加計学園より重要な財政健全化の憲法問題

2017年07月28日 06:00

日銀の財政支援を国会はどう考える

衆参両院の予算委員会の集中審議は、加計学園問題で明け暮れました。安倍政権の体質、行政の公平・透明性を追及することは必要です。一方、この問題に集中するあまり、「本来の予算委員会の義務、任務を果たしていない」、「国会は国家の基本政策の審議を置き去りにしている」という不満、批判が高まっていることは事実です。

安倍政権は憲法改正を国民投票にかけることにし、自衛隊の存在の明文化、教育無償化の二つを目玉にしようとしています。ここで重要なことは、防衛費や教育予算を支える財政が先進国最悪の巨額の赤字(国と地方で1000兆円)であることです。予算の増額ばかりに目が向き、財政の悪化を放置すれば、防衛費も教育予算も払えなくなる時がきます。

興味深い文科省の調査を目にしました。大学の新設学部、学科内容について「大学教育の水準にあると見受けられない学校がある」、「学士過程にふさわしい授業内容となるよう見直すべきだ」と酷評された学校があるのです。その一つが千葉科学大学(千葉県)です。設置者は、あの加計学園です。

中学並みの大学でも無償化するのか

「一般動詞とbe動詞の使い方、比例と反比例」など、中学校で扱う授業内容に盛り込まれていたそうです。学生のレベルが低いのででしょう。「大学とは名ばかり。中身は中学校」というケースが少なくないのです。こんな大学、大学生を教育無償化の対象にするのは、税金の無駄遣いです。時間を作って、国会審議で取り上げるべきでした。教育予算の使い方を考えずに、いきなり無償化は無茶な話です。

年間の防衛予算は5兆円、文科省予算も5兆円です。自衛隊を憲法条文に明記しても、防衛費が急に増えることはありません。これに対し、大学・高等教育の教育の無償化には新たに4,5兆円の予算が必要です。安倍政権の支持率が4割を切り、さらに3割を割り始めていますから、国民投票で過半数の支持が必要な憲法改正はできるかは不透明です。

とにかく、安全保障予算を重視し、教育費の無償化を考えるなら、憲法の改正項目に、合わせて財政健全化を盛り込むべきなのです。それなのに安倍政権も予算委員会も、日本の財政危機には無頓着なのです。「危機は起きていないではないか。いづれなんとかなるさ」ですね。

憲法第7章は財政について、9条(83条から91条)を割いています。敗戦直後の混乱期に成立した新憲法は、財政について必要最低限の規定、手続きしか決めていません。「租税は法律の定めるところによる」(84条)、「内閣は予算を作成し、国会の議決を経なければならない」、「内閣は国の財政状況を毎年、国会に報告しなければならない」。あわてて作ったのでしょう。財政の健全性をどう考えるかという核心部分にまで、頭が回らなかったのでしょう。

財政赤字は違憲状態に近い

憲法を補完する形で、財政法、租税法、地方財政法などがあります。最も知られているのは財政法(昭和22年制定)の「赤字国債の日銀引き受けの禁止」(5条)です。日銀が引き受ければ、野放図に赤字が拡大するからです。ここには均衡財政、健全財政の維持が念頭にあったのでしょう。その「日銀引き受けの禁止」は、事実上、破たんしています。日銀が保有する国債は年末には500兆円に達します。自衛隊問題にならえば、「財政赤字は財政法違反、ある種の違憲状態」といえます。

国が発行した国債がいったん市場に出回る。出回った国債を市場から買うのだから、日銀による直接引き受けではないという釈明です。実質的には財政法違反です。日銀がすぐ国債を買ってくれるものだから、国は財政赤字のことを心配しないで済む。だから財政赤字はどんど増える。こんな財政規律の緩い先進国は他にはありません。どうしてこのような重大問題を国会で議論し、追及しないのでしょうか。財政法の核心部分に違反しているのです。

8月は来年度予算の概要を各省が提出します。安倍政権は景気の回復力が弱いとみて、「5年連続で青天井」の歳出要求を認める方針です。デフレ脱却と称して歳出を膨張させ、まだ十分に景気が回復していないと称して歳出を増やす。いつまでこんなことを続けるのでしょうか。

憲法改正をして、財政健全化条項を明記する。すぐに国債発行を止めたら、経済がパニックに陥るので、時間がかかります。そこでせめて「政府は財政健全化の計画を策定し、法律で規定する」とすべきでしょう。今も「基礎的財政収支の黒字化目標」というのを政権は策定しています。あまりにも現実離れしているので、安倍政権は「債務残高のGDP比の引き下げ目標」という別の緩やかな計画に切りかえる方針です。これらはあくまで目標であり、法律で義務づけられていないため、安易に引き延ばしができるのです。

異次元緩和を今後も続ける日銀の黒田総裁を国会に招致し、「異次元緩和の副作用、異次元緩和の停止、国債の大量保有からの出口」に対する考え方をたださないのでしょうか。不人気なことは与野党ともやりたがらないのです。国会は本来、やるべきことを放棄し、バラエティー番組になる討論には熱心ということになります。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2017年7月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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