金融における究極の問い

2017年10月03日 11:30

金融は、普通は、企業に対する金融、即ちコーポレートファイナンスである。さて、資金を調達する企業には、資金使途、即ち目的、片仮名でいえばオブジェクトがある。現代の金融技法は、オブジェクトを独立させて金融の対象にするところへまで進化している。これがオブジェクトファイナンスだ。オブジェクトファイナンスの利点の一つは、企業統治改革である。

もしも、極めて有能な企業財務責任者(CFO)がいて、コーポレートとして調達した資金を、各事業部の各活動に対して、最適な資本費用で最適な金額を配賦することができれば、財務的側面における最適な企業統治が実現するであろう。しかし、そのようなことは、人間社会において、人間のなす行為としては、特定事業を営む小企業でのみ可能なことであって、通常の企業においては、物理能力的に、また組織工学的に、不可能である。

それに対して、コーポレートでの調達を、各事業部の各活動におけるオブジェクトファイナンスに切り替えたら、各オブジェクトファイナンスは単純な構造をもつので、その最適性を実現することは困難ではなく、結果的に、コーポレート全体の資金調達の最適性も実現しやすくなるはずである。

また、オブジェクトファイナンスを徹底的に推進すれば、どうしてもコーポレートに残らなければならない最低限の資源、まさに企業を支える競争力の源になるものが明確になる。例えば、空運業においては、航空機の性能は所与であり、そこに企業競争力が存しないことは明瞭だから、航空機の所有を廃してオブジェクトファイナンスに切り替えたのだ。ならば、航空機なきあと、空運会社に残された資源にこそ競争力の源の存することが明らかになるはずである。

しかしながら、ここには難問もある。第一に、危険は分散して管理すべきか、分離特定して管理すべきか、という問題である。コーポレートファイナンスでは、危険はコーポレート全体に分散されているが、オブジェクトファイナンスにおいては、特定のオブジェクトに分離されている。さて、どちらが適切に危険を管理できるか、これは簡単には決し得ないことであって、要は、管理すべき危険の性格に応じて、選択するほかないことである。

例えば、電気事業を例にとれば、電源ごとの危険に対して金融をつけるほうがいいのか、全ての電源を合算した電源構成の総体に金融をつけるのがいいのか、そもそも、発電を分離して金融をつけることがいいのか、電気事業の全体に金融をつけるのがいいのか。これらは、簡単には決められない難解な問題なのである。

第二の難問は、金融とは、事業の固有の危険について事業経営者に管理を一任してこそ、なりたつものではないのかという論点である。そうならば、金融の原則はコーポレートファイナンスにならざるを得ない。そうではなく、事業にかかわる危険も金融が直接に負担すべきならば、オブジェクトファイナンスの余地が大きくなる。

オブジェクトファイナンスを突き詰めると、コーポレートとは何かという究極の問い、また金融とは何かという別の究極の問いに行き着かざるを得ない。だからこそ、オブジェクトファイナンスを突き詰めなければならないのだ。

 

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
HC公式ウェブサイト:fromHC
twitter:nmorimoto_HC
facebook:森本紀行

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