鬼軍曹は必要?リーダーに必要なものはパッションだ!

2017年10月27日 06:00

写真は神田氏。「財界さっぽろ2017年1月号

アゴラでは、「出版道場」という出版ニーズに応えるための実践講座を年2回開催している。その影響もあり、著者や出版社から献本されることが非常に増えている。良著と思われるものを記事にしているが、今回は、『リーダーが壁にぶちあたったら読む本』(あさ出版)を紹介したい。著者は、神田和明(以下、神田氏)サントリー酒類執行役員。

「スコール! 」「スコール! 」「スコール! 」と、きらびやかな夜景を望む、お台場のパーティー会場に、乾杯の掛け声が高らかにひびきわたった。その乾杯の発声と同時に、渋谷で活躍するユニットバンドのパンチのきいた演奏が会場中に流れる。本書はこのような印象的なイントロダクションで開始されていく。

仕事は上司の背中を見て覚えろ

――まだ時代が20世紀の頃の話になる。当時はOJTが主流だった。研修などで教わるのではなく現場で仕事を覚えろという姿勢が主流だった。

「ある時、得意先から直属の上司へ直接、私に関する電話が入りました。その電話を置くやいなや、私はその上司に呼びつけられ長い時間、自分のいい加減な日頃の言動についてこっぴどく叱られました。当時の上司は、社内であろうが社外であろうが筋の通らないことには絶対に妥協しない人でした。」(神田氏)

「普段は優しかったのですが、いったん怒り出すと迫力があり、震えあがるほど怖かったのを覚えているます。しかし、『なぜ怒られたのか』『今後どのようにしなければならないのか』という具体的なアドバイスは、一切教えてもらえません。」(同)

――当時、管理職になる社員は、剛腕セールスだった者が、そのまま昇格するケースが多かった。そのような中には、いわゆる鬼軍曹と呼ばれた「つわもの」たちがたくさんいた。「売るまで帰ってくるな!」「簡単にあきらめるな!」と激が飛ぶ。いまなら、パワハラといわれても不思議ではない光景が繰りひろげられる。

「売るための具体的な指示はなく、あえて言うなら『気合』『根性』の2文字に集約されていたように思います。それでも、そのような鬼軍曹のリーダーシップが機能していたのは、『部下を想う深い愛情』があったからではないかと思います。」(神田氏)

「いったん仕事を離れ、酒場でプライベートにお酒を酌み交わす時になると、怖い上司から優しい人間に変わるからです。励ましの言葉を何度もかけてもらい、その気遣いには心を癒され、『また明日から頑張ろう』と元気づけられました。」(同)

近年では見かけなくなった鬼軍曹

――当時の上司と部下の関係は、強いトップダウンで、役職の権限を傘としたタテの強いリーダーシップがマネジメントを支えていた。しかし、いまは異なる。

「社内を見回してみても、昔あれだけどこにでもよく見かけた当時の鬼軍曹タイプのマネジャーはほとんど見ることがありません。上司が部下を叱りつけて、命令に従わせようとする光景も見られなくなっています。メンバーのモチベーションを高めながら人活用していくことが、求められるようになっているからです。」(神田氏)

「その反面、いつのまにか周りに気を使い過ぎるあまり、自分の考え方をうまく部下に伝えられない上司がいるのも事実でしょう。鬼軍曹を全面的に肯定するつもりはありません。しかし、リーダーは時代がいくら変わろうとも、常に自分の考えや主義主張をしっかりと部下に理解してもらうことが重要だと考えています。」(同)

――流通業界もここ数十年で大きく変化した。昭和の時代、SMやCVSには、酒類免許が許可されておらず、酒のDS店も存在しなかった。いまや、免許があらゆる小売業態に下りるようになっている。業態が大きく変わったのである。

「時代が変わり、モノの売り方や業態が変化しても、『お客様に、より高いサービスの価値を提供することで、喜びと感動を味わっていただく』といった商売の原則は変わっていません。しかし、求められるリーダーシップのスタイルは、その時代や社会背景、その業界の環境変化によって大きく変わってきています。」(神田氏)

「今では、リーダーは権限ではなく、役割として考えることが一般的になりました。チームのメンバーそれぞれが、それぞれの役割をきっちりと認識し、チーム全体をうまく機能させることがリーダーシップの主流となっています。」(同)

リーダーにはパッションが必要である

本書で神田氏が伝えたいであろうことを要約したい。リーダーとは、
(1)鬼軍曹のようにあるべきではないか
(2)部下に強い影響力を持つ存在であるべきではないか

この2点を示唆しているのである。いまは、時代が時代であるから、強烈なリーダーシップを推奨すると「ブラック」ではないかと揶揄する人が必ず出てくる。しかし、私も神田氏の考えを大いに推奨したいと考えている。

いまは周囲の目を気にするあまり、部下に迎合するリーダーが増えてしまったことも事実である。サントリーの企業風土に、「やってみなはれ」というものがある。この「やってみなはれ」精神を大切にする社風とは、失敗をマイナスと捉えず、挑戦を奨励し、何でも言い合える自由な風土がある。社員を守る企業文化があるからこそ挑戦が可能となる。

「やってみなはれ」を、「パッション(passion)」と考えるとわかりやすいだろう。「情熱」「激情」のことをあらわす。神田氏も、「自由で寛容な企業風土の下で、思い切り、楽しく仕事をさせてもらっている」と語る。神田氏は、執行役員の立場ではあるが、自らを一介のサラリーマンだと自負する。だからこそ、本書には見るべきものがある。

参考書籍
リーダーが壁にぶちあたったら読む本』(あさ出版)

尾藤克之
コラムニスト

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