バロンズ:ダウ、最高値更新の真の立役者とは?

2017年10月23日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーはネットでのビジネスを支配するテクノロジー株にスポットライトを当てる。フェイスブックやアマゾン、アルファベットなどテクノロジー株は前週の最高値更新に十分貢献した。おかげで、S&P500は年初来で16%上昇するなかで2%ポイント、過去3年間の上昇率44%のうち5%ポイントを占める。こうした3社がどこまで米株に寄与するかは、米欧の規制当局次第だ。例えばアルファベットの検索エンジン、グーグルは欧州におけるパソコンとモバイルのオペレーティング・システム(OS)のうち、90%を占めるため欧州委員会が精査に着手している。これに加えて米連邦取引委員会(FTC)からの調査も、こうした3社の解体を連想させるようになった。グーグル・ベンチャーズの元最高経営責任者(CEO)は、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)主催のテクノロジー・カンファレンスで「シリコン・バレーの夕陽が沈んでも驚かない」と発言したが、この3社は今後どうなるのか。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週は米株高を取り上げる。抄訳は以下の通り。

米株上昇、真の立役者とは?—What’s Really Driving This Stock Market Higher?

災難が起こった日に祝い事が起きるのは珍しいが、今の米株相場はまさにこれに当たる。ダウは2017年10月19日、508ドルも急落したブラック・マンデーの30周年記念を迎え、23,000ドル超えの最高値を更新。同週は456.91ドル(2%)上昇して取引を終えた。ちなみにS&P500は米大統領選直前の2016年11月7日からこれまで3%も下落することなく22.9%上昇し、90年代半ば以来の長期トレンドをたどる。

なぜダウが上昇するのか。大きな違いはその株価の算出法であり、S&P500その他の指数と違って時価総額のウェイトによって決定するのではなく、株価によって変動する。例えばボーイングは株価が高い銘柄であり、年初来で70%も上昇し10月20日には264.75ドルで終了、ダウを押し上げた。上昇率3位と4位のビザ、マクドナルドはそれぞれ年初来で38%高を遂げているが、10月20日のビザの株価が107.55ドルに対しマクドナルドは166.30ドルで、ダウの寄与度でみるとビザはマクドナルドの3分の2でしかない。

逆にゼネラル・エレクトリック(GE)は年初来で25%下落しているが、10月20日時点での株価が23.84ドルなだけにダウの押し下げ効果は軽微である。

ダウ、心理的節目超えのクロニクル
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(出所:CNBC

米株高に財政と金融、両面の政策から追い風が吹いてきたことが、足元の好調ぶりの主因と言えよう。米上院は19日夜遅く、10年間で財政赤字を1.5兆ドル拡大させる2018年度(2017年10月〜18年9月)予算決議案を可決した。これで民主党の支持を必要とせず、上院での単純過半数で年内が無理でも年明け早々に予算案を成立させる確率が高まった。

税制改革の内容についても、議論は柔軟に進んでいるように見える。ライアン下院議長は高所得者層向けに税区分を設け3区分から4区分とする案に言及(筆者中:共和党の提案は12%、25%、35%、4区分の場合でも現行の39.6%以下となる場合も)した。共和党が2018年の中間選挙で勝利するにあたって、医療保険制度改革(オバマケア)の代替案移行に失敗した後なだけに税制改革はどうしても纏めなければならない。そのためには、反対意見が多い州や地方税の税控除を維持する上で妥協案を見出す必要があるのだろう。

米株相場にとって、法人税引き下げは株高の柱である。RBCキャピタル・マーケッツのエコノミストは、S&P500構成銘柄の法人税・実効税率が27%のところ、法人税20%への引き下げは同構成銘柄の利益を1株当たり10.50ドル押し上げるという。株価収益率(PER)見通しが19倍であることを踏まえれば、S&P500を200ポイント上昇させる公算だ。10月20日までの相場でどこまでこの上昇が織り込まれたか、それこそが問題と言えよう。

トランプ米大統領による米連邦準備制度理事会(FRB)議長の指名が、山場を迎えている。足元ではジェローム・パウエルFRB理事が最右翼と目されているが、フォックス・ニュースのインタビューでトランプ米大統領自身はスタンフォード大学のジョン・テーラー教授も候補の一人と語った。その他、イエレンFRB議長に対しても「彼女が大変好きだ」と述べたという。

