バロンズ:米株、規制緩和頼みで高止まりも不安材料残す

2017年08月21日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーはスターバックスを掲げる。2015年に携帯電話で事前に行うデジタル・オーダーを可能にした当時、懐疑的な見方が優勢だった。しかし、蓋を開けてみると4〜6月期では米国全体でのオーダーのうち9%がデジタル・オーダーとなり、さらに支払いの3分の1を同社の携帯アプリが占めた。アップルのアップル・ペイを使用する人々は米国で稀で、iPhoneユーザーの5.5%しか利用していない現状と大きな違いを生んでいる。テクノロジーを上手く活用した同社の株価に対し、バロンズ誌は20%の上昇余地を見込む。詳細は本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週は共和党のに焦点を当てる。抄訳は、以下の通り。


米国のビジネスとは、ビジネスだ」——とは、第30代大統領のカルビン・クーリッジ氏の言葉である。金融市場でよくあることだが、トランプ米大統領がバージニア州シャーロッツビルでの白人至上主義者と反対派の衝突について「双方に非がある」と発言した時、米株相場はほとんど反応しなかった。しかし17日、国家経済会議(NEC)のゲイリー・コーン議長が辞任するとの噂で米株は大幅下落してしまう。同日は、イスラム国(IS)がバルセロナで自動車で突っ込むテロ事件を起こした。ダウは1.2%安、ナスダックは1.9%安を迎え、上昇が目立ったテクノロジー株で売りが目立った格好だ。

スティーブ・バノン首席戦略官の辞任が報じられた18日、米株はコーンNEC議長やムニューシン米財務長官など金融市場がいう「才能ある人物」が職務にとどまるとの期待感から、比較的落ち着きをみせた。ダウは0.8%安、S&P500は0.6%安で取引を終えた程度だった。

バノン首席戦略官の解任は、対立していたコーンNEC議長など”現実派”には朗報。
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(出所:World Economic Forum/Flickr)

クーリッジ元大統領で思い出されるのは、1920年代における米経済の繁栄とテクノロジーの進化だろう。ラジオをはじめ消費経済が飛躍的に発展し、税制や規制は財務長官として3人の米大統領に仕えたアンドリュー・メロン氏によって巻き戻されていった。

2016年11月の米大統領選挙を経てトランプ・ラリーという言葉が誕生したが、トランプ氏の公約に期待が注がれたのだろう。そのうち、医療保険制度改革(オバマケア)は躓き、税制改革はなかなか議論されず、インフラ投資も棚上げされたも同然だ。しかし、クーリッジ時代のように規制緩和が進んでいれば、米株が過去最高値から1%の距離にあるのも頷ける。

ビアンコ・リサーチのジム・ビアンコ代表は、規制緩和に対し「過小評価されている」と話す。同氏いわく、2016年にコンペティティブ・エンタープライズ・インスティチュートが発表した調査結果をみると、規制緩和の効果は税制と比べ決して小さくない。新たな規制は連邦政府の官報に掲載されるが、7月31日まで官報は6万1,330ページとなり、2016年の9万7,000ページを下回り1970年代以来の低水準だった。このままでいけば、官報のページ数は官報が導入された1936年以来で最低となる見通しだ。トランプ政権の混沌とは別に、規制緩和は着々と進んでいるというわけだ。

とはいえ、7月25〜26日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では、「一部の参加者は、財政をはじめ通商、ヘルスケアなどの政策をめぐる不確実性に言及していた・・何人かの参加者は、短期的な財政刺激策の実施可能性が一段と低下し、財政刺激が当初予想を下回る見通しとの見方を示した」ことが分かった。ストラテガス・リサーチは、トランプ米大統領の支持率低下が止まらないなかで「共和党は中間選挙で敗北する」と予想する。また、いま仮に中間選挙が実施された場合、共和党は下院で30議席を失うと試算。さらに特別選挙が実施される州では、共和党が過去数年間で大勝していたにも関わらず、勝率が急激に落ち込んでいるとも指摘した。

共和党としては、中間選挙前までに何とか政策で名誉挽回を図ろうとするだろう。ホライゾン・インベストメントのグレッグ・バリエール氏は「共和党の有志」が税制改革をホワイトハウスの力を借りずに税制改革の成立を目指していると指摘、民主党の協力を辞さない構えだという。キャピタル・アルファも、税制改革を”TBTF”つまり、大き過ぎて潰せない政策と語る。

就任してまもない米大統領が迎える中間選挙では、大抵大統領が属す党が敗北するものだ。どれだけ議席を失うかは、その支持率次第である。ただ上院の場合は共和党が優勢で、民主党はトランプ米大統領が勝利した10州で議席を維持するかが注目される。

共和党には、もう一つ乗り越えなければならない壁がある。2018年度の予算協議であり、ミッチ・マコーネル米上院院内総務やポール・ライアン下院議長は、予算協議が決裂しないようムニューシン米財務長官やコーンNEC議長と会談を重ねているという。予算協議が決裂すれば10月から政府機関の閉鎖に追い込まれるため、何とか回避したいところだ。しかし、9月の議会開会日は12日しかない。

米株は、どのような反応を見せるだろうか。ストラテガス・リサーチが1933年以降、中間選挙を迎えた年の米株、並びにホワイトハウスと議会の関係を調べていくと、最もパフォーマンスが弱い組み合わせが共和党の大統領と民主党が多数派の議会で平均4.5%高にとどまる。最良の組み合わせこそ共和党の大統領と共和党が多数派を占める議会で、平均15.1%高だ。足元では後者の例に倣いS&P500のリターンは10.2%だが、果たしてどうなるだろうか。


17日の米株相場は、税制改革をはじめとした経済政策でいかにコーンNEC議長を頼りにしているかを如実に物語っていました。経済政策の司令塔なしでは、トランプ・ラリーなしといったところでしょう。個人的には、バノン前首席戦略官の退場でトランプ政権の政策がコーンNEC議長やクシュナー上級顧問など”現実派”の意見を反映した内容に変化するか注目。共和党主流派との関係改善につながれば、税制改革や予算協議がオバマケア交渉中のようにトランプ米大統領の干渉を減退させる一因にもなり、株価を下支え余地を与えるでしょうが・・。

(出所:KP Tripathi (kps-photo.com)/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年8月20日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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