【映画評】ワンダーウーマン

渡 まち子
「ワンダーウーマン」オリジナル・サウンドトラック

人間社会から孤立した女性だけの島で育ったダイアナは、好奇心旺盛なプリンセス。最強の戦士になるべく修行に励む毎日だが、ある日、島に漂着したアメリカ人パイロットでエリート・スパイのスティーブを助けたことで、外の世界で大きな戦争が起こっていることを知る。自分自身の力で世界を救いたいと強く願うダイアナは、二度と島に戻れないことを覚悟でスティーブと共にロンドンへ赴くことに。慣れない人間社会に身を置きながら闘うダイアナは、やがて無敵の戦士“ワンダーウーマン”として覚醒していくことになる…。

女性だけの島で育った美しいプリンセスが、人類の争いを止めるためにワンダーウーマンとして立ち上がる姿を描いたスーパーヒーロー・アクション「ワンダーウーマン」。マーベルVSDCでは、今までのところ圧倒的にマーベル有利だったが、本作の最強美女戦士ワンダーウーマンは、それを覆すパワーを持っている。ミス・イスラエルの美貌と、兵役経験によって鍛えられたアクションの力強さを併せ持つガル・ガドットが素晴らしく、彼女が演じるワンダーウーマンは、文句なしに魅力的だ。しかもワンダーウーマンはただ強く美しいだけではなく、天然でどこかコミカルなキャラであり、親しみをも感じさせる。第一次世界大戦下のロンドンで、回転ドアに戸惑い、アイスに感動する姿は最高にチャーミングだ。もちろん、ここぞという時にあのテーマソングが流れれば、一気にシリアスモードに。無敵の戦士としてしなやかに戦うワンダーウーマンの雄姿は、観客の心を鷲づかみにするだろう。

本作はアマゾン族のプリンセス・ダイアナがワンダーウーマンとして覚醒する、誕生と成長の物語。来たるべき「ジャスティス・リーグ」をバットマンと共に引っ張るのは間違いなくこのワンダーウーマンだ。アメコミ史上初の女性ヒーロー(ヒロイン)キャラ、女性監督の実写作品としてNo.1ヒットという輝かしい記録など、女性映画としての立ち位置も確立している。実際、悪を成敗しつつ葛藤する他の男性ヒーロー像と異なり、ワンダーウーマンは“人類は守るに値する存在なのか?”と自問し、人間の未熟さを知った上で、世界の争いをなくそうと決心した。最強美女戦士の深い慈愛という通奏低音が、本作を崇高なヒーローアクション映画に引き上げている。
【85点】
(原題「WONDER WOMAN」)
(アメリカ/パティ・ジェンキンス監督/ガル・ガドット、クリス・パイン、ロビン・ライト、他)
(痛快度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年8月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。