内部留保を誤解する希望の党

2017年10月08日 16:00

大企業の内部留保への課税という荒唐無稽の公約を出した希望の党に疑問を呈する記事を掲載したところ、いくつかコメントをいただいた。「大きな内部留保を出す企業に課税して何が悪い。」「貯めこむばかりで投資しないなら課税してもよい。」の二つが代表的な意見であった。

内部留保とは企業の利益から納税額や配当・役員賞与金などを差し引いた残りである。単年度の内部留保に課税すれば納税額が増える。だから内部留保を出す企業に課税というのは法人税を増額するのに等しい。法人税増税というと刺激が強いので「大きな内部留保を出す企業に課税」といってごまかしているだけだ。

企業は内部留保を次の事業への投資資金として利用する。設備投資や研究開発投資がなければ企業は競争力を維持できないから、内部留保はその貴重な資金源である。事業の性格によって投資のタイミングは異なる。携帯電話事業者であればネットワークが世代交代する時期に設備投資が増える。リテールなら新規出店の規模に応じて投資は増減する。内部留保を次の事業にいつ投資するかは経営者の判断である。「貯めこむばかりで投資しない企業の内部留保に課税」というのは、企業経営の基本原則を否定するものだ。投資のタイミングを待っての内部留保の累積は株主総会で承認されているのだから。

高齢者はタンス預金を積み上げるばかりで消費に回さず、それで経済が停滞している。消費を促進するためタンス預金に課税するのがよい、と希望の党は言うだろうか。高齢者を企業に、タンス預金を累積した内部留保に置き換えれば希望の党の公約になる。これは正常な発想だろうか。

累積した内部留保を使わせるために通常取られる政策が設備投資減税であり、研究開発投資減税である。減税で政府の懐は当面痛むが、企業競争力が強化されて後年度に利益が出て納税額が増えるように期待する政策である。

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