【映画評】フェリシーと夢のトウシューズ

19世紀末のフランス。ブルターニュ地方の施設で暮らす、踊るのが大好きな少女・フェリシーは、バレエを習ったこともないのに、バレリーナを夢見ていた。ある日、親友のヴィクターと共に、施設を抜け出してパリを目指すことに。大都会パリでヴィクターとはぐれてしまったフェリシーだったが、偶然、憧れのオペラ座にもぐりこむ。元バレリーナの清掃員オデットやライバルのカミーユらに出会い、フェリシーは他人になりすましてバレエ学校に入学。厳しいオーディションを勝ち抜き、舞台に立つことを目指すのだが…。

バレリーナを夢見る少女が試練を乗り越えて才能を開花させ成長していく姿を描くアニメーション「フェリシーと夢のトウシューズ」。ヒロインのフェリシーは、踊りが大好きな女の子。バレエ初心者、家族も有力なコネも、もちろんお金もないフェリシーが、バレリーナとなってオペラ座で踊るというストーリーは、あまりにも非現実的。だが、子ども向け、ファミリー向けのアニメーションである本作では、リアリティには重きを置かない。

物語は単純だが、バレエシーンの振付をパリ・オペラ座バレエ団芸術監督であるオレリー・デュポンとジェレミー・ベランガールが担当するなど、バレエシーンのこだわりは本物志向である。さらに「マダガスカル」や「カンフーパンダ」シリーズを手がけたスタッフによるアニメーションは、きらびやかな19世紀のパリの街を再現するだけなく、フェリシーらの生き生きとした表情や、アクロバティックなダンスシーンを魅力たっぷりにスクリーンに登場させた。フェリシーは、夢に向かって人一倍努力し、決してあきらめない。元バレリーナのオデットがそんな彼女を助けるのは、フェリシーの夢を応援することで、もう一度バレエと関わり、失ってしまった人生の喜びを取り戻すためなのだ。オデットの存在は、夢を忘れかけた大人の心にも響くだろう。
【50点】
(原題「BALLERINA」)
(仏・カナダ/エリック・サマー、エリック・ヴァリン監督/(声)エル・ファニング、デイン・デハーン、カーリー・レイ・ジェプセン、他)
(リアリティ度:★☆☆☆☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年8月17日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式YouTube動画から)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。