中国の政治を理解するための視点②

2017年10月07日 06:00

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新華社通信より引用:編集部

先日、新華社が習近平政権の反腐敗キャンペーンを総括する記事を配信していて、その中に「強い歴史的責任感(強烈的歴史責任感)」と「深い使命感、憂患の思い(深沉的使命憂患感)」と書かれていた。習近平政権発足からの2年をウオッチして書いた拙著『習近平の政治思想 「紅」と「黄」の正統』(勉誠出版)で、ちょうど同じことを指摘した。

紅二代の人物から感じられるのは、革命家族のエリート意識に支えられた、国に対する強い責任感とその裏返しとして国が傾くことへの強い危機感である……習近平も総書記選出直後、初めての内外記者会見で民族、人民、党に対する「三つの責任」を表明する一方、腐敗の深刻化には「国も党も滅びる」と警鐘を鳴らした。(P19~20)

習近平は二〇一二年一一月一七日の第一回政治局集団学習で、「腐敗に反対し、廉潔な政治を行い、党の健康な体質を保持することは、党が一貫して堅持している明確な政治的立場である」と前置きした上で、「近年、ある国々では長期間に蓄積された矛盾によって民の不満があふれ、社会が混乱し、政権が崩壊しているが、その中で汚職腐敗が非常に大きな原因の一つになっている。数多くの事実が我々に告げているのは、腐敗問題が深刻化すれば、最後は必ず国も党も滅びる。我々は警戒しなければならない」と強い危機感を表明した。そこには、習近平が訴える「党が一貫して堅持している廉潔な政治建設」を担う紅二代の使命感を見て取ることができる。(P42)

習近平は紅二代と呼ばれる。父親の習仲勲は毛沢東に従い、副首相までを務めた。「紅」は革命、血を連想させる。親たちは、抗日戦争から国交内戦、建国まで苦難の記憶を共有する血の結束を持つ。その二代目もまた、その血統を継承する。

二代目たちは、政治思想の差異や人間関係の不和はあっても、濃淡の違いこそあれ「親の築いた財産を失うわけにはゆかない」という骨の髄まで染み込んだDNAを背負っている。それが他の党幹部には持ち得ない責任感と使命感である。「親の築いた財産」とは共産党が打ち立てた中華人民共和国であり、その国を率いて世界第二位の経済大国に育て上げた一党独裁体制にほかならない。

習近平政権の特徴は、血統として歴史的正統性を担う「紅二代」から生まれた点にある。中国では最高の権威を持つ血統を権力のバックに持ち、それが強力な権力基盤となっている。習近平政権をみる場合、この点が最も重要だ。わずか1期5年で、胡錦濤時代には使われなかった党中央の「中核(核心)」の呼称を取り戻した。その目を見張る急速な権力掌握は、紅二代の広範な後ろ盾がなければ実現不可能だ。

最高指導部である党政治局常務委員7人のうち、習近平のほか党内序列4位の兪正声・人民政治協商会議主席は父親が元第一機械工業相、母親が元北京市副市長、序列6位の王岐山・党中央規律検査委員会書記はエリート技術者の家庭に育ち、義父は姚依林元副首相だ。いずれも紅二代人脈の中にある。兪正声は民族問題や香港・台湾問題、王岐山は腐敗対策で政権の屋台骨を支える重責を担っている。

北京に駐在中、何人かの紅二代と懇談をした。毛沢東時代の大衆路線が個人崇拝を生み、大躍進や文化大革命の悲惨を招いたことには遠慮なく批判の言葉が出る。ほぼ例外なく、親ともども家族でこの政治闘争に巻き込まれ、辛酸をなめている。政治的迫害によって親を失った紅二代も多い。だが、毛沢東という人物を否定はしない。そんなことをすれば、親たちの歩んできた道自体を否定することになるからだ。それが共産党の選択した道なのである。彼らの言葉の端々には国を憂うる気持ちがあふれ、どんな職業や地位にあろうと、責任感と使命感が体臭から感じられた。

汕頭大学長江新聞・伝播学院(ジャーナリズム・コミュニケーション学部)に来て、学部長に当たる范東昇院長と知り合ったが、彼もまた紅二代だった。父親は中国メディア界の開拓者、范長江(第3代『人民日報』社長)だ。范院長の体からも、同じ匂いを感じ取った。

(続)


編集部より:この記事は、汕頭大学新聞学院教授・加藤隆則氏(元読売新聞中国総局長)のブログ「独立記者の挑戦 中国でメディアを語る」2017年10月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、加藤氏のブログをご覧ください。

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加藤 隆則
汕頭大学新聞学院教授、元読売新聞中国総局長

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