【映画評】ギフト 僕がきみに残せるもの

2017年08月23日 06:00
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アメリカンフットボールの元選手スティーヴ・グリーソンは、ハリケーン・カトリーナの被害で悲しみに沈む市民に奇跡のプレーで勇気と元気を与えた特別なスーパースターだった。引退した彼は2011年に、難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)と告知される。その直後に、妻ミシェルの妊娠が判明。やがて生まれてくる息子のために、スティーヴは子どもに残すビデオダイアリーを撮り始める…。

難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症したアメリカンフットボールの元選手スティーヴ・グリーソンのビデオダイアリーを基にしたドキュメンタリー「ギフト 僕がきみに残せるもの」。映画の主な素材は、約4年にわたり撮影した1500時間ものビデオ日記だ。スティーヴ自身が撮影したものと、彼の旧友で介護にも関わった2人の撮影者による映像で構成されているが、スティーヴとその家族のありのままの姿が映し出される。きわめて個人的なビデオ映像が果たして映画になるのだろうかと最初は疑問に思ったが、監督やカメラマン、編集者との確かな信頼関係があるのだろう、このドキュメンタリーは想像以上に興味深く感動的なものに仕上がっている。

ALSのことは「博士と彼女のセオリー」「サヨナラの代わりに」「君がくれたグッドライフ」など、多くの映画で描かれていて、何となく知っているつもりでいたが、本作では病気の進行の過程と、スティーヴや家族、友人ら、周囲の人々の心の揺れの両方が、克明にカメラに収められていて、驚かされる。息子へのビデオメッセージといえば美談のように聞こえるが、妻との喧嘩や心が萎える姿、介護の経済的・物質的・精神的負担、スティーヴが設立した財団の活動と家族と過ごす時間とのバランスなど、映し出されることは生々しく、つらくなることも多かった。同時にそれは、見ている私たちに様々な問いを投げかけるものばかりなのだ。スティーヴ自身が語る「生きるのがつらすぎて“別の選択を”と思ってしまう。それが何よりも怖い」は、あまりにも重い言葉である。絶望や怒りといったむき出しの真実があるからこそ、それでも息子のため家族のために生きると決心したスティーヴの姿に尊敬の念を禁じ得ない。本作は、単なる闘病記録ではない。生きることに挑み続ける姿は、すべての観客への贈り物であり、すべての人間が持つ才能なのだと教えられた。
【65点】
(原題「GLEASON」)
(アメリカ/クレイ・トゥイール監督/スティーヴ・グリーソン、マイク・グリーソン、、他)
(生命力度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年8月22日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Facebookから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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