バロンズ:税制改革で、3%成長を達成できるのか

2017年10月02日 10:00

バロンズ誌、今週はカバーに太陽光パネルを取り上げる。米国での再生可能エネルギー・ブームを牽引したのは安価な対陽光パネルだった。足元で太陽光発電は全米の発電量の1%に過ぎないが、急速に普及が進み2010年から2017年半ばまでに発電能力は2.3ギがワットから47.1ギガワットへ拡大、910万世帯を支えられる程に成長した。米政府の補助金が対陽光パネルの値段を引き下げた事情もあり、2015年初めから40%も下落している。しかし米国の国際貿易委員会(ITC)は9月22日、国内の太陽光パネル製造業者の要請を受け貿易保護措置に支持を表明。海外の競争相手に高関税を課す可能性が出てきた。米国の太陽光パネル業界は保護主義的な政策が強まるなかで成長できるのか、詳細は本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週は税制改革を掲げる。抄訳は、以下の通り。

ウォールストリート、税制改革出とらぬ狸の皮算用—Wall Street Counting Its Tax-Cut Chickens Early.

ウォールストリートでは9月25日週に約30年ぶりの税制改革を祝うかのように、大型株だけで中小型株の株式指数が過去最高値を更新した。しかし、喜ぶのは時期尚早だろう。確かに今回の税制改革で、1)所得税は7区分(10%〜39.6%)から3区分(12%、25%、35%)へ簡素化、2)法人税率は35%から20%へ引き下げ、3)パススルー事業体(SPC・TMK(特定目的会社)やLLP(有限責任事業組合)などの企業は法人税ではなく出資者の配当利益が課税される)の税率を25%へ引き下げ——などを提示した。しかしNFLで選手が国歌斉唱時の態度をめぐってトランプ米大統領と対立なかでは、どれほど注目されたか疑問である。

そうはいっても、法人税の引き下げに楽観的な観測が浮上していることも事実。RBCキャピタル・マーケッツはS&P500構成企業の実効税率平均を27%と踏まえた上で、1株利益を10.50ドル押し上げると見込む(ブルームバーグが集計する2018年の1株利益予想平均は145ドル)。つまり株価収益率(PER)が19倍なら、S&P500が足元から200ポイント、8%上昇することになる。

S&P500、8四半期連続で上昇。

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(出所:Stockcharts)

市場では、レパトリ減税も意識されていることだろう。リンゼー・グループのピーター・ブックバール氏は、アップルをはじめマイクロソフト、オラクル、シスコ・システムズのテクノロジー大手4社に注目。これら4社が海外に留保する資金は過去3年間で1,680億ドル増加した一方で、株主還元策のために社債発行で資金を調達してきた金額は1,740億ドルに及ぶと指摘する。つまり、レパトリ減税が実施されたとしてその効果が雇用創出や設備投資に割り当てられるか定かではない。

個人の連邦課税所得から州税と地方税の控除廃止が盛り込まれたが、共和党議員に対し既に州知事や市長がロビー活動を通じ反対を表明している。所得税率が高いカリフォルニア州やニューヨーク州だけでなく、所得税を徴収せずともテキサス州から控除廃止に異議を唱える。

財政刺激効果を考慮し、米連邦公開市場委員会(FOMC)が行動に出る可能性も見逃せない。報道によると、ホワイトハウスは2018年2月3日に任期切れを迎えるイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の後任候補との面接に着手し、コーン国家経済会議(NEC)議長をはじめウォーシュ元FRB理事、パウエルFRB理事などの名前が挙がっているが、米10年債利回りは既にFedの引き締め策をにらみ上昇し始めている。税制改革の進展次第では米株強気派の勢いを削ぐこともあり得よう。


さすが、米株が過去最高値を更新しようとも執筆者のランダル・フォーサイス氏は米株に慎重な姿勢は健在です。個人的には、2004年にレパトリ減税で3,620億ドルの資金が米国内に還流したものの、2005〜06年に某製薬会社で1万人規模、とあるテクノロジー企業で1.4万人規模のリストラがあった事実が気掛かり。設備投資の規模は拡大したものの、成長率は2004年の3.8%増を経て、2005年には3.3%増、2006年に2.7%増へ鈍化した後に金融危機を迎えたのはご案内の通りです。減税策を示すばかりで、共和党タカ派があっさり支持するかというと疑問も残る。4〜6月期GDPこそ3%成長を達成したものの、減税で本当に3%成長を実現し歳入を押し上げるかは不透明です。債務上限引き上げと暫定予算の交渉では民主党を抱き込んで合意に至ったトランプ政権ですが、税制改革でもミラクルを起こせるのか、お手並み拝見です。

(カバー写真:Mark Stephenson/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年10月1日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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