憲法改正発議案の作り方

首相官邸サイトより(編集部)

安倍総理がうっかり口にして多くの有識者から大目玉を喰らってしまったことがあるが、総理大臣は絶対に立法府の長などではない。

三権分立の意義を十分呑み込んでさえいれば、国権の最高機関として位置付けられている立法府である国会に対してもっと敬意を表するような物言いをしたはずだが、衆議院と参議院の両院で与党が3分の2を超える圧倒的な議席を獲得しているという思いが、安倍総理の感覚をいつの間にか狂わせてしまっていた、ということだったろう。

憲法改正の発議権は国会にしかない、ということが得心出来れば、憲法改正発議案の作成は立法府である国会にお願いしたい、国会議員の皆さん、くれぐれもよろしくお願いいたします、と頭の一つくらいは下げたくなるはずである。

自民党一強政治とか安倍一強政治などと言われている内につい頭が高くなっていたのだと思うが、ここは思いっ切り頭を低くして国会議員の皆さんにお願いしたらいい。

国会議員一人一人もよくよく考えれば国民の代表者なのだから、国民の意思を無視したり、国民の利益に反するようなことは出来ないはずである。

安倍さんが総理の間は絶対に憲法改正の発議などさせない、などと息巻いておられる向きもあるようだが、憲法改正発議案の内容次第ではむしろ積極的に憲法改正の発議に踏み切った方がいい場合もあるはずなので、安倍総理の頭の下げ方が良ければ、無碍に袖を振り払うようなことはしない方がいい。

私に憲法改正発議案を示せ、などと要求されている読者の方がおられたが、そういう仕事は現職の国会議員の方々にお願いするのが筋だろう。
叩き台、叩かれ台を示せ、と言われれば、それなりに私案を提示してもいいが、私が思いつく程度のことはどなたでもお考えになるだろうから、ここは現職の国会議員の方々に頑張っていただくのがいい。

特に必要であれば、然るべき有識者に集まっていただいて、案を練ればいいだけの話である。

天皇の譲位(生前退位)を認める皇室典範特例法案をまとめ上げ、しかも衆参両院でほぼ全会一致に近い状態で成立させることが出来た今の国会には、どんな難しい問題でもそれなりに対処できる能力がある。

自民党に所属する国会議員も民進党に所属する国会議員も、さらには自民党本体も民進党本体もそれぞれに様々な問題を抱えているが、それでも、今の国会には、様々な懸案事項を解決する能力が備わっていることは間違いない。

大事なことは、手順を間違えないこと。
恃む相手を間違えないこと、である。

安倍総理は、いつまでに結論を出していただきたい、というおおよその希望を示されるくらいでいいはずである。

いつまでに結論を出せばいいかは、阿吽の呼吸で分かるものである。

発議案の策定は、慌てないで急ぐ

私は、衆議院の解散は来年の通常国会の会期末あたりだろうと思っているので、憲法改正発議案の衆議院での採決は来年の5月中、参議院での採決は来年の6月だろうと見込んでいる。

自民党内での議論は、内閣改造後直ちに始まると思うが、一応の成案が纏まるのは、臨時国会開会中の9月から10月に掛けて、公明党での議論が始まるのが、10月から来年1月頃まで、自民党と公明党の間の調整が行われるのが来年2月から3月に掛けて、国会での議論が始まるのが、衆議院で平成30年度の予算案が可決された来年3月下旬以降ではないかと考えている。

衆議院の解散による総選挙の時期と憲法改正国民投票の時期は別にするはずだから、憲法改正国民投票は天皇の譲位による改元後、史上初めての国民投票になるはずである。

現行憲法のどこにどんな問題があるのか、現行憲法のどこの条文をどう直すのか、といった議論がそろそろ本格化するはずである。憲法改正絶対反対、などと叫んでいてもこの流れは変えられない。

共産党や社民党の方々のように、自分たちが考える憲法改正案以外には断固反対、今の段階では現行憲法を死守する、という立場を最後まで取られる方々も一定程度おられるだろうが、多分国民の大勢は何らかの憲法改正、現行憲法の3原則に抵触しない護憲的憲法改正なら受け容れよう、ということになるのではないかしら。

大方の国民が受け容れてくれるような憲法改正発議案を今の国会議員が策定できるかどうか、という問題になっていく。ハードルをどんどん上げて行けば誰がやっても憲法の改正は出来ないということになってしまうが、私が見ている範囲では、憲法改正のハードルはそれほど高くない。

周到な配慮の下で、丁寧に事を進めて行けばいいだけのことである。

慌てないで、急げ。

そう、申し上げておく。

ちなみに、不遜な物言いや軽率な物言いをしそうな人には、絶対にこの大事な仕事を委ねないことである。
お節介だろうが。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2017年7月31日の憲法関連の記事をまとめて転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。