バロンズ:FRB正副議長は、パウエル氏とテイラー氏か

2017年10月29日 23:00

バロンズ誌、今週のアップ・アンド・ダウン・ウォールストリートは、ヴィト・ラカネリ氏が税制改革の影響について執筆した。足元の米株高は税制改革への期待感ではなく、1)世界景気の改善、2)業績拡大、3)米国内での規制緩和——が礎になったという。従って、仮に税制改革が成立しなかったとしても株価の下落は5%程度と予想。2016年の米大統領戦後に幕開けしたラリーを踏まえれば、限定的との見方を示す。一方で、レパトリ減税が導入された場合は、ゴールドマン・サックスの推計を元に2018年には2,500億ドル相当が米国内に還流すると見込む。詳細は、本誌をご覧下さい。

今週のカバーは次期米連邦準備制度理事会(FRB)議長にスポットライトを当てる。名物コラム”アップ・アンド・ダウン・ウォールストリート”の執筆者、ランダル・フォーサイス氏が書き下ろした内容の抄訳は、以下の通り。

次期FRB議長—Our Next Fed Chief.

「In God We Trust(我々は神を信じる)」とは、ドル紙幣の裏側に明記されている言葉だ。前面にはFRBの文字が刻まれ、信用を付与する機関として位置づけられている。そのFRBを率いる議長を指名するのは大統領で、トランプ氏は重要な決定を下す義務を負う。候補者は3人に絞られ、2018年2月に任期満了を迎えるイエレンFRB議長自身(筆者注:ポリティコはイエレン氏が候補から外れたと報道)のほかパウエルFRB理事、スタンフォード大学のテイラー教授(上院議員で最も支持を集めたとの報道あり)が挙げられる。

イエレン氏は民主党員として登録するが、党派が違うという理由で再指名されなかった例は少ない。カーター大統領に指名されたボルカーFRB議長は、レーガン大統領就任後に2期目を迎えた。レーガン大統領に指名されたグリーンスパンFRB議長は、クリントン大統領によって3期目が更新された。バーナンキFRB議長はブッシュ政権(子)時代に着任し、オバマ大統領が再任を決定したものである。トランプ氏はどうか。イエレン氏に批判的だったが、過去最高値を更新し続ける米株高にご満悦の様子。とはいえ、米株高だけではイエレン氏を再任する理由として十分ではないだろう。

トランプ大統領、まもなく大きな決断を下すと述べFRB議長の指名が近いと示唆。
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(出所:realdonaldtrump/Instagram)

パウエルFRB理事は共和党に属し、ムニューシン財務長官の支持を得て次期FRB議長の最右翼と言える。イエレン氏と一線を画し、金融規制緩和を支持する一人だ(筆者注:クオールズFRB副議長と同じカーライル・グループ出身)。テイラー教授はブッシュ政権(子)1期目の元財務官で、政策金利を経済ファンダメンタルズから測るテイラー・ルールの生みの親だ。テイラー・ルールに基づけば、FF金利誘導目標は1.0〜1.25%を約2%上回る

そのテイラー・ルールに従えば、アトランタ地区連銀に試算によるとFedの利上げは2015年12月ではなく2010年に開始すべきだった。グリーンスパンFRB議長時代の2004年の利上げサイクルでも同じことが言えるが、同時に終了時期も前倒しされる。またテイラー・ルールに従えば住宅ローン金利の上昇やメキシコ危機を招いた1994年の金利急伸を阻止できたといい、ITバブル崩壊前の利上げ幅も抑制できたという。

とはいえ、テイラー氏がFRB議長に就任してもテイラー・ルールを額面通り導入する可能性は低い。ボストン地区連銀主催のシンポジウムで、テイラー氏は「ルールが中央銀行の手を縛るより、金融政策の決断を助けるものとみなす」と発言していた。ドイツ銀行は、テイラー・ルールを採用せずともテイラー氏がFRB議長に着任すれば金融政策の正常化がより積極的になると予想する。

R・J・オブライエン・アンド・アソシエーツのマネージング・ディレクター、ジョン・ブレイディ氏も、テイラーFRB議長の誕生で、緩和策からの脱却が迅速に進むと見込み、それは悪いことではないという。ユーロダラー先物では2018年に年2回の利上げが織り込まれるが、1.5〜1.75%ヘ引き上げられるに過ぎない。9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)時点のドット・プロットの2.1%を大きく下回る。しかしテイラー氏がFRB議長になれば正常化が足元より早まり、長期金利の上昇を促すことで年金ファンドのリターンを高める見通しだ。低金利環境下、投資家はオプションの売り戦略でプレミアムを得てきたが、そのおかげでボラティリティが低下し、利回りも抑えてきた。ブレイディ氏の見立てでは、仮に米10年債利回りが足元の2.42%から2.75%へ上昇するならば、米株市場に打撃を与えることなく米国債市場の正常化を招くと考えられ、テイラーFRB議長の誕生は恐れるに足りないとという。

FRB議長はこれまで、米株相場に反応してきた。米株の上昇局面ではグリーンスパンFRB議長(当時)による「根拠なき熱狂(irrational exurbance)」が余りにも有名だ。2014年には、イエレンFRB議長がバイオテクノロジー関連株に対し「大いに割高」と発言した。反対に下落局面では、助け船を出してきた。例えばグリーンスパンFRB議長はダウが508ドルも急落した1987年のブラック・マンデー当時、LTCM危機が発生し1998年、ITバブル崩壊直前の2001年に利下げで対応した。当時グリーンスパン・プットと呼ばれたが、その後もFRB議長も金融政策で米株市場を支援してきたためバーナンキ・プット、イエレン・プットとの言葉が引き継がれた。

新体制のFedでは、こうした積極的な支援を行わない可能性がある。また新FRB議長がイエレン氏、バーナンキ氏時代のようなコンセンサスを重視する政策運営から袂を分かつと考えられる。そうなれば、イングランド銀行や日銀のように、政策決定で反対の声が上がりやすくなるだろう。

市場ではパウエル氏がFRB議長に、テイラー氏がFRB副議長に就任するとの見方が強まっている。新たなFRB体制への真のテストは、金融市場と米国経済に波乱が訪れた時だ。イエレンFRB議長は講演にて、ゼロ金利政策や量的緩和策が有効と発言した。果たして、パウエル=テイラー体制は同じような行動に出るのだろうか?もしそうした政策を講じないのであれば、どうなるのか?それこそが、足元の落ち着いた市場を直撃する不確実性に違いない。


バロンズ誌ではパウエルFRB議長、テイラーFRB副議長の新体制が発足すると見込んでいるようです。そうなれば、民主党のブレイナードFRB理事が退任する可能性が強まります。正副議長を除くFRB理事5人全員がいなくなってしまい、トランプ氏が全員指名できるという極めて異例なケースとなるわけです。こうしてみると、トランプ氏は本当に強運の持ち主ですよね。逆に言えば、新体制が新たな危機を招けば政権の失策とみなされる。危険な賭けに、トランプ氏は勝利できるのでしょうか?

(カバー写真:Federalreserve/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年10月29日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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