AIが進化しても仕事はなくならない --- 武市 鐘平

2017年10月27日 06:00

AIの進化が止まらない。

2016年、進化を遂げた囲碁AI「AlphaGo(アルファ碁)」が、韓国のトップ棋士であるイ・セドルを下し、2017年には世界最強とされる囲碁棋士・柯潔(カ・ケツ)との三番勝負を制しました。

ところが、同じ2017年に「AlphaGo(アルファ碁)」を越える「AlphaGo Zero」が登場し、人間が数千年かけて作り上げてきた囲碁の定石も、3日間500万回という凄まじい自己対局により、これを越えてしまいました。

このようなAIに関する話題はたくさんありますが、AIが世間で注目を浴びたのは、数年前のオックスフォード大学が認定した、「あと10年で消える職業・なくなる職業」の公開が1つだと言えます。

この消える職業・なくなる職業は、日本中の話題となり、士業やバーテンダー、ホテルの受付係、福利厚生担当者など、実に様々な職業がなくなる仕事として紹介され、多くの人が今後の働き方を考えるきっかけとなりました。

しかし、多くの人が考えるほど、AIの台頭は職業自体をなくしてしまうほど猛威を振るわけではありません。確かにある一定の仕事量はAIに取って変わりますが、世間が心配していることになるには多くのハードルを越えなければなりません。

コミュニケーションの壁

人間は社会的動物であり、感情的な動物であると言えます。

日常生活を暮らす上で、人と人が関わり合うのは避けては通れないことであり、その関わり合いを良いと考えている方は一定層います。

日本には「思いやり」の精神が重要視される文化があり、不愛想な対応を嫌い、必要以上のおもてなしが歓迎されます。そのような文化背景において、必要最低限の機能に特化したAI対応を受け入れない層が一定数存在します。

法律、労働組合の壁

企業がAIを導入し、多くの労働量の処理を人間から機械に移行することは理論上では十分可能です。

しかし、企業は自由に従業員を解雇できるわけではありません。マニアックなところは専門家に任せますが、解雇するためには条件が必要で、簡単に言えば解雇するに足る客観的・合理的理由が必要です。

人員削減の必要性や手続きの相当性など専門的な判断が求められるでしょう。

また、労働組合がある企業であれば、AIによって自分の仕事領域が著しく変化することに抵抗をする人材に出くわすかもしれません。

人間には労働する権利があると、労働組合に駆け込み、AIの企業内進出を全力で止める人材も出てくるでしょう。

人材の能力不足であることと、権利主張は別なのです。つまり、法律や労働組合によって労働者はAIから守られているのです。

職業がなくなるのではなく、格差が広がる

上記のような壁を乗り越えてAIを導入する企業も出てきます。

主に発想が柔軟で革新的なことが得意なクリエイティブな企業です。そのような企業はAIの導入により付加価値業務と作業をうまく分担することができるでしょう。下手に権利主張をする人材もいなければ、目的以上におもてなしの心を重要視することもありません。

つまり、コミュニケーションの壁、法律や労働組合の壁によって同じ業務形態を維持する企業と、クリエイティブな企業とで仕事の進め方に格差が生じるわけです。

生活必需品とAIは違う

かつて「三種の神器」と呼ばれた白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫の家電3品目の普及や、カラーテレビ・クーラー・自動車の3Cの広がりを経験した世代は、AIの進化に同じものを感じているのかもしれません。

しかし、例えば、電子書籍が登場し、近い将来多くの本屋が町から消えると言われてきましたが、皆さんの町から消えた本屋はどれくらいあったでしょうか。

もちろん、出荷数などには影響してきたでしょうが、多くの著名人が言うほど紙の本は我々の生活からなくなっていません。

保守派と改革派が凌ぎを削るように、AIの普及も抵抗派と推進派がぶつかり合います。

生活必需品は日本中に普及してきましたが、AIは生活になくて困るわけではありません。

多様な考えと価値観が混在する今の日本社会においては、革新的な技術であるAIも、数多くの選択肢の中の1つに過ぎないと言えます。

武市 鐘平
一般社団法人マーケティングマネジメントエジュケーション 代表理事

1988年生まれ。2012年大手企業人事部で勤務。採用、福利厚生、労務管理に従事する。
2015年青年会議所入会、2017年財務理事。2017年一般社団法人マーケティングマネジメントエジュケーションを設立し、代表理事。

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