複業が過労死を促進させる? --- 武市 鐘平

2017年10月21日 11:30

政府が「働き方改革」の一環として本業以外に仕事をするいわゆる複業の推進を打ち出しています。
複業とは、文字通り複数の仕事を抱えることであり、副業しているとも兼業しているとも言えるでしょう。

働き方改革には3つの柱があり、

1、長時間労働の改善

2、非正規と正社員の格差の是正

3、労働人口不足の解消

が挙げられます。

労働人口は、総務省「労働力調査」によると2016年は6,648万人であり、みずほ総合研究所は、この労働人口が2065年には3,946万人に減少する見通しを出しています。

このような背景から政府は日本に複業が広まることを期待しているのでしょう。

複業のメリット

複業する人材が増えることで、企業側としては社外で広く情報を集め、それを社内に還元できたり、優秀な人材が社外に流出するのを防止できるメリットがあります。

一方、働く側にとっても、キャリアアップや自分の能力を発揮できる可能性を広げたり、急なリストラにも備えることができます。

しかし、複業で働く人口が少ない日本社会において、副業・兼業の実態はまだまだ知られていません。

複業は相性が全て

アルバイトの掛け持ちをしたことがある人であれば、複業のイメージはつきやすいのかもしれません。

平日はカフェで働いて、土日は居酒屋で働く。
計画的にシフトを組めば、プライベートを確保しつつ無理なく2つ以上の職場で働くことができます。

しかし、複業とはアルバイトの掛け持ちではなく、正規雇用の掛け持ちであると言えます。急なトラブルの対応や、仕事が単純に追いつかない時は予定していた勤務時間を越えて働く必要があります。

仮に、5時の退社予定で7時から別の仕事を入れていた場合、残業するとどちらかの仕事を捨てなくてはなりません。双方の仕事の勤務時間の融通が利かないのであれば、バッティングは避けて通れないでしょう。

そして、働いてからじゃないと、休日の取得や退勤時間の融通は分からないケースが多いので、いざ複業をしてみるとバッティングだらけで両立できなかったという結果になりかねません。

片方の仕事は持ち帰って仕事ができる、もう片方の仕事は周りの人に引き継いで勤務時間をコントロールできるなど、仕事と仕事の相性が複業を続けるための全てだと言えます。

キャリアアップが複業に歯止めをかける

パラレルキャリアという言葉も複業とともに使われる言葉ですが、掛け持ちしている双方の仕事の責任が増していくと、当然仕事のバッティング頻度が上がっていきます。

順調に昇格していっても、一方で課長をして、一方で部長職である場合などでは、最終責任が自分になることが多いですから、両立はより厳しくなっていきます。よく肩書がたくさんある人達は、名ばかり役職か、勤務時間の住み分けができているだけなので、同じようにキャリアアップしていくと複業が成立しなくなったというのは容易に想像ができるでしょう。

役職が上がり、責任が増していくと仕事はバッティングしまくることになります。

気がつくと労働時間が過労死ラインに

複業は当然、2つ以上の職場で働くので労働時間が長くなります。

過労死のラインは時間外労働で月80時間と言われています。単純に多くの企業では、1日8時間の週5日40時間労働となっています。
仮に複業を認める企業で、勤務時間が週30時間に免除されたとしても、2つの職場で週60時間の労働となれば、過労死ラインと並びます。

また、労働時間だけでなく、人間関係や仕事のプレッシャーも単純に2倍になることもあります。むしろ、同時に多数のタスクを抱えることになりますから、2倍以上の精神的負担があるかもしれません。

さらに、勤務時間の融通が効く仕事であるからこそ、持ち帰り残業が多くなったり、片付かない仕事を後回しにしてシワ寄せが後から来る環境を作りやすくなります。

複業人口も少ないことから、複業のつらさに共感してくれる仲間や相談できる人が周りにいないこともあるでしょう。
過労死は、長時間労働から来る肉体的精神的負担に加え、身近に理解者がいないことで発生します。

働き方改革が叫ばれている中で、企業と働き手にメリットをもたらすはずの複業が、長時間労働などの負担を増加させ、気がついたら過労死を促進させる、ことになっているかもしれません。

武市 鐘平
一般社団法人マーケティングマネジメントエジュケーション 代表理事

1988年生まれ。2012年大手企業人事部で勤務。採用、福利厚生、労務管理に従事する。
2015年青年会議所入会、2017年財務理事。2017年一般社団法人マーケティングマネジメントエジュケーションを設立し、代表理事。

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