10年目迎えた「16歳選挙権」の検証

2017年10月06日 11:30

オーストリアで2007年、公職選挙法が改正され、16歳から選挙権が付与されるようになって今年で10年目を迎えた。今月15日の国民議会(下院、定数183)選挙は改正法に基づいて実施される2回目の国政選挙だ。16歳から選挙権が与えられるのは28カ国からなる欧州連合(EU)の中では最年少。

▲ウィーン大学が今年8月末にまとめた「16歳から20歳までの有権者意識調査報告書パート1」=2017年10月5日、撮影

▲ウィーン大学が今年8月末にまとめた「16歳から20歳までの有権者意識調査報告書パート1」=2017年10月5日、撮影

一方、日本では衆院選が10日に公示され、22日の投開日を目指し選挙戦がいよいよスタートする。日本では昨年、公職選挙法改正に基づき、選挙権が20歳から18歳に引き下げられて初の国政レベルの参院選が実施されたが、衆院選では今回が初めて。選挙年齢の引き下げが投票全般にどのような影響を与えるか、注目される。

アルプスの小国オーストリアで普通選挙権は1907年に男性を対象に実施され、1918年になって女性に拡大された。そして2007年6月、選挙権の年齢が18歳から16歳に、被選挙権は19歳から18歳にそれぞれ引き下げられた(例外は連邦大統領の被選挙権は35歳以上)。今年は、普通選挙法実施110年、「16歳選挙権」導入から10年目という歴史的節目に当たる。

ウィ―ン大学が今年8月末、連邦議会の要請を受けて「16歳から20歳の有権者の動向」を調査した報告書(パート1)をまとめた。それによると、「16歳選挙権」導入は「青少年の政治への関心を引き上げた」と指摘している。

例えば、2013年の調査(16歳から20歳までの309人を対象)では、「政治に関心があるか」という質問について、「非常にある」と「かなりある」を合わせると25%だったが、2017年の調査では60%に急増している。過去、4年間で政治への関心が急速に高まってきたことが分かる。

10年前、オーストリアでは社会民主党と国民党の大連立政権ばかりか、野党からも「16歳の選挙権」に異議を唱える声は余り聞かれなかった。

当地の教育システムからみて、小学校を卒業して4年間の中等学校に通った後、14歳で仕事につくケースがある。そして社会では、仕事に従事すれば14歳でも一人前と見なされる。進学した場合、16歳はギムナジウムの学生だ。
大多数の青少年が高等学校から大学に進学する日本からみた場合、16歳はまだ「青い」といわれるが、オーストリアでは仕事を始めれば既に大人と見なされるので「16歳選挙権」といっても余り違和感がない。

当方は当時、「『16歳選挙権』を問う」(2007年5月18日参考)というコラムを書いた。16歳といえば、体力だけではない。精神や心の発育期に当たる。同時に、外部の影響を成人以上に敏感に受ける年齢だ。その上で「16歳で政党の政治姿勢を判断し、候補者の人格と信条を正しく判断できるのか。大人の有権者ですらできない課題をどうして社会経験の少ない16歳の有権者に託すのか。学校内で政治イデオロギー論争や政治活動が過熱化することも予想される。政治に関心を持つことは大切だが、ギムナジウム時代は基礎学習の修得に専念すべき時ではないか」と述べた。この見解は10年後の今も変わらない。

ウィーン大がまとめた16歳から20歳の意識調査結果を見る限り、当方の懸念は杞憂だったのかもしれない。ちなみに、全有権者で16歳から18歳の有権者が占める割合は全体の3%以下。一方、80歳以上の有権者数はその倍以上という。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年10月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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