防衛大の整理術は「64式小銃」の分解結合がベース!

後列の右から3番目が濱潟氏。個人情報保護の観点から濱潟氏以外はモザイク処理を施した。

防衛大は自衛隊の幹部自衛官を養成する教育・訓練施設である。卒業式は内閣総理大臣や防衛大臣の出席、訓示が慣例となっている。「自衛隊法第53条」及び「自衛隊法施行規則第40条」に則り、宣誓書に署名捺印をする事が義務付けられているが、これは、日本国憲法、校則遵守への宣誓となる。

何があっても必ず結果を出す! 防衛大式最強の仕事』(あさ出版)の著者であり、防衛大のメソッドを使用しながらコンサルティングサービスを提供している、濱潟好古(以下、濱潟氏)は防衛大出身で知られている。今回は、防衛大の数多くのノウハウのなかでもすぐに実践できる「整理術」について聞いた。

まずは整理整頓が基本

――防衛大の整理術と聞いても「ピン」とこない人がほとんどではないだろうか。今回は特別にその一部を紹介したい。

「防衛大では学生1名につき1丁『64式小銃』という自動小銃が貸与されます。入校前から『銃は命の次に大切なもの』と指導教官に教育をされます。1学年時は『64式小銃』の取り扱い方法を徹底的に叩き込まれます。『分解結合』という、銃を分解し、整備をした後にまた結合して組み立てる訓練も行います。」(濱潟氏)

64式7.62mm小銃(Wikipediaより)

――「64式小銃」は1964年に採用された戦後初の国産小銃として知られている。日本人の体格を考慮した設計となっており、命中精度を高めるために二脚を標準装備し、連発時の命中精度向上を図った仕様に特徴がある。

「1学年では射撃訓練もあり、入校式、開校祭などのイベント時に行われるパレードでは『64式小銃』を持って行進をします。実際に『64式小銃』を使う機会が多くあるので、この『分解結合』をして整備をしておかなければなりません。OD色(自衛隊の指定色)の毛布の上に分解した部品を置き1つずつ磨き上げます。」(濱潟氏)

「ピカピカに磨きあげなければ何度も何度も整備をさせられます。さらに『分解結合』する際にはスピードが求められました。『命の次に大切な銃をだらだらと分解したり、結合したりすることは許されません。」(同)

――学生は「64式小銃」の構造についてインプットすることが求められる。

「スピード感を持って分解結合をするために、どこにどの部品があるのかを一目瞭然にしておく必要があります。毛布の上に置く部品の順番も決まっており、そのとおりに部品を置かなければ厳しく指導されます。整頓できていない学生の『分解結合』は著しくスピードが遅くなる傾向がありました。」(濱潟氏)

「分解時に決められた部品の置き方をしていないために、どこにどの部品を置いたかわからなくなり、結合時に時間がかかるのです。」(同)

不要なモノは捨てる

――「分解結合」をする際は「分解結合」に不必要なものは半径1メートル以内には置かないことが義務づけられている。

「理由は、銃の部品は小さいため、他のものと混ざることを防ぐためです。一度、自室で銃の『分解結合』を行ったとき、たまたま、ほうきとチリトリがそばにありました。それを見た上級生に、ほうきとチリトリを窓の外に捨てられました。命の次に大切な銃の部品をなくすことは絶対に許されないことだからです。」(濱潟氏)

「万が一、なくしてしまったら、見つかるまで中隊の全学生で捜索をします。数センチの部品を100名前後の学生が何日もかけて探すのです。64式小銃から学んだことは整理整頓の基本です。『分解結合』に必要のないものは『整理』する。そして、大切な部品はどの場所にあるのか『整頓』することが求められます。」(同)

――では、整理整頓の重要性をどのように活かすことができるのか。

「モノを探している時間ほどムダな時間はありません。前に勤めていた職場でも成績の悪い営業マンに限って、いつも『モノ』を探していました。ここでいう『モノ』とは物品だけでなくパソコン内のファイルやメールなども含みます。彼らに共通していることは、『モノ』が多すぎるということです。」(濱潟氏)

「ここで生きるのが『整理整頓』です。防衛大式整理とは『必要ないモノ』はすべて捨てます。書類はシュレッダーで処分します。」(同)

――整理整頓ができない人に限って、「いつか使うかもしれない」という理由からモノが捨てられないものだ。さて、本書には日常で役に立つテクニックが紹介されている。若いビジネスパーソン向きと考えられるが、上司のコネタとしても役立ちそうだ。

参考書籍
何があっても必ず結果を出す! 防衛大式最強の仕事』(あさ出版)

尾藤克之
コラムニスト

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