日弁連の被害者補償制度について

2017年(今年)の3月3日の日弁連臨時総会において、預かり金等の取り扱いに関する規定の一部改正と依頼者見舞金制度の制定が承認可決されました。

弁護士による業務上横領事件が激増していることが背景にあります。

とりわけ、成年後見人や成年後見監督人に就任した弁護士が、事理弁識能力に欠けた高齢者等の成年被後見人の財産を横領する事件が後を絶ちません。

信託銀行を利用すれば、一定限度を超える金額の引き出しに対して銀行によるチェック機能が期待できる制度があるのですが・・・。

この見舞金制度創設に関しては、若手弁護士を中心に不満を持つ弁護士がたくさんいます。

地域によって異なりますが、月々の日弁連と弁護士会の会費を合わせると、アバウト5万円前後という高額な負担になります(山口県だと年間100万円以上でひと月9万円近い会費負担です)。

それに対し、弁護士の所得では200万円以上500万円未満が一番多く、200万円未満が三番目に多いという窮状です(弁護士白書)。

いきおい、毎月毎月、たくさんの弁護士が自主請求で日弁連から退会して弁護士を廃業しています。

今年の6月だけでも24人の退会者がいました(留学等を除いた純粋な自己請求です)。

重すぎる会費を負担させられながら、犯罪弁護士が出ると血の出るような思いで納めた弁護士会費から見舞金が支給されるのは、心情的には到底納得がいかないでしょう。

私も、重い会費負担もさることながら、システム的な不備に大いに不満を抱いています。

ご存じのように、弁護士には弁護士会独自の懲戒制度があります。

日弁連や弁護士会の公式サイトではありませんが、過去に懲戒処分を受けた弁護士の名前を検索できるサイトもあります。

懲戒理由のうち、「弁護士の品位を失わせた」というものはともかく、自分を信頼した依頼者を裏切る利益相反行為等をやっても「退会」という資格剥奪にならないケースがほとんどです。

ひどい弁護士だと、5回も6回も懲戒処分を受けながら、弁護士として営々と業務を続けている人もいます。

つまり、大甘な処分で不良弁護士を野放しにしておきながら、いざ業務上横領事件が起きたら血税で負担するというバランスを欠いたシステムが、到底納得できません。

私は、弁護士という職業は信頼によって成り立っているので、意図的に依頼者を裏切るような行為をした弁護士は即「退会」にして弁護士資格を剥奪すべきだと考えています。

小さな処分で野放しにすれば、いずれ大きな犯罪を引き起こす可能性も高くなります。

前述のように懲戒処分を受けた弁護士が簡単に検索できるので、処分を受けた弁護士への依頼は激減し、事務所を維持するために「貧すれば鈍す」になるからです。

会員の血税によって被害補償をするのであれば、懲戒処分を厳しくして威嚇的効果を高めるのが当然の措置ではないでしょうか?

弁護士だけでなく一般の方々も、この点についてどうお考えになるのか、ご意見を賜りたいと存じます。


編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年9月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。