007に聞く!他部署の上司に好かれれば抑止力になる

尾藤 克之

写真はDaniel Craig(The Late Show/2017.08.15)

「おい、ちょっと良いか」。上司に呼ばれた私は、ある新規プロジェクトに加入することになった。社長肝いりのプロジェクトで、各部署の若手が集められチームを結成するというのだ。主要メンバーとして、私以外は、営業部3名、システム部2名、企画部1名、マーケ1名、専任アドミ1名。統括として6年目の佐々木課長がアサインされた。

さて、本題にはいる前に報告がある。約3年半ぶりに出版をおこなった。タイトルは『007に学ぶ仕事術』。私は、献本された本を記事にすることが多い。今回はそれが編集者の目に留まり出版にいたった。読者の皆さまへ感謝として報告を申し上げたい。

社長肝いりプロジェクトのよくある話

「これは社長肝いりの特命プロジェクトだ!皆さんには全力を尽くしてもらいたい!」。佐々木課長はエールをかけた。部下思いらしく、個人の意見を尊重してくれる良い上司との評判だった。佐々木課長はメンバーを集めて、事業拡大のためのミーティングを開いた。最近話題の人口知能(AI)が話題にのぼった。

我が社では人工知能(AI)を用いた最先端の自動コンサルティングシステムの開発に、ここ数年力を入れており、中小企業向けの簡単な業務診断システムが完成しようという段階であった。このシステムを導入しながら、業務改善や人事マネジメントといった、本業のコンサルティング事業に結びつけようと考えていた。

すでに企業向けのトライアルは終了しており、前例がない画期的なシステムとして評判になっていた。私は導入対象となりそうな企業をリストアップし、どのように売り込むか営業戦略を立て始めた。しかし、新規プロジェクトにも大きな壁が立ちはだかる。商品となるシステムのバグが半端ではなかったのである。

私たちは、佐々木課長に救いを求めた。部下思いの課長と評判だ。何らかの形で力になってくれるであろう。しかし佐々木課長は「お前たちなら解決できる!ピンチはチャンスだ!夢に日付をいれろ!途中で諦めるな!頭を働かせるんだ!夢にときめけ!明日にきらめけ!」と、夕焼け番長さながら、青春漫画のようなセリフを繰り返すばかりだった。

私たちのモチベーションは急速に下がっていった。社長肝いりのプロジェクトは1年も経たないうちに、総務部預かりになり、その1ヵ月後、お蔵入りプロジェクトとなった。私は具体的な指示をせずに「お前たちなら絶対できる!弱音を吐くな!絶対負けるな!」と鼓舞し続けている上司を信じなくなっていた。

直属の上司には保険をかけておけ

「007黄金銃を持つ男」の中に次のようなシーンがある。日本で消息を絶ち殉職したと思われていたボンドはロンドンに現れる。しかし、Mを暗殺しようとしてしまう。ボンドは、ウラジオストックで捕らわれの身となりKGBの手で洗脳されていたのだ。治療を受けて回復したボンドにMは次のような厳しい厳命を下す。

「成功すれば汚名返上、失敗すれば名誉ある死を!」という困難な任務を与えた。007は映画の世界だが、ボンドとMは上司と部下の関係であり、師弟関係が存在する。Mに忠実に尽くしてきているボンドに対して、少々厳しすぎる任務とは言えないか。サラリーマンならこのような時、リスクヘッジを考えなければいけない。

社内には、師弟関係があると思っていながらも、ハシゴを外す上司の存在がある。私が勤務していたコンサルティング会社にもこのような上司が大勢いた。仮にこの上司の名前を、大島部長と仮定してみよう。ネットを活用した新たな新商品を事業計画に盛り込んでいた。事業計画は承認されてカットオーヴァーの運びとなる。

ところが、ちっとも新商品が売れる気配はない。大島部長は、メンバーに対しては「好きにやっていいぞ!」と指示を出すが、自らが積極的に関わろうとはしなかった。「好きにやっていいぞ!」と言われれば、皆な信頼されたと思い当初は感激するものだ。しかし、ハシゴを外される経験をすると皆な経験値があがり学習をする。

問題はこのような上司にどこまで付いて行くかになる。まず、一定の距離をとらなくてはいけない。理由は明白である。成功することで美味しい思いをするのは上司で、失敗をして痛い目にあうのは部下になるからである。とりあえず上司なので会社のルールとして従う。これは鉄則だろう。上司に嫌われたら将来が悲惨なものになる。

この時、やらなければいけないのは、他部門に保険をかけることである。卑劣な上司から「信頼できる他部署の上司にくら替えする」。他部門の上司と親しくすると、直属の上司は猜疑心をいだくようになる。他部門の上司の存在は抑止力にもつながる。「それが社内で生き残る策である!」とアドバイスをしておきたい。

ダニエル・クレイグ(49)が、米トーク番組「The Late Show」で、007シリーズの次作品に復帰することを明かした。本記事のキャッチ画像をご覧いただきたい。司会者の質問の後に「YES!」と答えている。私にとっては感動的なシーンだった。

参考書籍
007(ダブルオーセブン)に学ぶ仕事術』(同友館)

尾藤克之
コラムニスト

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