7月に『失敗の法則 日本人はなぜ同じ間違いを繰り返すのか』(KADOKAWA)を上梓したアゴラ研究所所長の池田信夫氏。本著でも語られる日本人が陥りやすい失敗パターンの共通点とそれを生み出した歴史的背景を紐解きつつ、これからの日本企業や日本経済に必要とされることとは何かを伺いました。

日本人の失敗パターンの本質はほぼ同じ

『失敗の法則 日本人はなぜ同じ間違いを繰り返すのか』

第1法則 現場が強いリーダーを許さない
第2法則 部分が全体を決める
第3法則 非効率を残業でカバーする
第4法則 「空気」は法律を超える
第5法則 企業戦略は出世競争で決まる
第6法則 サンクコストを無視できない
第7法則 小さくもうけて大きく損する
第8法則 「軽いみこし」は危機に弱い

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――本では8つの「失敗の法則」を紹介されていますが、本質はほとんど変わらないように感じました。

そうでしょ(笑)。要するに、小さなことは非常にきちっと決められるんだけども、大きなことは決められないんです。日本の会社にしても役所にしても、小さなことはきちんと丁寧にすごくしっかりやるんですよ。残業してでも何してでも。電通や居酒屋の過労自殺の話も日本人が陥りやすい罠ですよね。「自殺するくらいなら会社を辞めればいいんじゃないか」って思うでしょうけど、日本人にとって会社っていうものが非常に強固な世界だから、その外に出るということを考えない。逆に言うと、経営者側も社員がそう思っているからサービス残業など無茶な働き方をさせる。つまり、両方がペアになっているんですね。日本人にとっては、小さな世界できちっと完璧にやるということがモラルとして確立しているわけです。

――日本人なら言葉にせずとも共有している「暗黙知」ですね。それが生まれた背景には何があるのでしょうか? 日本人にとって会社が家的な存在であることも関係しますか?

日本の会社の説明として、「家」や「家族主義」っていう言葉はよく使われるんだけども、厳密にいうと「家族」とは違うんですよ。「家」というものは中世以降に日本でできて、いまの「家」と呼ばれる仕組みの原型は江戸時代くらいにできたわけですけど、「家」というのは別に血縁集団じゃない。ある種の機能集団なんですね。江戸時代以降は地縁が強い集団になって、養子をとったりするようにもなったわけ。中国の宗族のような大きな親族集団ではなく、親子3代くらいの小家族中心の集団で、そうした「家」が集まって「村」ができ、その外側に「国」ができた。そういう何層かの構造になっているのだけど、それは必ずしも「家族」という感じではないんです。どちらかというと、当時の「家」の最大の目的は農耕なんですよ。土地は限られていますから、狭い土地をいかに有効活用するかを考えるわけです。一番簡単な方法は、夜遅くまで働く。山の上まで段々畑をつくって畑を耕すにも、長時間労働が必要です。こうして皆で協力して働く「勤勉革命」が起こったわけです。本にも書きましたけど、日本人がいまだに世界一と誇っていいのは土地当たりの生産性。狭い土地でひしめき合って暮らしていると喧嘩をしがちだけど、日本人はそんな環境の中でも皆で心を一つにしてしっかりやろうという、勤勉革命以来の仕事の仕方が頭に根付いちゃっているんですね。

■可住地面積あたり名目GDP(万ドル/km2

可住地面積あたり名目GDP(万ドル/km2)

池田信夫 blog「日本人の『土地生産性』は世界一」より

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アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2017年9月3日のエントリーより転載させていただきました。