財政リスクを見えづらくさせている日銀の長期金利操作

財務省は2018年度の概算要求で、国債の元利払いに必要な想定金利を1.2%に設定する。17年度予算の概算要求時点から0.4%引き下げる。国債費は足元で国の一般会計の4分の1を占める巨額な歳出項目で、社会保障費に次ぐ。現段階での国債費の見込み額は、23兆8214億円(日本経済新聞の記事より)。

日銀による長短金利操作付き量的・質的緩和により、長期金利も日銀のコントロール下に置かれた。2%の物価目標を達成させるためのひとつの手段とし、その10年物国債金利(長期金利)がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行うとしている。

長短金利操作付き量的・質的緩和の導入以降の長期金利の動向とそれに対応した日銀による指し値オペなどを含む買入状況をみると、このゼロ%程度というのはマイナス0.1%あたりからプラス0.1%あたりのレンジとなっていると予想されている。

金融政策の目標となっている消費者物価指数(除く生鮮食料品)の前年比は直近に発表された6月の数字でプラス0.4%となり、2%には届いていない。2%程度に達する時期について、2018年度頃になる可能性が高いと日銀は指摘している(7月発表の経済・物価情勢の展望より)。

物価目標は来年度中に達成する見込みがないことを日銀が示している以上は、今後は何かしらの変動要因が生じるようなことがない限り、長期金利は0.1%以下に抑えられる可能性が高いともいえる。

これを反映して財務省は国債の元利払いに必要な想定金利を1.2%に引き下げた。それでもまだ高い水準にはある。これは、あらかじめ想定金利を高めに設定することで「余裕財源を確保する」という目的も意識か(日経新聞の記事より)。

また、日銀が長期金利をコントロールしているとはいえ、長期金利が市場で決定されている以上はブラックスワンリスクも存在し、日銀が抑えきれなくなる事態も可能性は極めて低いながらも存在する。

原油価格の急騰といった何かしらの事態で物価そのものが跳ね上がる可能性もまったくないわけではない。このためある程度、実勢に比べて余裕を持ち高めに設定しているものと思われる。

長期金利が極めて低い水準で抑えられていることで、結果として利払い費も抑えられている。今後長期金利が上昇してくるとなれば、国債残高が過去最高水準を更新続けている現状下、大きな負担になることも予想される。

国債残高が膨れあがる過程で、長期金利はじりじりと低下基調となっていることで、国の予算のなかでの国債の利払い費は抑えられている。ここで長期金利が上昇してくるとなれば、じわりじわりと国の予算を圧迫する事態も予想される。日銀の長短金利操作付き量的・質的緩和はそういったリスクも見えなくさせており、この点も注意しておく必要は当然あろう。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年8月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。