テレビ局はなぜ「電波オークション」を恐れるのか

2017年09月20日 19:00

菅義偉官房長官は9月13日の記者会見で、記者の質問に「先進国では電波の周波数の一定期間の利用権を競争入札で決めるケースもある」と答え、電波オークションを検討していることを示唆した。これはほとんどの新聞やテレビは黙殺したが、関係者には大きな反響を呼んでいる。

電波をオークション(競売)で割り当てる制度は、日本以外の先進国(OECD諸国)はすべて実施しており、アジアでもオークションをやっていないのは中国と北朝鮮とモンゴルだけだ。民主党政権でもオークションの導入が閣議決定されたが、安倍政権がつぶした。こんな当たり前のことがいつまでも実現できない背景には、二重三重の誤解がある。

「銀座の土地」が1万坪空いている

最大の誤解は、電波利用料との混同である。官房長官も「電波オークションをどう考えるのか」という記者の質問に「電波利用料の負担額は大手の通信業者では100億円から200億円程度だが、大手の民間テレビ局では数億円程度と大きく異なっている」と答えた。

オークションについての質問に対して、「電波利用料」の負担額を言っても答えにならない。規制改革推進会議の決定にも「電波利用料の改革」と書かれ、オークションは明記されていない。これは政治家を含めて多くの人にある誤解だ。

電波オークションは国有地の払い下げと同じく、新規に割り当てる周波数を競争的に決める制度で、既存の業者には関係ない。国有地を競売にかけるからといって、すでに払い下げられた土地に住んでいる人を立ち退かせないのと同じだ。

電波利用料は家賃のようなものだが、無線局の数に応じて課金するので、数千万人のユーザー(無線局)をもつ通信キャリアの料金が数十局の中継局しかないテレビ局より高いのは当たり前だ。それをいくら「改革」しても、オークションの代わりにはならない。

問題は料金の負担額ではなく、電波が浪費されていることだ。土地にたとえると、現状は都心の一等地をテレビ局が占拠して使っていないような状態だ。彼らのいるUHF帯(470~710メガヘルツ)の時価は数兆円だが、1割も使われていない。これは銀座の土地が1万坪ぐらい空いているに等しい。

電波オークションはこの空き地を民間に売却するようなものだが、テレビ局はオークションで割り当てる「無線局免許」とテレビ局の「放送免許」を混同して、自分たちの土地が取り上げられると思い込み、政治家を使って反対し続けてきた。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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