【映画評】エイリアン:コヴェナント

提供:20世紀フォックス

コールドスリープ中の男女2,000人を乗せた宇宙船コヴェナント号は、滅びゆく地球を飛び立ち、移住先の惑星オリエガ-6を目指していた。だが予期せぬ大事故で船体に甚大なダメージを受けた上、船長をはじめ乗組員の数十人が命を落とす事態に。船長の妻ダニエルズら、生き残った乗組員たちと最新型アンドロイドのウォルターが懸命に修復作業を行っている時、謎の電波を受信する。小型船で調査に向かった先は、移住先より近く、地球によく似た環境の神秘的な惑星だった。なぜか生き物の姿がまったく見当たらないその星で、乗組員が次々に体調異変を起こす中、凶暴な未知の生命体に遭遇したダニエルズたちは、絶体絶命の危機に瀕する。そこに現れたのは、ウォルターの前世代に当たるアンドロイドのデヴィッドだった…。

SFホラーの金字塔「エイリアン」シリーズの原点となる「エイリアン:コヴェナント」。リドリー・スコット監督の前作「プロメテウス」の続編で、エイリアン誕生の衝撃的な秘密が明かされる。ヴィジュアルは期待通りの素晴らしさで、幻想的な大自然が広がる楽園のような惑星の造形と、そこで繰り広げられるB級ホラーさながらのグロテスクな流血の惨劇というギャップに震えてしまう。エイリアンの誕生秘話に、人型アンドロイドの持つ知性や意志をからめたストーリーが、同監督の傑作SF「ブレードランナー」とも共通するモチーフなのが興味深い。映画の大きな特徴として、監督や俳優の、過去の他作品が色濃く影を落とすという興味深い事実を改めて認識させられた。

何の情報もない怪しい惑星に、部下が制止したにも関わらず、嬉々として足を踏み入れる新船長の愚行が、その後の長い長い惨劇の原点とは、情けない気がするが、ともあれ、エイリアン誕生のその理由をしっかりと知ることになるのはシリーズを見てきたファンとしては嬉しい。だが「プロメテウス」未見の観客にはわからない部分も多いので、少々不親切な作品でもある。クライマックスのどんでん返しは、予想通りのものだったが、それでもその衝撃とショックは破壊的だ。キャサリン・ウォーターストーンがタンクトップ姿でリプリーばりの雄姿を見せて好演しているが、そもそも「エイリアン」は戦う女性キャラがウリだったはず。それなのに、このシリーズが、いつのまにか、マイケル・ファスベンダーの映画になってしまっていることに、ちょっと苦笑いしてしまった。人間VSエイリアン、人間VSアンドロイド、さらにはアンドロイドVSアンドロイドまでも。この戦いに終わりはないと、ため息が出た。
【70点】
(原題「ALIEN: COVENANT」)
(アメリカ/リドリー・スコット監督/キャサリン・ウォーターストーン、マイケル・ファスベンダー、ジェームズ・フランコ、他)
(流血度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年9月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。