「スマート農業」が切り拓く楽しい農業

記事『情報通信技術を活用した新しい農業』で紹介したように、農業に技術革新の波が押し寄せている。情報通信政策フォーラム(ICPF)ではこれについてセミナーを開催したが、講演内容には驚いた。

今後の農業のために農林水産省が取り組んでいるのが「スマート農業」である。自動走行するトラクターが耕した畑に後ろを走る有人トラクターで苗を植える、圃場内のばらつきをドローンで観察して肥料の量を場所に応じて調整する、熟れたトマトを画像認識して自動で収穫する、といった技術が次々に開発されている。これらの技術が導入されると農業の生産性は圧倒的に改善される可能性がある。

農業には一つの作物は年に一度しか生産できないという宿命がある。それがベテランから若手への知識ノウハウの移転をむずかしくしてきたが、人工知能(AI)技術などを利用してベテランの経験が「見える化」され始めた。熟練就農者が何を基準に摘果(間引き)しているか分析するシステムが開発された。病害虫の発生を不慣れな生産者でも的確に把握できるようになれば被害は最小に抑えられる。2015年時点で農業就業人口の平均年齢は66.4歳だったそうで、知識ノウハウの記録と若手への移転は喫緊の課題である。

セミナーではこのような新技術を若者に教育していく重要性も議論された。講師によると、すでに農業高校や農業大学校では講義に取り入れられ、教科書にも掲載されているそうだ。若者は技術に抵抗感がないので素直に受け入れる傾向にあるという。「スマート農業推進フォーラム」といったイベントも定期的に開催されている。クボタをはじめとする農業機械メーカーも積極的に取り組んでいる。

就農人口の高齢化との競争に勝って、新しい技術・知識ノウハウを使って、スマートで楽しい、若者による産業に生まれ変わる明日に期待する。