あれ?売れたぞ。新聞の書籍広告とアマゾンの意外な連動効果

2017年09月14日 06:00

新聞業界の先行きを不安視して、30代なかばで転身した身としては、「新聞広告なんてオワコンじゃないか」と常々思っていた。実際、日本の新聞広告費(2017年は5,431億円)が、自分が社会人になった2000年当時と比較しただけでも6割も減っている(出典:新聞協会サイト)。もちろん、高齢者向けにターゲッティングした商材ジャンルによっては、それなりに効く部分は残っているだろうが、Eコマースとの連動性は新聞読者との世代的なズレが大きいと思っていたら、どっこい自分の新刊「朝日新聞がなくなる日 – “反権力ごっこ”とフェイクニュース 」の新聞広告で意外な反応があった。メディア業界、広告関係の方のちょっとした参考になればと思う。

最初の踊り場をどう乗り切るか

政治本やメディア本は売れないというご時世にあっての出版はまさに「無理ゲー」。でもやらねば。8月最終週に発売してから、しばらくはアゴラなどで関連記事を書いたり、SNSでの発信をしたりして基本的にはネットでのプロモーションに力を入れていたわけだが、おかげさまでアマゾンではサブカテゴリーのサブカテゴリー(マスメディア>メディアと社会)で1位を取るなど、ミニタイトルはゲット。プロモーションの効果で、何十万という書籍がある中、全体のランキングで1000位くらいまでは浮上し、初動としてはまずまずだった。

ただ、ご承知の通り、書籍市場全体としては縮小傾向でも新刊点数は毎年のように増えている過当競争になっており、発売から半月もすると、私のように民放キー局やAbema TVにも出ない無名著者の場合はコアのファン層(私の場合はアゴラの熱心な読者など)を周回すると最初の踊り場に直面するところだ。ここをブレイクスルーできるかは、もちろん本の中身の真価が問われるか、好意的なレビューがつくかなどもあるが、コアの外側にいる人たちに横展開するパワーを、どう生みだしていくかにかかるのだろうと思う。

発売から半月近くを迎えて、ネットでのコアの読者の方々への周知は第1段階を終えたからか、拙著もアマゾンランキングは3000位までじりじりと下がってきたところだった。なのであとは、この紙媒体衰退のご時世にあってリアル書店で本を手にされる層の方々にいかに訴求していくか、版元もこのあたりの流れを計算していて、ここが勝負どころというわけでおととい(9月12日)、産経新聞の朝刊3面でドンと広告を打った。

実際に紙面をみてびっくりしたが、版元が買った枠の中で紹介しているのは拙著だけ。まさに勝負をかけてくれたもので、私と宇佐美典也さんへの期待がいかに高いものだったか、熱いものを改めて感じた次第だった。しかし、本の作り手としての感傷は読者に関係ないことだ。これによる皆さんの反応はというと幸いにしてリアル書店での注文の伸びも良かったようだが、ほとんど期待してなかったアマゾンのランキングが予想外に上昇したことだった。12日未明に私が見た時点では3000位だったと記憶しているが、昼間、ビジネス書市場に詳しい知人から「売れまくりじゃないですか」と知らせを受けてアクセスしてみると、300位まで上昇。

アマゾンランキングは1時間ごとに最新の数字が表示されるが、確認した限りではその日の夕方202位まで上がり、「マスメディア」カテゴリーでは佐々木俊尚氏らのロングセラーを抜いて一時トップに躍り出た。グラフはアマゾン著者セントラルの13日未明のデータだが、突然跳ねているオレンジの折れ線が該当部分だ。

過去2冊を出しているが、知名度のなさ等から1000位の壁を越えるのがやっとだった私としては「新記録」。今回は単著ではなく初の共著であり、私よりも各メディアに出まくっている宇佐美さんの知名度、ブランドでゲタを履いていたことも大きかったのだろうが、それにしても先述した読者の年齢層の違いで新聞広告とECサイト(アマゾン)との親和性は薄そうに感じていたので、意外な効果を実感した。

「産経広告→アマゾンポチ」はどんな層か

もちろん、最大の要因としては、本書のテーマである朝日新聞批判が、5大紙の論調で「最右翼」と言われる産経新聞の読者層の政治観・メディア観にマッチしたのは間違いない。ただ、現段階では私個人の仮説でしかないが、40〜60代の定期購読層で「買い物くらいならネットは利用するが、ネットのニュース記事は大手媒体配信程度は読むものの、アゴラなどマイナーなサイトにまでは接触しない」という層がいて、その中でも保守的志向のクラスタがいて「あっ、朝日批判本でこんなものがあったんだ」と気づいたのではないだろうか。

この仮説が当たっているとすると、悲しいかなアゴラや私個人の発信力がまだまだ弱いということの裏返しでもある。ネットの中堅メディアではリーチしない層のボリュームがまだまだ大きく、そうした方々の目にも映るようなプレゼンスを僅かでも高めるべく、たまのテレビ出演や雑誌の寄稿も積極的に受けているわけだが、今回思ったのは新聞広告の弱点とされる広告効果の検証部分に関して、まだまだ捉えきれていない層もあるのではないかという点だ。

“撤退戦”にあっても勝てる局所はまだあるのでは?

もちろん全体のトレンドとしては今後も厳しくなっていき、新聞の広告担当者はこれからも長期的な「撤退戦」と向き合っていかねばなるまい。しかし、(元記者とはいえ広告部門は)門外漢ながらネットに出ている媒体資料をみると、たとえば今回の舞台となった産経新聞の資料では、複数の新聞社で運営している調査方式「J-MONITOR」のほか、購入意向・態度変容などの定型調査などが紹介されてはいる。社内のみ共有、クライアントのみ開示のデータもあるが、そもそも産経広告もその強みである読者の保守的志向のことはデータで言及すらされていない。撤退戦トレンドにあっても局所的に成果を収められる「戦場」は残っているのではないか。

広告スペースの売り買いだけに注力しているだけの時代はとうに終焉した。その中でスペースに連れてこられるかもしれない顧客がいながら、科学的なマーケティングノウハウの不足によって誘導できず、みすみす勝機(商機)を逸している部分があるようにも思えた次第であった。

なお、古巣の読売新聞一面でもサンヤツ広告を載せていただく予定でその反応も注視している(中退者としては、読売の皆さんへの気恥ずかしさもあるが、社内の書店では売れているそうで感謝)。実は朝日新聞にも広告出稿のご提案はさせてもらったものの、残念ながら審査落ちしたと聞いている。社内の担当者はギリギリまで調整してくれたとのことで関係者には感謝しているが、名門紙としての度量よりプライドを優先したとすれば残念なことだ。

しかし、今回の書籍はどちらかといえば、朝日新聞の関係者、読者層の方々にこそお読みいただきたいと思っているので、声は小さくてもネットから引き続きアプローチしていければと思う。

ちなみに、ご自身での出版、著者デビューに興味がある方、アゴラでは引き続き「著者セミナー」もやっております(次回は10月11日開催)。11~12月には第3期の出版道場も開催予定です。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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