エコノミストではない有識者が考える、米金融政策とは

2017年09月17日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーでは7〜9月期決算の注目銘柄としてキャタピラー、アナログ・デバイシズ、アライン・テクノロジー、E*トレード・フィナンシャル、レッド・ハットを挙げる。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週は米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え金融政策の在り方に焦点を当てる。抄訳は、以下の通り。

もし経済学を学んでいない人々がFedを運営すればどうなるのか?—What if Real People Ran the Fed?

9月19〜20日開催のFOMCで、FF金利誘導目標を1.0〜1.25%で据え置くに違いない。同時に、4.5兆ドルに及ぶ保有資産の圧縮を決定する見通しだ。金融危機の引き金を引いたリーマン・ブラザーズの破綻から9年を経て、ようやく量的緩和の政策を巻き戻すことになる。Fedの統治目標の一つである完全雇用はほぼ達成し、失業率は4.4%で企業は人材不足に直面しており、気は熟したかのようだ。ただしインフレ率は依然として目標値の2%以下にとどまる。

いずれにしても、金融政策の決定は博士号を取得する専門家が行ってきた。例えばマサチューセッツ工科大学はベン・バーナンキ前FRB議長とマリオ・ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁を輩出、共に10月にFRBを去るスタンリー・フィッシャーFRB副議長の教え子だった。

しかし、必ずしもFRBで金融政策を担っていたのは博士号を取得した学者ばかりではない。1950〜60年代には元証券仲介業者のウィリアム・マチェスニー・マーティン・ジュニア氏が率い、時には政策をめぐって大統領と対立したものだ。ルーミス・セイレスのダン・ファス氏は「マーティン元FRB議長はエコノミストではないことで有名だった」と語る。ファス氏がイェール大学の資産ポートフォリオを運用していた1970年代初め、既に引退していたマーティン元FRB議長は同大学の投資委員会に籍を置き多くの人々と語り、それぞれの意見をよく聞いていたという。そのマーティン氏の政策手腕に、ファス氏は「パーティーが盛況になった時、Fedは会場からドリンクをさげるべきだとの言葉に集約される」と語る。つまりインフレ加速の前にFedは行動すべきで、それは必ずしもモデルや数式では決められない

FOMCには現在、3つの空席がある。今後空席を埋めるであろう人物が博士号を取得するエコノミストなのかどうかは分からない。今後のFedはどのような方向性を目指せばよいのか。博士号を取得していない有識者の考えは以下の通りである。

現在のFOMC参加者の面々。
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(作成:My Big Apple NY)

●フェリックス・ズラウフ(ズラウフ・アセット・マネジメント創設者、バロンズ誌恒例ラウンドテーブルの出席者)
金融政策は雇用を生まない。資本や企業家が雇用を創出し、かつ健全な教育システムが学生を育てそうした人々が仕事を担っていく。従って、Fedは安定的な金融環境を提供することに従事すべきだ。

●ダニエル・ディマルティノ・ブース(中央銀行に懐疑的な識者で”Fed Up”の著者、投資ニュースレター”マネー・ストロング”を配信)
Fedの政策は資産市場に歪みを作り、特に商業不動産で顕著である。しかし、イエレンFRB議長率いるFOMCは利上げができず、資産圧縮に取り組むのみとなるだろう。

●ジェームズ・グラント(元バロンズ誌記者、投資ニュースレター”グラント・インタレスト・レート・オブザーバー”を配信)
本来であれば金融政策の正常化に取り組むべきで、個人的には直ちに25bpの追加利上げと共に資産圧縮を行うべきと考える。しかし、米経済は未だに(過去の例でみて)標準的な水準に耐えられそうにない。

●デビッド・P・ゴールドマン(バンク・オブ・アメリカの元クレジット・リサーチ・ヘッド)
Fedは利上げに急がず、非常にゆるやかなペースで資産圧縮を実施することが賢明と考える。低インフレは需要の鈍さを表す。然るべき財政政策で成長が支援されるようになるまで、正常化を待つべきだ。

●ロバート・ケスラー(ケスラー・インベストメント・アドバイザー代表)
米経済の景気後退入りは近いため利上げすべきではないが、利上げするとなれば利下げ余地を作るために行動すべきで、非常に馬鹿らしいことだ。ハリケーン”ハービー”や”イルマ”の影響で被災地域の米国人をはじめ債務が重くのしかかり、利上げに対する米経済の耐久力は小さいだろう。次の景気後退局面でFedはゼロ金利政策への回帰を余儀なくされ、日銀やECBも同じ道をたどるのではないか。

●ポール・カスリエル(レガシー・プライベート・トラストのシニア経済投資アドバイザー)
・Fedはマネーと信用の伸びに注力すべきで、共に伸びは鈍化中だ。私の分析では、マネー(銀行の準備金と通貨量)と銀行の信用の伸びは前年比で3.5%増と、2016年の5%増を下回る。成長率が鈍化するのは当然だ。私ならFedの保有資産を圧縮するより拡大する方を選び、市場にFF金利水準を決定させるだろう。

こうしてみると、イエレンFRB議長が描く手段以外に金融政策のアプローチは数多く存在しているように見える。金融政策は資産価格を押し上げ、経済や所得に恩恵を与えてきたが、その結果として現状がある。アインシュタインは、「 同じことを繰り返しながら、違う結果を望むこと、それを狂気という」との名言を残した。果たしてFedは従来通りの政策を講じていくのか、注目される。


イエレンFRB議長は実質的に1月末に任期切れを迎えるだけに、金融政策が本当にこのまま利上げの軌道を描き、Fedが6月FOMCで示したような資産圧縮が続くかは不透明です。何より、タイトル通り博士号を取得していない人物が議長に指名される可能性を残します。最近でこそ、バージニア州シャーロッツビルでの白人至上主義者と反対派の衝突に関する発言でトランプ米大統領の信頼を損ねたとされる国家経済会議(NEC)のコーン議長ですが、次期FRB議長候補として引き続き有力視されており、彼は博士号を有していません。ちなみに、FRB議長経験者が歴任する米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長としての指名承認を終えたケビン・ハセット氏であれば、ペンシルベニア大学で博士号を取得済みで税制専門家であり、FRBでエコノミストを務めた経験があります。ハセット氏はケビン・ウォーシュ元FRB理事やジョン・テイラー元財務次官のようにFRB議長候補として注目されていませんが、仮に同氏が指名されれば共著の”ダウ 36,000”が大いに話題を提供するでしょうね。

(カバー写真:Federalreserve/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年9月16日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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