マナー講師に聞く!蕎麦は音を立てて食べてはいけない?

尾藤 克之

写真は講演中の西出氏

いよいよ秋が到来した。秋といえば「スポーツ」「芸術」に加え、やはり「食欲の秋」ではないだろうか。そして味覚狩りにあわせて接待の頻度が高まっていく。今回は、『かつてない結果を導く超「接待」術』(青春出版社)を紹介したい。接待の場面をうまくコントロールしながら、楽しむTPOを覚えておきたいものだ。

西出ひろ子(以下、西出氏)は、マナー講師である。主な著書としては、28万部のベストセラーを記録した『お仕事のマナーとコツ』(学研) があり、2010年「NHK大河ドラマ・龍馬伝」にてマナー指導を担当するなど活動は幅広い。日本でもトップクラスのマナー講師としても知られている。

蕎麦の食べ方は音を立てたほうが粋である

接待で「蕎麦屋」は利用しないという会社が多い。となると、蕎麦の食べ方は知らなくてもよさそうだが、意外にも蕎麦を出す店は多い。多くは、夏場に見受けられる。

「もちろん事前に確認をしたほうがいいでしょう。ですが、蕎麦は、カジュアルな食べ物ではありますが、日本を代表する人気の和食のひとつ。外国人も、蕎麦やうどん、ラーメンなど、日本の麺類に興味をもち、人気です。実際の接待では行かないかもしれませんが、食べ方は覚えておいたほうがいいでしょう。」(西出氏)

「いまから、特に外国人に対する接待時の話題のひとつとしても活用できる、ツウな蕎麦の食べ方をお伝えしましょう。」(同)

では、ツウな食べ方とはどのようなものか。

「せいろの中央から、一口ですすれる量(蕎麦は6本程度、うどんは3本程度)を取ります。箸を横にすればスムーズです。最初は、何もつけずに、せいろの中央から取ると、蕎麦のみをいただきます。続いて、つゆを猪口に入れます。猪口を両手で持ち、箸をもち、猪口を利き手ではないほうの手で持ちます。」(西出氏)

「一口ですすれる量の蕎麦をとり、少量のつゆをつけて食べます。つける量は好みですが、つけすぎは要注意。次に、味の薄い薬味から猪口に入れ、それぞれの味を楽しみます。わさびは溶かさずに、箸に少しつけて、蕎麦と一緒に食べてください。」(同)

私は江戸っ子だが、江戸っ子は蕎麦にうるさい。割り箸は口にくわえて割るのが粋だ。力を入れすぎてはダメだ。上の11、12番、下は31、41番で軽く噛まなくてはいけない。引っ張る力は左右均等にしなければいけない。蕎麦は香りを楽しむために、つゆをあまりつけない。一口食べたら香りを楽しむ。つゆにわさびを溶くこともご法度である。

そして、食べるときには遠慮せずに音を立てる!落語で蕎麦を表現するのに一番大事なのが「音」。また、蕎麦は噛まずに飲み込むことで、喉越しを楽しめる。

「蕎麦は『音を立てて食べるのも美味しさのうち』といいますが、周囲の人がびっくりするほどの音を立てないように。食べ終わったら、猪口に蕎麦湯を注ぎ入れて飲みます。蕎麦湯は、蕎麦をゆでた時のゆで汁のことです。蕎麦に含まれる成分が溶け出しているので、健康に良いといわれています。」(西出氏)

「以前は、職人気質から、『こう食べて欲しい』というこだわりのお店もありましたが、近年はお店側も、『お客様のお好きに召し上がってください』というケースが多く、食べ方の作法は、それぞれの自由になってきている傾向にあります。」(同)

TPOを理解するのが真のマナー人である

食事にはTPOが存在する。拙著『007に学ぶ仕事術』のなかでも触れているが、「ロシアより愛をこめて(From Russia with Love)」に、次のようなシーンがある。オリエント急行に乗ったボンドを追うグラントとの食事シーンだ。ボンドは舌平目をオーダーする。グラントもそれにならう。ワインはどうするかとソムリエが尋ねる。

ボンドは、シャンパーニュ(Champagne)、グラントは、キアンティ(Chanti)を注文する。イタリアを代表する赤ワインのキアンティ。ボンドは舌平目に赤ワインを合わせたことで、スパイであることを見抜いたのである。蕎麦は、昔のファストフードだから作法はないという考えもあるが、あえてTPOは重視しておきたい。

「そうですね、TPOは重要です。蕎麦は本来はカジュアルな食べ物で、作法を重視するものではないともいえます。音をたてて食べるほうが粋だと言われていますが、会席料理などのあらたまった席で蕎麦が出てきたら、なるべく静かに食べるなど、TPOに合わせた食べ方を使い分けることのできる人が、真のマナー人といえます。」(西出氏)

「外国人は本来、音をたてて食べることを嫌い、違和感をもっている人が多いようです。しかし、最近では、海外の人も、日本では、蕎麦やうどん、ラーメンは音をたてて食べるのがマナーなのだと理解してくださる方も多くなりました。」(同)

では、どのように食べることが望ましいのだろうか。

「周囲に迷惑をかける食べ方でなければ、食べ方はその人の自由。広く大きく深い心をもって、いつも心を微笑ませていたいものです。とはいえ、接待では、どこを見てどう評価されるかわかりません。食べ方も、相手との関係性や状況を見つつ、臨機応変に自由自在に変えていける柔軟性が必要です。」(西出氏)

「できる大人」と思わせる店選び、スマートさを感じさせる立ち居振る舞い。恥をかかないテーブルマナー、礼儀を知った出迎えからお見送り。相手の心をググッとつかむ、一流の接待マナーを知りたい方には理想の一冊といえよう。

参考書籍
かつてない結果を導く超「接待」術』(青春出版社)

尾藤克之
コラムニスト

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