人生最後の読書をどうするか

2017年09月29日 06:00

少し時間が経ってしまったが、『週刊朝日』の読書コーナーに寄稿。テーマは「人生最後の読書」。なんて秀逸な企画なのだろう。いいなあ、これ。

日常的に、学生や若い人から「オススメの○○は何ですか?」と無邪気に聞かれることがあり。どのジャンルにおいても、それぞれお気に入りがあり、そうそう絞れない。この人生最後の読書にしても、どんな死に方をしそうなのかなどによって全然違うのではないかと思ったり。趣味の読書にするのか、専門分野にするのか、人生を変えた本にするのか。


悩んだ末に、決めたのがこの村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』。これが人生の最後にふさわしい気がした。

ちょうど、人生においても、社会においても変化に富んでいた94年から95年にかけて3回に分けてリリースされた本で。立派な装丁で。大学生協で買ったので、割引にはなったが、高かった印象がある。94年は育ての親である祖母が亡くなり。でも、盟友中川淳一郎と、恩師竹内弘高先生に出会った年で。生活を変えたくて、立川の繁華街に自分のお金で引っ越したのもこの頃だった。

なんせ、この本を読んでいる途中に阪神・淡路大震災と、地下鉄サリン事件があり。政治も経済も混沌としていた。

そんな自分の環境と、世の中の変化と、この本は見事に重なっていて。なんせ、ノモンハン事件にまで話がつながることや、井戸の底におりる、壁を抜けるという行為が新鮮で。思うに、新潮社から出る村上春樹の本はこのように、話がいつの間にかつながっていくものや、生き方や、社会との関係を問い直すものが多いよなって。

その後の人生も、社会の変化も、この本のように奇妙なのだけど。人生の最後に、この本を読むことによって、どれだけ深く考えたのか、不透明な社会をどれだけ理解できたのか、問われるのだろう。でも、3巻セットだから、2巻の途中くらいで亡くなるのだろうなあ。

人生最後の本、あなたなら、何を選ぶだろうか?

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常見 陽平
千葉商科大学国際教養学部専任講師

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