア等とカタールと外交でもめていることから輸入を中断しているカタール・コンデンセートの代替として必要なもの。

・ADNOC(アブダビ国営石油)はコメントを拒否した。

・関係筋によると、ADNOCはこのほど、9月到着ベースで入札を行い、米国のイーグルフォート産コンデンセートの購入を決めた。数量は不明だが、150~200万バレル積載可能なスーパータンカーで入着予定。

・韓国やインドネシアなど(コンデンセートを含む)超軽質原油への需要が増加しているので、ADNOCのオプションは限られていた。

・ADNOCはカタール国営石油(QP)から長期契約に基づき、毎月100~150万バレルのコンデンセートを購入していた。

・コンデンセートは、天然ガスを生産するときの副産物(高温高圧の地下では気体だが、常温常圧の地上では液体となるもの)で、精製すると主に石油化学原料のナフサが生産できる。

・これに先立ち、UAEはサウジからKhuffコンデンセートを購入したが生産量が少なく、元来サウジ国内用のものである(ので、安定供給先にはならない)。


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2017年7月27日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。