サイバーエージェントのDDTプロレスリング買収への注文

少し時間が経ってしまったが、サイバーエージェントがDDTプロレスリングを買収した。

サイバーエージェントがプロレス買収 アベマTV連携:日本経済新聞 

日経を含め、各紙が報じている。担当記者の中に、伝説の学生プロレスラーの名前があったが、見なかったことにしよう(彼は未だに試合に出ており、実況が社名を言いそうになると嫌がるのだが、日経さんと仕事をする度に話題になる。いい会社だ)。

なるほど、そうきたか。これは少なくともDDTプロレスリングにとってはよいM&Aなのではないだろうか。DDTプロレスリングはインディーズ団体の雄である。ちょうど旗揚げから20年。当初から、クラブでプロレスをする、メジャー団体でも行なっていなかった試合前の煽り映像の導入、エンタメ性の高い試合内容などで注目されていた。2009年から両国国技館にも進出している。

もともと、代表の高木三四郎は学生時代からクラブイベントなどを手がけていた。そのイベサーノリは未だに垣間見られる。抜群の集客力と、必ず盛り上げる力には注目が集まっていた。

もっとも、ここ数年、マンネリ感、手詰まり感もあった。両国国技館、さいたまスーパーアリーナの次は何を目指すのか。飯伏幸太、ケニー・オメガなど同団体出身選手の流出も相次いだ。さらに、この5月には同団体で、プロレス界の帝王と言われた高山善廣が頚椎を痛め、寝たきりの生活になっている。王道の全日本プロレスから派生した団体の一部が苦戦する中、もはやメジャーと言っていいほどの人気、規模、存在感だったのだが、よくも悪くもインディーズ臭が残っているのは、意図的だったのか、あるいは手詰まり感の象徴だったのか。

サイバーエージェントにとっては、Abema TVとの親和性が高いものだといえ、魅力的なコンテンツになり得るだろう。DDTプロレスリングは正統派から個性派まで幅広くレスラーが在籍している。YouTuber的な人たちだらけだ。同団体の魅力は煽り映像や演出だ。選手をキャラ立ちさせ、Abema TV内で露出させるとより人気が高まるだろう。スマホ世代が最初に見るプロレスという立ち位置にも成り得る。

もっとも、もともと手詰まり感のある団体だけに、サイバーエージェント側のプロデュース力が問われるだろう。DDTプロレスリング側からも、サイバーエージェントに単に広告宣伝やAbema TVでの露出を期待するだけでなく、一緒になったからできることを提案していくべきだろう。投資においては、いかに化けさせるかという視点が大切なのだ。

何より、安全で面白いプロレスにして頂きたい。高山善廣事件を風化させてはいけない。

サイバーエージェントは「21世紀を代表する企業」を目指している。21世紀のエンタメプロレス誕生を期待する。


編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2017年9月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。