徳川百合子は小早川秀秋を関白にしてはいけない

小池氏(都サイトより引用)石破氏(©アゴラ研究所)

小池百合子氏がみずからの総選挙出馬を否定し、過半数を取った場合の首班候補すらはっきりしていないなかで、自民党の石破茂氏や野田聖子氏を考えているのでないかという憶測が消えない。

小池氏は、「(自民党の石破茂元幹事長を担ぐ可能性について)考えていない」と否定しているし、前原氏も自民党議員の可能性を否定している。それに対して、石破氏は「希望の党が私を担ぐという話があり、びっくりしている。有権者の審判が下る前に選挙後のことを考えるのは有権者に失礼だ」としているが、逆にいえば選挙後もありえないとはいわず、色気を見せているともとれる。

しかし、私は石破氏が首班になることは、関ヶ原の戦いに例えれば、「徳川家康が小早川秀秋を関白にするようなもの」だと思う。裏切り者はしょせんは尊敬をかちえないのであって、誰もそんなものを受け入れない。小早川秀秋は、宇喜多秀家の旧領である備前と美作をもらったが、世間の非難の眼に絶えられず、自殺同然の死を遂げている。

首相の指名は、衆議院、参議院双方別々に記名投票を行い、過半数の票を得た議員がその院の指名者になり、そのような議員がいなければ、上位2人による決選投票でその院の指名者を決める。両院の指名者が一致してなければ両院協議会を開き、両院協議会で両院の意見が一致するか、もしくは出席協議委員の3分の2以上の多数を得た被指名者がでたらその人物を総理大臣にする。そうならなかった場合は衆議院の優越により衆議院の指名者が総理大臣になる。(辞退したらどうなるかという問題はある)

したがって、たとえば、自公も希望も過半数を取れなかったら、自公が推す候補と希望が推す候補が上位ふたりとなり決戦投票で決まると言うことだ。もちろん、維新や共産党や立憲民主がどちらにつくか、決選投票で棄権するということが分からないまま投票になるということもあるが、常識的には、各党のあいだで調整が行われ、特に維新の意向がかぎとなる可能性が強い。

そのときに、自民党では、過半数割れの責任をとって総裁選が両院議員総会で行われる可能性があるが、その場合は岸田氏が選ばれる可能性が最有力だろう。

もちろん、維新や希望との話し合いの中で、自民党の誰それなら推せるといわれて、それが総裁選ないし、首班指名に影響を与える可能性はある。

しかし、そのときに、小池氏から「石破さんでは」といわれたらどうなるか。それは、議会制民主主義の破壊だと思う。

日本のように議院内閣制をとっている制度の下では、総選挙は政党同士で総理候補を明確にして争われているし、選挙後も新たな政策課題について意見が分かれて分裂ということにならない限りは、行動を共にすることが選挙民との関係でも原則だろう。

そうであるとすれば、話し合いは政党同士でするべきだ。そのときに、政党が党首以外の議員を他党が挙げたときに同意できるとすれば、自党の勝利のために奮闘した議員だ。

それなら、石破氏がこれまでのところ、自公の勝利のために全力を尽くしているかといえば、まったくそうはいえない。都議会議員選挙のときも、自民党批判を繰り返して小池新党の勝利におおいに貢献したし、今回の総選挙でもそうだ。

まさに、西軍で裏切りが憂慮されていた小早川秀秋のようだ。それに対して、岸田氏も、麻生氏も、さらに小泉進次郎氏も安倍首相とは意見が違うだろうが、自公の勝利のために全力を尽くしているから、その意味においては、たとえば、小池氏から、安倍首相に対して首班指名で投票出来ないが、岸田氏や小泉氏ならといわれたら、自民党もまとまるかもしれない。

逆に言えば、石破氏は安倍首相の再選を断固支持するとして獅子奮迅の活躍をすれば、そこで、自公敗北のときに小池氏との良い関係がものをいうということではないか。石破氏は、いまからでも遅くないから、朝日新聞に安倍首相への批判をするのでなく、北朝鮮危機のなかで、いま、首相を変えてはならない、あるとすれば、総裁選挙のあとだといい、自公への支持が広がるために貢献したと誰からも評価されるよう努力すべきだ。

たとえ、石破氏が小池氏の誘いにのったとしても、参議院はどうするのか。関白・小早川秀秋に参議院で自公が協力するはずもないから、ねじれ国会で国政はマヒする。

また、野田聖子氏については、配偶者が元暴力団員だと週刊新潮に報じられている。配偶者が仕事に影響を与えないなら大臣としてただちに排除されるものでないが、総理としてはそう簡単に受け入れられるものではなかろう(よほどの社会的貢献をして尊敬されるようになっておれば別かもしれない。もし野田聖子氏が総理を狙うなら、配偶者にそういう方向を目指して努力してもらうべきだ)。