戦争を描いたアニメあれこれ

渡 まち子

8月は日本の歴史にとっては特別な月です。
8月6日は、広島に原爆が投下された日。
8月9日は、長崎に原爆が投下された日。
そして、8月15日は、終戦記念日です。

最近の統計では、10~20代で、これらが何の日か知らない若者が増えているとか。さらに、戦争を体験した年代の方々の高齢化という深刻な問題もあります。

映画は歴史を語り継ぐ役割もあると思うので、毎年この時期には、戦争を描いた作品を紹介しています。今回は、日本映画のアニメ作品の中から、戦争をテーマした代表的な作品を、少しだけ選んでご紹介します。

まずは、テッパンの「火垂るの墓」。原作は野坂昭如、監督は高畑勲。
戦時中の日本を舞台に、両親を亡くした幼いふたりの兄妹が懸命に生きる姿を描きます。実はこれ、私にとってはトラウマ級につらい物語として記憶されてるんですが、戦争を描いたアニメーションでは絶対にはずせない1本。ラスト、兄妹が現代の大都会の明かりをみつめる様に、戦争という時代を忘れてしまった現代人への痛烈なメッセージが含まれています。ちなみにこの作品にはアニメ以外に実写版もあります。

「風立ちぬ」。監督は宮崎駿。
実在した零戦設計者・堀越二郎と文学者・堀辰雄それぞれの要素を取り入れた人物を主人公に、飛行機作りに情熱を傾けた青年技術者の半生を描きます。結核を患った薄幸の美少女との恋や、イタリアの航空技術者カプローニとの時空を超えた友情なども登場しますが、飛行機を愛するピュアな気持ちが、図らずも、戦争を激化させる伝説の零戦の誕生につながってしまう悲劇に胸が痛みます。宮崎駿映画の中では少し異色の作品かもしれません。

「この世界の片隅に」。原作はこうの史代、監督は片渕須直。主人公の声はのん。
昨年(2016年)、口こみで評判が広がり、大ヒットへとつながった作品なので、まだ記憶に新しいかと思います。
広島・呉に嫁いだ、絵が大好きな少女すずが、戦争の時代、日々の暮らしを大切に積み重ねながら、懸命に生きていく様を描きます。すずの大切なものが奪われ、やがて終戦になりますが、すずを襲う悲劇は、あまりにも切ないものでした。それでも明日を信じて生きる登場人物たちの生命力に涙が止まりません。

今、日本、あるいは世界は、とても不安な時代に突入していると思います。他にも、沢山の映画が戦争を描いていますが、とりあえず3本だけピックアップしてみました。若い世代でも比較的受け入れやすいアニメーションを通して、戦争のこと、平和のこと、改めて考えてみてはいかがでしょうか。


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年8月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。