【映画評】氷菓

2017年11月06日 06:00
氷菓 (角川文庫)

神山高校に入学した折木奉太郎は“やらなくてもいいことはやらない。やらなければいけないことなら手短に”をモットーにしている高校一年生。姉の命令で廃部寸前の古典部に入部し、そこで好奇心旺盛な少女・千反田えると出会う。奉太郎がその明晰な頭脳と分析力で校内で起こる不思議な出来事を次々に解明してみせると、奉太郎の推理力を見込んだえるは、10年前に失踪した叔父がえるに残した言葉を思い出させてほしいという風変わりな依頼をする。

中学時代からの同級生の里志と摩耶花も巻き込みながら、謎解きに挑む奉太郎だったが、そこには33年前に神山高校で起きたある事件と古典部文集「氷菓」に込められた謎があった…。

省エネ主義の男子高校生が好奇心旺盛な女子高生からの依頼で33年前に起こった事件の謎解きに挑む学園ミステリー「氷菓」。原作は米澤穂信による人気ミステリー小説だ。主人公・奉太郎は、何事にも冷めた態度で深入りを避け、灰色の学園生活を望む、高校生らしからぬ少年だ。一方、同じ古典部のえるは「わたし、気になります!」となると誰にも止められない、好奇心旺盛な少女。熱いえるが依頼人、クールな奉太郎が探偵の役を担う。えるが、自分が伯父から何を聞いたかを思い出させてほしいと赤の他人の奉太郎に頼むというのは、かなり奇妙な話だが、記憶も吹き飛ぶほどに強烈な出来事があったということだ。

33年前に神山高校で起こった事件が大きな鍵となるが、ポイントとなるのはそれが学生運動が盛んな熱い政治の季節だったということ。時代の狂騒は、文化祭を巡って、苦く悲しい挫折を生んだ。集団の中で個が抹殺される悲劇が、文集「氷菓」の中に封じ込められたまま、現代を生きる奉太郎らに届くプロセスは、そのまま歴史の検証となる。小さなヒントから、とんとん拍子に謎を解く展開はかなりご都合主義なのだが、真実へと導く案内人役に、決して熱くならない奉太郎という老成した少年は適役だ。

ただ現代パートは、2000年という設定。携帯電話やインターネットは存在しているはずなのに、登場人物たちはあくまでもアナログの推理に終始する。そのためか時代設定がつかみにくく、てっきり現代パートも昭和の時代かと勘違いしてしまいそうだった。良くも悪くもノスタルジックな、謎解きエンタテインメントである。
【55点】
(原題「氷菓」)
(日本/安里麻里監督/山崎賢人、広瀬アリス、本郷奏多、他)
(ほろ苦度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年11月5日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Twitterから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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