「大阪維新の会」、原理主義者たちの屈折 --- 宇山 卓栄

寄稿

堺市長選は現職の竹山氏(左)と新人の永藤氏の一騎打ち(公式SNSより:編集部)

雨の日も、風の日も

東京の人にはわからないかもしれないが、「大阪維新の会(以下、「維新」とする)」を支持する人々の熱狂はスゴい。橋下徹氏が去った後もまだまだスゴい。

7月の都議選で「都民ファースト」が大勝した時、熱気はあったが、熱狂という程のものはなかった。「維新」には、その熱狂がある。支持者たちは「維新」が大阪を改革し、変えると信じている(実績もある)。支持者たちは自ら進んで、雨の日も風の日も街頭でビラを配り、声を張り上げる。

彼らは改革を「大阪都構想(以下、「都構想」とする)」によって達成しようとする。「都構想」とは何か。一言で言えば、大阪市のような政令市を解体し、東京と同じように特別区(千代田区や中央区など)を創設する構想だ。政令市の巨大行政機構が様々なムダを生んでいる、だから政令市を潰せ。これが「都構想」だ。

この「都構想」を「維新」は政策の一丁目一番地に掲げる。「維新」は「都構想」とともにあり、「都構想」によって改革を断行しようとする原理主義者たちの集団である。

修正主義者

橋下氏以来、その原理主義を徹底させる姿勢や情熱が大阪人の強い共感を呼び、「維新」は熱狂的に支持されてきた。ところが、その原理主義を転換しようとする修正主義者が現れた。「都構想」を受け入れない、これを拒絶すると言っているのだ。

現在、大阪市南部に位置する堺市(政令市)において、堺市長選挙(10日告示、24日投開票)が行われている。この選挙選に先立ち、7日に公開討論会が開催された。3選を目指す現職の竹山修身市長(67)=自民、民進、こころ推薦=と、「維新」公認の元大阪府議、永藤英機氏(41)が「都構想」などを巡り議論を交わした。

この討論会で「維新」の永藤氏はこう明言した。

「(市長になれば)自分の任期中には都構想を議論さえしない」

なぜ、除名しないのか

永藤氏が「都構想」を拒絶した瞬間、「維新」の原理主義は破られた。そして、このような修正主義者が堺市長選の「維新」の公認候補となっている。驚くべき大転換だ。

なぜ、永藤氏は修正主義の立場を取るのか。理由は簡単だ。多くの堺市民は「都構想」によって、堺市を潰されたくない。その多数派に配慮し、「都構想」を拒絶したのだ。つまり、選挙の票目当てということだ。

政党・党派というものは政策理念を同じくする者が集まる組織・集団である。政策理念が一致していなければ、その政党・党派は「野合」と呼ばれる。

永藤氏は「都構想」を拒絶すると言った。「維新」の政策一丁目一番地たる「都構想」を。政策理念が決裂していることは言うまでもない。なぜ、「維新」はこのような修正主義者を放置し、許しているのか。なぜ、支持者たちも黙っているのか。即刻、除名をするべきではないのか。「維新」の生みの親たる橋下氏は理念なき「野合」を最も嫌った。

宙に浮く維新スピリット

古今東西、原理主義者たちが構成する組織というものは、内部の修正主義を最も危険視する。外の敵よりも、内の修正主義が恐ろしいのだ。熱狂は盲従と盲信によって支えられる。組織の目指す原理や理念に異議を挟む修正主義は熱狂の高揚に冷や水を浴びせる。熱狂がなければ、「維新」のような新興組織は改革の原動力を保つことができない。組織にとって、大いなる脅威である。

一つ聞きたい。「都構想」とともにある維新スピリットを持つ堺市民は今回の市長選で、いったいどうすればよいのか。彼らは永藤氏には票を入れることはできない。「維新」の中核理念たる「都構想」への熱い思いを永藤氏は打ち砕こうとしているからである。

「都構想」は大阪市では良いもので、堺市では悪いもの、そんな二枚舌は許されない。良いものは良い、どこの地域でも分け隔てなく、良いものは良いのである。良いものを良いと言えない永藤氏はいったい何なのだろうか。「維新」の理念と信念に叛く、これ程の背信行為が他にあろうか。

自己批判を

因みに私は「維新」が「腐れ自民党」と呼ぶ大阪自民党の一派である。2015年の大阪府議選に自民党から新人として立候補したが「維新」に敗れた。だから、「維新」には批判的な立場である。別に「維新」がどうなろうと知ったことではないが、先程から述べている露骨な選挙票目当ての修正主義が「維新」の中でなぜ、許されているのか、それが不思議でならないから、こうして筆をとっている。

「維新」による「腐れ自民党」に対する批判はもう充分聞いた。当たっているところも多々あろう。今度は「維新」内部に巣くう修正主義についての自己批判を聞きたい、そう願っている人が「維新」支持者にも多くいるだろう。

宇山 卓栄
1975年、大阪生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。著作家。2015年、自民党から大阪府議会議員選挙に出馬するも、次点落選。テレビ、ラジオにも出演し、歴史をベースとした視点から、時事問題や国際情勢を解説する切り口に定評がある。近著は『大阪のお金が誰でもわかる本』(あたま出版)。