テキサス州直撃のハリケーン“ハービー”で避難者は3万人超えか

独再保険の試算では、ハリケーン“ハービー”の保険金支払額は約30億ドル。2005年にルイジアナ州をはじめ南部を襲ったハリケーン”カトリーナ”の800億ドル、2012年にニューヨーク州など北西部を直撃した”サンディ”は360億ドル以下にとどまる。

こうした水準を比較しただけでは、テキサス州に与える被害の実態をつかむことはできません。

テキサス州ヒューストンは、人口は約2億3,000万人を抱え全米第4位の都市。メキシコ湾に程近い地理的な条件から海港として繁栄し、さらに南部の玄関口としてジョージ・ブッシュ・インターコンチネンタル空港を備えます。交通の要所でありながら、比較的平坦な土地柄を受けてこれまで数々の洪水に見舞われてきました。そのヒューストンに“ハービー”は50インチ=1,270mmもの降水量をもたらす見通し。年間の降水量に相当します。それというのも、”ハービー”は約1週間にわたって居座ってしまうからです。

ハービーの針路は、以下の通り。
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(出所:AccuWeather

熱帯低気圧に勢力を低下させた”ハービー”ですが、上陸した25日時点でハリケーンのカテゴリーは上から2番目(風速58〜70m)の4でした。ハリケーン3以上でヒューストンを通過したのは1961年9月のハリケーン”カーラ”(カテゴリー4)、2005年10月の”ウィルマ”(カテゴリー3)以来となります。

27日だけで911に掛かってきた電話が5万件以上に及んだとされるだけあって、被害は深刻そのものです。現在、州兵3,000人以上が活動中で米国沿岸警備隊からボート保有者までが救助に乗り出しています。テキサス州内にある250ヵ所の高速道路は閉鎖され、30万世帯が停電に遭い、米連邦緊急事態管理庁(FEMA)によると避難者は3万人に達する見通しとされています。

テキサス州の被害状況は、以下の通り。

風力の猛威を物語る1枚。
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こうして、救助されていくのですね。
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(出所、カバー写真ともにTexas Military Department/Flickr)

“ハービー”上陸に備え、前週末に米国の石油精製能力の半分を担うメキシコ湾岸の石油関連企業は施設の稼働停止を決定しました。27日時点で閉鎖された産油量は1日当たり37.9万バレルと、同地域での生産量の22%に相当したといいます。26日の25%と比べれば多少は緩和されました。

トランプ米大統領は、緊急事態を受け29日に現地入りする予定です。その裏で、人種差別的取り締まりで有罪となったアリゾナ州の元保安官、ジョー・アルバイオ氏(85)歳に恩赦を与え、ニューヨーク・タイムズ紙(Its timing also raised eyebrows, coming on the eve of Hurricane Harveys..)など主流メディアは”ハービー”を隠れ蓑に使ったと示唆しています。シューマー上院院内総務はもちろん、ここぞとばかりに「”ハービー”を利用した」と非難していました。その半面、共和党寄りのFOXニュースは「素晴らしい指導力を発揮した」と称賛を送ったナン・ヘイワース元下院議員の言葉を伝えていました。

政権の本領発揮はこれからでしょう。支持率にどのように影響してくるのか。ちなみに8月28日時点で不支持率は55.5%、支持率は38.6%。支持率の過去最低は、バージニア州シャーロッツビルでの衝突まもなくトランプ米大統領の対応が問題視された8月14日の37.4%でした。

(出所:RealClearPolitics


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年8月28日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。