ベンチャーの科学

2017年08月01日 11:30

業を起こすことは、冒険、即ちベンチャーである。危険を冒せるのは、危険はリスクとして制御下にあるとの信念、故に危険はないとの信念のもとでのみ可能なのだが、その信念は、危険をリスクとして制御できるだけの技術等の必要資源の裏付けがあってこそ、なりたつ。

ベンチャーには複数の専門家の組み合わせが必要なのである。専門家を適材適所に配置することで、リスクが適正に管理されることを通じて、業を起こすことの指導者はリスクを冒さずに業に専念できるということだ。

信念は、思い込みではない。確かな技術や経験に裏打ちされ、また人的資源、その他の諸資源の適正な構成によって支持されてこそ、信念として成立する。その信念のなかでは、リスクは、単なる危険としては認識されず、可能性として計算され、専門技術によって制御されるのである。ベンチャーは、信念の共同体であり、そこではリスクは冒されていない。

ところが、危険が制御されていないベンチャー、危険を冒すことによってなりたつベンチャーは、偶然性を避け得ない。ここでは、危険がリスクとして計算されておらず、故に事前にリスク管理の対応がとられていないので、信念は単なる経営者の盲信であり、多くの場合、根拠のない自信、幻想、夢に基づく妄想なのだ。

そのような盲信のもとでは、信念の共同体を形成することができないから、リスク管理に必要な人的資源、資金、その他の経営資源の調達ができず、危険を科学的に制御できる体制を構築できない。故に、そこでは、起業家は危険を冒さざるを得ない。危険を冒せば、成功は単なる偶然にすぎなくなる。

日本では、ベンチャーといえば、起業家精神の不在とか、大胆に挑戦する心意気ある人材の少なさとか、資金調達の難しさとか、多くの論評がなされているが、実は、日本のベンチャーの多くは危険を冒すものにすぎないのである。

ベンチャーがなりたつためには、危険がリスクとして制御されていなければならない。制御できるだけの人的資源等の構成が整えられていなければならない。そして、そこに最後の要素として資金の投入が検討されるからこそ、ベンチャー投資が科学の地平で成立するのである。

ベンチャーの成功の重要な要素の一つは、確かに、信念の共同体の求心力の核としての起業家の人間力であり、故に起業家の資質を論じられるのだが、より重要な要素は、信念の共同体を構成する諸資源の編成、即ち、合理的な事業構想のもとでの科学的計算に基づく緻密な準備であり、その諸資源の調達なのである。

 

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
HC公式ウェブサイト:fromHC
twitter:nmorimoto_HC
facebook:森本紀行

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