肝臓がんと胃がんに免疫チェックポイント抗体が承認

2017年09月24日 06:00

初めてのベトナムだが、運転マナーの悪さには驚くばかりだ。多くのバイクが道路を左へ右へと走り、右折左折時には、いつ衝突するのかとビクビクするような状況だ。また、大気汚染は中国ほどでもないがかなりひどい。しかし、ベトナムの若者たちは元気だし、英語が上手だ。講演後には大学2年の女子学生が私を追いかけて多くの質問を浴びせかけてきた。私も50年近く前にはこのように初々しくて、熱心だったのか、はなはだ疑問だが、輝いた目を見ると、私も元気になる。少しでも若者に夢を与えられたなら、それだけでもハノイまで来た甲斐があるというものだ。夕食会でも、中堅クラスがしきりに話しかけてきたし、ハノイ滞在は有意義に終わりそうだ。

そんな中、9月22日付で、肝臓がんと胃がんに対する免疫チェックポイント抗体が米国FDAによって承認された。期待されていたほどではないが、有効な薬剤がない進行がんという観点で考えれば、患者さんにとっては福音だ。

KEYNOTE 059 (NCT02335411)という試験においては、259名の患者がエントリーされた(ランダム化比較試験ではない)。 また、胃がんと言っても日本で多い典型的な胃がんだけではなく、食道と胃の境界線あたりにできる腺がんも含まれている。259名のうち、143名(55%) (n=143) がPD-1陽性であった(詳細な陽性判定基準の記述は省く)。

この143名のPD-L1陽性患者のうち、腫瘍縮小効果が認められたのは19名(13.3%)で、 このうち2名は完全に腫瘍が消失したとのことだ。19名の腫瘍縮小効果が認められた患者のうち、効果持続期間は2.8+から19.4+ケ月(+は効果が継続中を意味する)、11名は 6ヶ月以上、5名は12ヶ月以上だった。 遺伝子不安定性が認められた7名中4名が腫瘍縮小効果(一人は完全に消失)を示し、効果持続期間は5.3+ から14.1+ か月だった。

相変わらず、効く人にはそこそこ効果が持続するが、有効率は限定的だ。しかし、患者さんの置かれた状況を考えれば、たとえ十数パーセントでも意味があるのは間違いない。ただし、PD-L1陰性も含めて計算すると有効率は10%を切るのはほぼ確実である。PD-L1で選別しても、この程度の有効率なので、絶対的にもっと優れたバイオマーカーが必要だ。われわれは、グランザイムの発現の有無が重要だと言っているのだが、なかなか声が届かない。

そして、肝臓がんだが、154人の患者さんをエントリーしたCHECKMATE-040 の結果に基づいて承認された。効果はいまいちだが、なかなか洒落た臨床試験の名前だ。対象患者はソラフェニブが効かなくなった、あるいは、副作用で持続不能となった患者だ。また、登録された患者は、肝炎が活動期でない患者に加え、HBV (31%) あるいは HCV (21%) 感染がアクティブである患者が含まれたが、両方のウイルス感染が活動している患者やHDV感染者は除かれた。154名中腫瘍縮小したのは22名(14.3%)でこのうち3名は完全に腫瘍が消えた。

効果持続期間は、3.2 から38.2+か月であり、 20名は6ヶ月以上効果が持続、12名は12ヶ月以上持続していた。 副作用としては、十数%の患者でグレード3-4の肝臓の酵素の上昇があり、7%でビリルビンがグレード3-4の高値となったと紹介されていた。そして、5%の患者でステロイド投与が必要となる肝炎症状が認められた。

何も薬剤がない状況では、胃がんと同様に、たとえ、十数%の有効率でも患者にとっては重要だし、効果が継続するのが魅力的だ。しかし、ひとりの有効患者を得るには、その8-9倍の患者さんに投与する必要がある。ひとり2ヶ月の投与で数百万円であっても、ひとりが効果を示すには数千万円の薬剤費が必要となる。予算に際限なければそれでいいかもしれないが、医療経済学的には、使い分けが絶対的に必要だ。


編集部より:この記事は、シカゴ大学医学部内科教授・外科教授、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のシカゴ便り」2017年9月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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中村 祐輔
シカゴ大学医学部 内科教授、外科教授

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