北朝鮮のミサイル発射:非常時の医療体制はどうなる? --- 松村 むつみ

2017年08月31日 06:00

災害や事故を想定したトリアージ訓練(海上保安庁サイトより:編集部)

8月29日早朝、北朝鮮が中距離弾道ミサイルを事前通告なく発射しました。 もしミサイルが、日本の国土の上に着弾したらどうなるでしょうか。北朝鮮は同時に数十発を日本に打ち込む能力があるともいわれ、着弾した数によっても、ミサイルの種類によっても、被害状況はかわってくると思われますが、核シェルターの普及が十分でない日本では、甚大な被害を被ることが予想され、国土全体がパニックに陥ることは容易に予想されるところです。身体にミサイルによるダメージを受けたとき、どこの病院に行けばいいのか、医療体制はどんなふうになっているのか、気になる方も多いかと思います。

あなたの地域の「災害拠点病院」を把握しておこう。

全国には、厚生労働省より災害拠点病院に指定された600を超える病院があり、ミサイル攻撃なども含めた災害時には、大規模災害発生時に傷病人を受け入れ、地域の災害医療を担います。災害拠点病院は、災害時の情報伝達や傷病者の受け入れノウハウが整っており、挫滅などの外傷に対する専門的対応能力が高く、災害医療チームも備えられています。「災害拠点病院」ときくと、何か特別な病院かと思ってしまうかもしれませんが、市民病院や国立病院、大学病院といった地域の基幹病院が指定されていることが多いです。

例えば、東京都港区の災害拠点病院は、東京都済生会中央病院、慈恵医大附属病院、北里大学北里研究所病院が指定されています。

災害拠点病院は、厚生労働省のホームページにリンクされたPDFで見ることができます。ぜひ、あなたの地域についても確認してみてください。

病院には災害時のマニュアルが備えられている

東日本大震災の被災地では地域の医療機関が「野戦病院」と化した=『石巻赤十字病院の100日間』(小学館)より引用:編集部

日本全国の殆ど全ての病院には、災害時のマニュアルが定められています。最近では、厚生労働省の方針のもと、急を要する事態に対する対応のノウハウだけでなく、有事であっても病院業務がとどこおりなく持続できるようにとした観点から(これをBCP:business continuity planといいます)、医療のみでなく食料などの備蓄、災害の記録などにいたるまでがマニュアル化されています。職員の招集基準、医療チームの結成、入院患者、外来患者への対応、トリアージについて、こと細かに定められています。

しかし、従来、日本では「災害」というと、通常は地震などの自然災害が想定され、東日本大震災の経験を踏まえて、「災害対策マニュアル」イコール「地震対策マニュアル」となってしまっている病院も多く、ミサイル着弾やテロに対する想定が手薄な病院は少なくありません。そういった施設では今後の迅速なマニュアル整備が必要でしょう。

医療チーム“DMAT”とは?

災害発生時には、DMATと呼ばれる医療チームが都道府県などの要請を受けて派遣されます。DMATはDisaster Medical Assistance Teamの略で、医師、看護師、業務調整員(事務員)で構成される、少人数の専門の訓練を受けた医療チームで、48時間以内に活動開始できる機動性を持っています。DMATは、DMAT指定病院(災害拠点病院と同一であることが多い)に勤務し、国立災害医療センターで行われる講習を受けたものが資格を得て登録され、普段から訓練を受けています。自衛隊などの大型航空機を使った搬送が行われることもあります(これを広域医療搬送といいます)。

災害発生後48時間をすぎると、DMATと入れ替わる形で、日本医師会や日赤、その他組織の医療救護チームが派遣されて避難所などでの活動が継続されます。

ミサイル着弾の際にも、まずはDMATの派遣がおこなわれ、トリアージが行われるであろうと考えられます。

北朝鮮のミサイル発射を受けて、緊急時、災害時の医療体制について書かせていただきました。今後は、地震などの自然災害だけではなく、核兵器、生物・化学兵器による攻撃や、テロなどを想定した総合的な、そしてより専門的な訓練が必要になってくると思われます。

スイスや北欧諸国などでは公共施設や個人宅のシェルター普及率が高く、日本においても、学校や病院、地下鉄などの整備の際に、シェルター設置などの災害対策を考えていくことも必要になるかもしれません。


松村 むつみ
放射線科医、人口問題及び医療・介護政策ウォッチャー
アゴラ出版道場二期生

東海地方の国立大学医学部卒業、首都圏の公立大学放射線医学講座助教を得て、現在、横浜市や関東地方の複数の病院で勤務。二児の母。乳腺・核医学を専門とし、日常診療に重きを置くごく普通の医師だったが、子育ての過程で社会問題に興味を抱き、医療政策をウォッチするようになる。日本医療政策機構医療政策講座修了。日々、医療や政策についてわかりやすく伝えることを心がけている。

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