ホライゾン・インベストメンツのグレッグ・バリエール主席ストラテジストが「金融政策の面でイエレンFRB議長のクローン」と呼ぶパウエルFRB理事の議長就任は、ウォール街で熱望されている。パウエルFRB理事は金融政策について言及する機会は非常に少ないが、イエレンFRB議長の運営してきた金融政策を支持してきたも同然だ。ムニューシン米財務長官の支持も得ており、仮に指名された場合、共和党議会で承認は容易だろう。

イエレンFRB議長の任期満了を2018年2月3日に控え、世間はトランプ米大統領が自身でFRB議長を指名したいと考えている。イエレンFRB議長が民主党であることはネックであり、金融規制の継続を主張していることも共和党の意見と相反する。

テーラー元財務次官は、Fedの緩和政策に異論を唱えてきただけに保守派から支持されてきた。ただし、同氏は政策金利を成長率など経済指標の変数で測るテーラー・ルールの生みの親だ。同氏のFRB議長就任は、Fedの緩和寄りの政策で上昇をたどってきた米株には懸念材料となる。

その他の候補としてケビン・ウォーシュ元FRB理事、そしてゲーリー・コーン国家経済会議(NEC)議長が挙げられる。ウォーシュ元FRB理事の議長就任は難しいとされ、コーンNEC議長はバージニア州シャーロッツビル事件でのトランプ米大統領批判が仇となり指名への可能性が低下した。

ワシントンのリサーチ会社ビーコン・ポリシー・アドバイザーズは、パウエルFRB理事の議長就任、テーラー元財務官のFRB副議長就任、あるいはその逆が考えられると分析。両氏とも、どちらであっても指名を受諾する公算が大きいという。

トランプ米大統領が誰を指名しようとも、12月12〜13日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で25bpの利上げを行うのはほぼ確実で、市場は83.6%の確率を見込む。資産圧縮も、継続する見通しだ。

金融政策が大きく変化する時は、恐らく次の金融危機まで待たねばならないのではないか。ABのダグ・ピーブルス最高投資責任者(CIO)は、日銀や欧州中央銀行(ECB)など中央銀行が与えてきたプット・オプションは、次のFRB議長が終止符を打つ予想する。

過去の金融危機や波乱を振り返ると、1987年10月19日のブラック・マンデーはアラン・グリーンスパンFRB議長(当時)が就任してわずか2ヵ月後のことだった。その後を継いだベン・バーナンキFRB議長(当時)の場合、就任後2年でリーマン・ショックが直撃した。今回、新しいFRB議長の誕生で何が起こるのか、少なくとも米国株式市場は警戒しているように見えない。

——下馬評では9月頃に注目されたケビン・ウォーシュ元FRB理事は、すっかり存在感を失ってしまいましたね。ただ筆者は、義父がエスティ・ローダー創業主の次男で、共和党の巨額献金者でトランプ米大統領とはペンシルベニア大学から50年来の付き合いであるロン・ローダー氏なだけに、FRB理事として返り咲くかあるいはFRB副議長に指名するウルトラCの可能性も残っていると考えています。このローダー氏が世界ユダヤ人会議の議長で、中東政策についてトランプ米大統領に助言しているとの噂もあり、足元のイラン核合意への立場やユネスコ脱退の理由をみると、どうもこの方の影響が強いように見えます。義父という強いパイプを持つウォーシュ氏、地味に戦略政策フォーラムで唯一個人で名を連ねてましたよね。

(カバー写真:My Big Apple NY)

パウエルFRB理事の誕生は、変化を求めない金融市場には大歓迎されるでしょう。ロイター調査では回答したエコノミスト40名のうち半分が同氏が指名されると予想していました。これまで金融政策について目立った発言がないなかで、金融規制緩和支持派である点はポイントが高い。また、10月13日に就任した銀行規制担当のランダル・クオールズFRB副議長とカーライル・グループ時代が被っているという事実もあり、金融規制緩和と金融政策で連携プレーを見せる期待も膨らみます。

テーラー元財務官の場合、タカ派に振れるとの見方が根強いですよね。しかし、面談で自身を「低金利派」と呼び、何かにつけて米株高を喧伝するトランプ米大統領の評価を得た事を踏まえれば、必ずしもテーラー・ルールに基づいた政策運営を行うか定かであはりません。意外に柔軟な政策運営を進めてくるのではないでしょうか。

果たしてトランプ米大統領が誰を指名するのか、目が離せません。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年10月22日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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