福祉職の弱点をサポート。児童相談所に常勤の弁護士を!

こんにちは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。

昨日は「子どもの人権」という観点から、児童相談所・一時保護所などに関連する事案に熱心に携わっている川村百合先生にお声がけいただきまして、東京弁護士会が主催の

「常勤弁護士のいる児童相談所と子どもの権利保障」

という報告会・勉強会に参加をして参りました。

何らかの理由で両親・保護者と暮らせない「要保護児童」を中心として、児童相談所や一時保護所が対応する児童たちに対しては、残念ながら今の行政システムは万全に対応できていない状態です。

特に一時保護所の状態が劣悪だったり、親権(親側の権利)が強すぎるあまり子どもの人権が侵害されている事例が多々あることは、これまで何度もブログにて取り上げてきた通りです。

我が国の場合、児童相談所のケースワーカーは、親と子どもの両方を同時に担当しますので、どうしても物言えぬ子ども側の立場が不利になることは否めません。

そして親権が強いという我が国独特の慣習により、他国であれば親権停止や喪失になっている案件でも、なかなか児童相談所が法的措置に踏み込めないという実態があります。

こうした自体を打開するために、国の支援を受けて各都道府県も、児童相談所に弁護士を配置するという施策に出ています。

しかしながら、まだまだ「常勤」で弁護士を配置しているところは少なく、東京都でも非常勤の弁護士が月2回のペースで出勤しているのが実情です…。

今回の報告会は、全国で初めて児童相談所への常勤弁護士配置を実施した福岡市の児童相談所と、同じく常勤弁護士を活用している名古屋市内の児童相談所(2箇所)に、実際に東京弁護士会の若手弁護士たちが調査のために一定期間滞在し、その効果をリポートしたものです。

やはり常勤で様々なケースに精通する弁護士がいる効果は大きく、親権停止や親権喪失、あるいは未成年後見などの事案が有為に増えているそうです。

この背景には、常勤弁護士が福祉職・ケースワーカーの「弱点」を補っていることがあります。

親権を制限するような強い法的措置には、その措置の根拠たる「事実(ファクト)」を集めなければなりません。ところが、これは福祉職の方々が苦手とする業務の一つのようで…。

例えば報告書に「母親が不安定」という「評価」「感想」しか書いていなければ、どれだけこうした報告を積み重ねても法的措置に結びつけることは難しくなります。

そこを常勤弁護士がいることで、客観的な「事実」を積み上げるようにアドバイスとチェックをし続け、徐々に児童相談所の福祉職の方々も「事実」「証拠」の積み重ねができるようになる

こうした変化・改善が、子どもの権利を守ることにつながっていくようです。

また、児童相談所に併設されることが多い、一時保護所の待遇改善にも常勤弁護士の存在が効果的とのこと。

非常勤ですと、なかなか一時保護所の実態まで把握することは難しいですが、常勤ともなるとかなりの部分が見えてくるもの。

実際に名古屋では、「懲罰的個室」の使用基準が明確でなかったものを整理したり、子供同士の会話を必要以上に制限していた実態を改善するなど、常勤弁護士からの提案による変化が生じたそうです。

以上は内容のごく一部となりまして、その他にも常勤弁護士が配置されたことで変わったこと・改善した事例が数多く報告され、大変興味深く勉強させていただきました。

今回、このような説得力のある調査が東京弁護士会によって行われたのは、非常に意義深いことです。

現在は非常勤弁護士が中心となっている東京都内の児童相談所についても、順次常勤の弁護士が配置されるよう政策提言をし、また今後児童相談所が移管されるであろう、基礎自治体にもしっかりと働きかけていきたいと思います。

川村百合先生、調査に出向かれた若手弁護士の皆さま、本当にお疲れ様でした。そして、ありがとうございました。

それでは、また明日。


編集部より:この記事は東京都議会議員、おときた駿氏のブログ2017年10月27日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおときた駿ブログをご覧ください。