森友問題の本質は関西社会の闇だ(追記あり)

八幡 和郎

※本稿について指摘された内容について、文末に追記しました(編集部)

FCCJ記者会見YouTube動画より(編集部)

8月5日(金)のフジテレビ「バイキング」に出演したときに議論になった、森友問題と稲田問題についての私が言った事と、その補足を紹介してきたい。

佐川国税庁長官(前理財局長)は、土地価格について、「価格につきまして、こちらから提示したこともございませんし、先方からいくらで買いたいといった希望があったこともございません」といってきた。

しかし、この点については、おかしいという話は大阪では以前からあったし、FNNで入手したテープで主張は、ほぼ崩れた。

昨年、問題の土地から廃棄物がみつかり、その処理に1億3000万円かかった。そして、さらに、ゴミの量は増えそうだった。そこで、森友側は開校が遅れることに伴う損害賠償請求の可能性をちらつかせて、実質タダでの払い下げを要求した。

それに対して国側はこれ以上、話が面倒になることを恐れ、廃棄物撤去にかかった1億3000万円を回収できれば(つまり国側から見たらマイナスは困るから)というので、1億3000万円で払い下げたという事のようだ。

つまり、森友側からは、損害賠償も要求しないし、それ以上に撤去費がかかっても要求しない。そのかわりに、国側は撤去費用が実際にそれだけかからないとか、ゴミを撤去せずにそのまま使ってもかまわないということだ。

その交渉を有利にもっていくために、森友側は泣き落としにかかったり、恫喝気味の言辞を吐いたり、安倍昭恵夫人の名前を出して夫人も心配していると匂わしたりしている。ただし、国側が安倍夫人の名前を出されて、動揺しているとか、態度を変えた節は少なくともテープではない。

主なやりとりは以下の通りだ。

池田国有財産統括官(当時) 「まず1点、おわびの点はですね、地下埋設物の 撤去工事に関しては、きちっと森友学園理事長・副園長に情報が伝わっていなかった点は、われわれも反省としてありまして」

池田国有財産統括官(当時) 「今後の対応につきましては、大阪航空局から
ご説明いただこうと思っています」

籠池泰典容疑者 「反省してるの。反省してないんだったら、わたしは、 そんなつもりじゃありませんでしたからで 終わっちゃうんだけど。民間企業なら、頭下げて『申し訳ございませんでした』っていうやつよ」

大阪航空局 「今回出てきた産業廃棄物というものは、 国の方に瑕疵(かし)があるということが 判断されますので、その撤去については、 国の方でやりたいなと思っておりまして」

諄子容疑者「帰って、もう! 本当に、もう! あんたらのために ホンマに損害賠償(請求)や、 こんなもんもうええって、帰って、もう!」

池田国有財産統括官(当時) 「だから、われわれの見込んでいる金額よりも、 (撤去費が)少なくても、われわれは何も言わない」

籠池泰典容疑者「時間がたつことが大きな問題なんやから、なんかいい方法ないの?」

大阪航空局「うーん、公共工事というのは、われわれ国側から、ご存じのとおり入札というか…」

諄子容疑者「それは普通のやり方で、特例があるって言いはったの」

大阪航空局「その特例が使える、使えないというのがあるんですけど」

籠池泰典容疑者「なんや、きのう財務省から出たとたんに、安倍夫人から電話ありましたよ。『どうなりました?』って。『頑張ってください』って言ってはったけど。なんて答えたらいいんやろ? わからへんわ。どうしよ。そちらの案は?そちらの案は?」

これを見ると、佐川長官の答弁は、少なくとも事実に反している。ただし、佐川氏が事実を知った上で虚偽の答弁をしたかどうかは不明だ。

籠池夫妻のようなタイプの人物は、関東人は当惑するかも知れないが、関西ではどこにでもいるワルである。行政にせよ、企業にせよ、こうしたワルに迷惑しながら、適当なところで折り合いを付けている。

ところが、どこにでもいるタイプとはいえ、総理夫人まで手玉に取ったのだから程度の問題としては、なかなかの凄腕だ。そこまでいうかという開き直りだ。それに圧倒されて、現地採用の担当者がひどく妥協的になったということのように見えるし、それをありのままに、上司、なかんずく、東京から来たキャリア組に報告しなかったこともおおいにありうる。

しばしば、あるのは、下から上に上がるにつれて、だんだん話は薄められていった可能性がある。その真相は分からないが、少なくとも、結果としては、佐川長官の答弁は真実を反映していなかったということだ。

これが背任になるかどうかといわれれば、少し難しいと思う。担当者に国庫に損害を与えるという自覚はなかったと見るのが普通だ。ややこしいことになったので、損切りするつもりだったし、1億3000万円も確保しているからである。

となると、どこかで、内部責任として、上から下までなんらかの処分が必要になってくるのではないかという気がする。

また、安倍夫人にせよ、最低限、籠池氏に対して脇が甘く名前を使われたのは事実なのであるから、籠池夫妻の起訴あたりを契機に国民に対するお詫びの言葉くらいほしいところだ。

私は、森友はプチスキャンダル、加計はいいがかりと見てきた。プチスキャンダルをきっちり処理しなかったから、本来は何の問題もない加計問題に延焼したと言うべきだ。

しかし、それにしても、関西のこうした怪しげな勢力との談合体質は、勇気をもって断ち切らないと関西没落を加速化させかねない。本社を東京に移す企業などでも、関西でのしがらみから開放されたいからというのが本当の動機と言うような話もないではないのだ。

また、本件について、麻生財務相は、「取材が正しいか、われわれの答弁が正しいか、取材の方が正しいと思ったことはありません。自分の部下の話を信じています。そういった話ですから。籠池さんは逮捕されたんでしょ、違うの? 逮捕されたら逮捕された人に話を聞いて。こちらがどうのこうの言うことはありません」などと述べている。

部下が失敗をしましたと上げてくるまでは、部下を追及しないという美学だと思うが、なかなか国民の理解は得られまい。

【追記:10日0時】本記事について弁護士の郷原信郎氏から、籠池氏に対して誹謗するものであるようなご心配をブログで頂き恐縮しております。

まず、ご心配について感謝します。ただし、その内容は誤解であると思います。籠池氏に対して「ワル」とは申しておりますが、それは、一般的に強引に自己の利益を図る人と行った軽い意味でしかありません。関西社会の関東にはないような社会的状況を闇と表現しておりますが、それは、犯罪組織を意味する裏社会などとは違う、より軽い意味でしかありません。まして、籠池氏を闇の組織の人だとかいうようなことを臭わす表現などどこにもありません。また、容疑者というのは、引用したやりとりを記録した資料のなかにこそあるもので、私の書いた部分にはありませんので、ご心配のことはいずれも当たらないものであります。