失敗学で考える「試験合格」の要件

2017年09月23日 06:00

「一生懸命努力しても成績が上がらない」「合格できないのは頭が悪いせいだ」・・・このような声を耳にする度に、私はとても残念な気持ちになります。

若かりし頃、私は密かに(?)このような人たちを個別に指導して、全員司法試験に合格させた経験があります(当初は、択一試験で60点満点中30点も取れなかった人もいました)。

彼ら彼女らの失敗の原因は、(自称)方法論の大家(笑)であった私にとって極めて明白なものでした。
誤りを正しい方向に修正しただけで、本人たちも驚くほど簡単に合格してしまいました(中には、自らの才能の賜物だと自惚れた恩知らずもいましたが…)。

そこで、失敗から学ぶ「失敗学」という観点から(司法試験のみならず)試験に合格できない人たちの特徴を以下に列記しました。

1  勉強をするのではなく”作業”をしてしまう。

小中高の同級生で、やたらと美しい年表を作ったり色とりどりのノートを作っていた人が一人や二人はいたでしょう?

彼ら彼女らの目的は、美しいノートを作成することであって、”考えたり、暗記したり、問題を解いたり”という勉強をほとんどしていません。実際の試験で”芸術作品”の出来映えが評価されるのならともかく、試験問題を解く上で役に立たない”作業”をして勉強をした気分になっているのです。

こういう人に対して私は、ノート整理を一切禁止して情報をすべてテキストに集中させるよう指導しました。
講義中のノートテイキングは必須です(念のため)。

2  アウトプットを疎かにする。

試験当日に合格最低点以上の答案を提出できれば、ペーパーテストは合格します。
逆に言えば、試験当日に合格最低点以上のアウトプットできなければ、必死に勉強しても決して合格することはできません。

漫然とテキストを読んで勉強した気になっていた人には、その都度きちんとアウトプットできるかどうか確認し、確認する習慣を付けてもらいました。

3 「人間は忘れやすい」ということを忘れている。

一度マスターできた事柄でも、一ヶ月も経ってしまうと8割くらいは忘れてしまうのが人間です。
「これ・・・以前にやったことがあるのに」と試験中に悩んでいた人には、「忘れるのは記憶力が悪いのではなく、人間の自然な作用だから気にしなくていい」と言って慰め、記憶の歩留率を上げる工夫を指導しました。

4  過去問を軽視してしまう

「過去に出題された問題と同じ問題は出ない」と言って過去問を軽視する人もいました。
驚くべきことに、中学受験界でも同じようなことがまことしやかに囁かれています。
中学受験の過去問は、学校から受験生へのメッセージです。

「こういう子供に入ってきて欲しい」というメッセージが各校の過去問には実に見事に織り込まれています(予備校に入試問題を外注しようという大学は、中学受験問題を作成する先生方の爪の垢を煎じて飲むべきです)。
中学受験に限らず、すべての試験において、過去5年、10年と問題を遡れば受験生へのメッセージを見つけることができます。過去問こそ最も重視すべき教材なのです。

5  全範囲をカバーしないと不安になる

どのような試験であっても、99%出題されない分野がたくさんあります。旧司法試験論文試験では半分以上がそうでした。

「万一、今年出題されたらどうしよう」と不安になって守備範囲を広げる人がいます。
”外縁が広がれば内包は薄くなる”と言われるように、守備範囲という外縁を広げれば重要部分が手薄になってしまいます。「奇抜な問題が出たらほとんどの受験生は対処できないので、慌てず素直に問題文を読めば打開策が出てくる」と言って、出題可能性の低い分野は切り捨ててもらいました。

まだまだ書き切れませんが、とりあえず以上の失敗例を回避すれば合格可能性はかなり高くなります。
毎年何百人、何千人と合格する試験に才能が必要だとしたら、日本中が天才で溢れてしまいます(笑)。

やり方さえ間違えなければ、それまで低空飛行をしていた人々が(当時最難関といわれた司法試験に)難なく合格できたのです。大切なことは、決してご自身の能力や(中学受験の場合)お子さんの能力を疑ったりしないことであります。

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荘司雅彦
講談社
2014-02-14

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年9月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。

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