太陽光発電は悪魔か救世主か

2017年08月07日 06:00

皆さんこんにちは。Nick Sakaiです。最近まで私はフィリピンにあるアジア開発銀行という国際機関に16年間勤め、インドや東南アジアの電力IoT案件を作っておりましたが、今年の初めに退職、帰国しました。その理由は、エネルギーIoTを実践するベンチャー企業を自分で立ち上げるためです。先月なんとか創業にこぎつけました。

かくいう私も53歳。何でこの歳でスタートアップしたかというと、電力セクターで近未来にイノベーションが起きることが確実だと思っていて、その大波を間近で眺めたかったからです。一頃水を開けられていた欧米よりも先に日本で火がつく可能性すらあります。これはたまらなくエキサイティングです。

今、世間ではUberとかTeslaとか自動車ばかり注目が集まっていますが、電力IoTも負けていなくて、もうカウントダウンは始まっています。

そのドライバーは、少子高齢化による限界集落の増大という後ろ向きな理由と、技術革新の進展という前向きな理由の2つで、これが絶妙に重なり合っています。主役は太陽光発電とリチウムイオン電池です。

皆さんは太陽光発電にどういう印象をお持ちですか?高すぎる固定価格買取制度(FIT)のツケを国民が払わされていること。九州や山梨県北杜市など一部地域にメガソーラーが乱立・集中して景観破壊を引き起こしていること。送電線が混雑して、アクセス拒否問題が起きていること。中国製のパネルが席巻していること。地元に雇用とお金が落ちていないこと。どちらかというと否定的な印象を持つ人が増えているように思います。

これは、明らかに政策の失敗によるものです。だって、全国どこでも同じ値段で買取りますと言ったら、土地が安くて日照で有利な一部地域に業者が殺到するのは当たり前です。本来、再生可能エネルギーは地産地消が馴染むのです。地元で発電した電力を、地元で分かち合う、シェア経済にぴったりの商材なのです。

なのに、FITというのは、分散する電力をわざわざ、中央集権的にお上が吸い上げて、石炭火力などと一緒くたに混ぜて、どれが再生可能エネルギー由来の電力かわからないようにして、高圧送電線を経由して全国にばらまくなどという余り合理的でない仕組みを植え付けました。

だがしかし、この政策の適否はともかくとして、すでに日本中はソーラーパネルで埋め尽くされました。それは事実として受け入れなければなりません。そして、この太陽光パネルこそが、人口減少で縮みゆく日本のインフラを救う天の配剤となるというのが私の見立てです。

電力の送電網は、人が住んでいるところにはどこでも、毛細血管のように張り巡らされています。過疎でほとんど人が住んでいないところにも、送電線から電柱を伸ばし、これを維持するのには莫大なコストがかかっています。そのコストは、均一の電気料金という形で都市部のユーザーが負担しています。

人口が増加して経済が成長する右肩あがりの時代は良いですが、人口縮減の時代に全国一律のサービスを提供することは無理があります。限界集落の外に人が住むのは、憲法が保障する居住移転の自由であり、お好きにどうぞということですが、そこに、電力や水道、郵便、行政サービスといったサービスをフル規格で供給する義務はありません。

実際、上下水道サービスではこの問題が顕在化しています。地方自治体が自ら運営する水道業は、水道管の維持・管理ができずに破綻寸前のところがあります。郵政民営化もありましたね。電力においても早晩同じ問題が起きるでしょう。

その解決策として、電力のクラウド化というアプローチが現実味を帯びます。人口が少ないところは、太陽光パネルと電池で電力を集落単位で自給自足してもらう。中央からのネットワークがそれを補完する。こうした緩い繋がりモデルにすれば、大規模な高圧送電網の維持・管理コストの増化を回避できます。小ぢんまりとした経済には小ぢんまりとしたインフラが良いのです。これを専門用語でマイクログリッドと言います。

こう書くと後ろ向きな議論に映りますが、実はマイクログリッドは世界で最も先駆的でクールなのです。イーロンマスクの米国テスラ社は元々テスラモータースという名前で電気自動車を前面に押し出していましたが、最近「モータース」を取って、太陽光パネルとWallという壁貼りタイプのリチウムイオン電池の組み合わせで、自動車も含めて100%太陽光で賄う生活というライフスタイルを押し出す企業に変わっています。一軒の家で電力を自給自足するという究極のマイクログリッドです。

今、ハリウッドスターや世界のお金持ちがこのモデルを追いかけています。

でも、唯我独尊、ロンリー・カーボーイのヤンキー世界ではテスラモデルが受けるのでしょうが、ウエットな緩い繋がりを指向する日本の共同体的世界では、もう少しみんなでシェアし合うという、電力シェアリング的発想が受けると思います。日本には日本の風土に馴染んだマイクログリッドを作りたい。そこで、私の立ち上げた会社の名前はズバリ株式会社電力シェアリングです。いってみれば、Uberの電力版を目指しています。企業秘密なので、あまり中身は言えないのですが、理念は電力のP2Pです。寂れ行く地方に絆を取り戻します。

しかし、言うは易しですが、実業化は容易ではありません。全くもって。UberやAirB&Bが日本で花開けないように、こちらの世界でも、色々な大人の事情が絡み合っていて、壁は厚く、高いのです。でも、それだけやりがいがあります。正義はこちら側にあるし、アメリカでもドイツでもそのうねりは日々増すばかりなので、日本だけ国を開かないでいると国益にならないからです。

今、あちこちを飛び回って、七転八倒しています。今日は京都、明日は名古屋です。しかし、自分のひと押しが、ささやかでも大変革の実現に役立つかもしれないかと思うと全く苦労に感じません。

引き続きアゴラでご報告させていただきたいと思います。

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