コリンズ英語辞典が選ぶ「今年の言葉」は、アノ人でお馴染みのこれ

安田 佐和子

第45代大統領に就任したトランプ米大統領は、ツイッター砲で世界を賑わせてくれました。

トランプ米大統領の歯に衣着せぬ言葉が大いに物議を醸すと同時に、キャッチーで分かりやすく今ではすっかり定着した感がありますよね。おかげで英国のハーパーコリンズ社が発行するコリンズ英語辞典が発表した「今年の流行語」に、トランプ米大統領が発した言葉が選出されています。

その言葉こそ、「偽ニュース(fake news)」。

この言葉自体は2015年、トランプ氏が米大統領選に名乗りを上げた頃から頻繁に登場し、コリンズが調査した45億件もの文例データで2017年の使用回数は前年比365%も急増しました。トランプ米大統領自身のツイッターで、ひっきりなしに目にしますよね。もともとはジョン・スチュワートの”ザ・デイリー・ショー”やクリス・モリスの”ザ・デイ・トゥデイ”などコメディアンによるトーク・ショーで誕生したといいます。

トランプ米大統領のお気に入りの言葉だったり?
fakenews
(出所:Twitter

続いて、「今年の言葉」に挙がったのは「エコーチェンバー(echo chamber)」。もともとは閉鎖空間で音が響くよう設計された録音室を意味するワードでしたが、今ではソーシャルネットワークなどごく限られた空間で同調意見が形成される状態を意味します。確かに、日本で言うと政治的思想が近い一部メディアや2ちゃんねるやでよく見られる現象でしょうか。

社会現象に関する言葉であれば、反ファシストを意味する「antifa(anti fascistの略語)」も選ばれました。8月に米国は白人至上主義者VS反対派の衝突するバージニア州シャーロッツビル事件が発生し、米国を中心に衝撃を与えたものです。トランプ米大統領は、代替の保護主義すなわち白人至上主義派のオルト・ライトの対義語として「オルト・レフト(alt-left)」という言葉で双方に責任があると発言し、支持率を一段と低下させたものです。

ギグ・エコノミー(gig economy)」も、「今年の言葉」としてピックアップされました。定職を持つ人々が減少し、パートタイムの仕事を複数掛け持ちせざるを得ない経済を意味します。合わせて、「ユニコーン(unicorn)」も「今年の言葉」の称号を獲得。非上場ながら、評価額が10億ドル以上のベンチャー企業の総称でウバーやエアビーアンドビーなどを指しますよね。皮肉なことに、ギグ・エコノミーを支える人々にパートタイムの職を与える存在でもあります。最近、米国高級百貨店大手ノードストロームの店舗を買収したオフィスシェア大手ウィワークも、ユニコーンの代表格です。

その他、日本でも大流行のインスタグラムの略語である「インスタ(Insta)」、自身の性別について男女の区別にとらわれず、流動的な認識を持つ人々あるいは思考を示す「ジェンダー・フルイド(gende fluid)」なども「今年の言葉」に輝きました。スーパーモデルのカーラ・デルビーニュなども、その一人と自認していますね。「セクシュアル・フルイディティ(sexual fluidity)」と表現することもあります。

これからのシーズン、日本ではバブル時代からみられる現象を的確に捉えた「今年の言葉」としては「カフィング・シーズン(cuffing season)」が挙げられます。秋から冬にかけ、刹那的な関係よりもっと親密で安定したパートナーシップを求めたくなる時期を意味するんですよ。cuffといえば「折り返す」の他に、「手錠をかける」という意味があり、そこから転じたと考えられます。日本だけでなく、アメリカなど先進国で未婚者が増加中で自由な恋愛関係が広がっている現代だからこそ、誕生したのでしょうね。「偽ニュース」やら「ギグ・エコノミー」といい、何だか世知辛い言葉が多いような気がするのは筆者だけでしょうか?

(カバー写真:Ted Eytan/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年11月3日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。