精神科医が解説!年をとると忘れっぽくなる理由とは?

画像右が樺沢医師。NHK『テストの花道 ニューベンゼミ』

「すべての『ミス』は脳をいじれば解決する」本書はこのようなコンセプトにより展開される。「物忘れ」「勘違い」「うっかり」、すべてのミスは、脳の習慣により導き出されている。だったら、脳を最適化すればパフォーマンスは向上する。もちろん、脳を最適化する手法は外科的処置ではなく精神科医の見解であることも興味深い。

今回、紹介するのは『絶対にミスをしない人の脳の習慣』。著者は、精神科医、作家の樺沢紫苑(以下、樺沢医師)。ネット媒体を駆使し、精神医学や心理学、脳科学の知識、情報をわかりやすく発信している。最近では、NHK『テストの花道 ニューベンゼミ』(キャプチャー画像参照)が話題になった。

ミスの原因は脳は劣化にあった?

――最近、「ど忘れ」や「人の名前が出てこない」という回数が、昔と比較して明らかに増えているという人はいないだろうか。こうした状態になると、もしや「認知症になったのでは?」と心配する人もいるが実際はどうなのだろうか。

「まったく心配はありません。ワーキングメモリのピークは、20~30歳。つまり、30代後半になると『人の名前が出てこない』『ど忘れ』が誰でも増えてきます。年をとると長時間の集中力維持が難しくなります。若い頃と比べて、体力も衰えますが、集中力を維持する力も衰えるのでミスを起こしやすくなるのです。」(樺沢医師)

「あるいは、認知症になると、『鍋を焦がす』とか『冷蔵庫にある商品を二重に買ってしまう』といった決定的なスを引き起こします。」(同)

――どうやら、決定的なミスで無い限り心配は不要のようだ。しかし、「脳の老化が、重大なミスの原因となる」ことは覚えておきたいものである。しかし、「脳の老化は防げない」ものだろうか。若々しい脳を維持する秘訣は無いのだろうか。

「『生涯を通じて脳細胞は減り続ける』『毎日10万個の脳細胞が減り続けて、脳細胞が増えることはない』という話を聞いたことがある人もいるでしょう。20年前はまことしやかに語られていたこの説が、現在では間違いであることがわかっていました。海馬の顆粒細胞は増殖することが発見されたのです。」(樺沢医師)

「MRIよる画像診断の技術進歩により、『脳の容積が増える』という現象も、観察できるようになりました。脳の機能は、年齢とともに衰えていきます。しかしそれは、『脳を使わない人の場合』です。脳をあまり使わないと、脳の働きはどんどん低下し、記憶力は衰えていきます。一般的な高齢者の脳をイメージしてください。」(同)

――そして、樺沢医師は次のようにつづける。

「高齢者の脳をMRIで見ると、萎縮していることが多いことがわかります。萎縮の程度を定量化すると、加齢とともに脳は毎年約1%ずつ萎縮していくとも言われます。しかし、年をとっても脳を使い続けている人は、ほとんど萎縮が見られません。脳を使い続ける人はいつまでも若々しい脳を維持することができるのです。」(樺沢医師)

――さらに、樺沢医師は、老化による記憶力の低下には個人差があり、低下する人と低下しない人がいることを主張する。つまり、成人以降は、脳は成長しない 老化によって機能が失われていくだけ、という考え方が否定されることになる。

脳の機能を高めるならシナプスを鍛える

――脳の機能は、神経細胞の数と比例するわけではない。神経同士のシナプス結合の数と比例する。神経は、神経同士でネットワークを構成し、その接合部を「シナプス」と言うそうだ。そして、このシナプスが脳に大きな影響を与える。

「1つの神経細胞は、約2000ものシナプス結合によって、他の神経細胞と結合しています。ものすごく緻密なネットワークです。このシナプス結合の数は、脳を鍛え続けることによって年齢に関係なく増やすことができます。中年になっても、シナプス結合の数を增やすことによって、『記憶力』を高めることも可能なのです。」(樺沢医師)

「一方で、何もしないと減っていきます。加齢とともに脳細胞は失われ、脳は老化し、記憶力の減退が進みます。脳を上手に使うことによって、シナプス結合の数を増やします。いつまでも脳をイキイキとした状態で活動させることができるのです。」(同)

――脳が「健康」で「絶好調」の状態で活動すればミスが無くなる。さらに、心と体に、絶好調のパフォーマンスを実現する。そんな素晴らしい「脳の習慣」を、今日から実行してみないか。本書は医学的な見地から、「脳」の機能についてわかりやすく解説している。多くのビジネスパーソンに参考になるだろう。

参考書籍
絶対にミスをしない人の脳の習慣』(SBクリエイティブ)

尾藤克之
コラムニスト

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