結局、トランプのアメリカとは何なのか?

2017年11月10日 16:30

来日時には安倍首相とゴルフも堪能したトランプ大統領(首相官邸サイト:編集部)

アメリカのトランプ大統領が来日した。僕は、このドナルド・トランプという人間に対して非常に興味を持っている。いや、もっといえば、彼を大統領に選んだ、アメリカという国に興味を持っているのだ。

最近、在米でジャーナリストの高濱賛(たかはま・たとう)さんが書いた、『結局、トランプのアメリカとは何なのか』という本を読んだ。あれほどメディアの非難を受け、とんでもない逸話ばかり聞くのに、なぜトランプ大統領が失脚しないのか――。この本は、ずっと持ち続けていたこの疑問に、まさに答えている。

まず、高濱さんは、「トランプ氏は、当初、貧富の格差や大量移民流入に対する、一部、白人中間労働者層の怒りや不満を煽ることで、反体制一本槍の選挙戦を続けていた」と語る。そんなトランプが掲げたのが、「アメリカ第一主義」「移民禁止」などであった。そして、「選挙戦が進む中で、現状に対する不満や憤りが、白人層へと裾野を広げ、ある種の『世直し運動』」になったというのである。

この「世直し運動」とは、すなわち「反オバマ運動」だという。「今の社会が悪いのは皆オバマのせい」であり、やはり白人大統領がいいという感情である。

背景には、人種の問題もあった。1960年代、アメリカの人口は、白人が97.5%を占めていた。ところが、黒人、アジア系、さらにそのほかの国からの移民が台頭していく。そして2010年には、白人の割合は72.4%までに低下した。さらに、2044年には50%を切る。つまり、有色人種がマジョリティになると予測されているのだ。

だから、アメリカの白人層は、恐れを感じている。アメリカで、自分たちがマジョリティからマイノリティに転落することを恐怖しているのだ。

こうしたバックグラウンドが、トランプを、多くの白人たちにとっての「おらが大将」的な存在にした。トランプは、政治家ではない。だから、誰にも気をつかわない、お金もあるから遠慮もないし、組織票も要らない。まさに言いたい放題なのだ。

トランプの歯に衣着せぬ言動を、メディアは批判する。しかし、彼らジャーナリストたちもまた、白人の中間労働層にとって、「甘い汁を吸ってきた伝統的なエスタブリッシュメント」だ、と高濱さんは述べている。だから、ギリギリの生活を送る労働者たちにとっては、「何を行儀のよいきれい事ばかり言っているのか、おまえたちはいいけれど、俺たちはギリギリなんだ」となるのだ。

批判されればされるほど、トランプが支持を集めていった。その要因は、こんなところにもあったのだろう。

そんなトランプ大統領は、この先どうなるのか。もし、トランプが大統領を辞めるとすれば、弾劾や病気ではなく、ペンス副大統領が、「これは、もうムリだ」と合衆国憲法第25条4項を発動するときだと言う。そんなに心配しなくても、4年後にはアメリカは再び正常になる、とも予見する。

だから高濱さんは、アメリカの未来を暗くは見ていない。

前回の大統領選で、クリントンが敗れた。代わりに、「民主社会主義者」を自認する、サンダース上院議員が人気を呼んだ。彼を支持したのは、多くが「ミレニアム世代」だという。

ミレニアム世代とは、1970年代後半から2000年代初頭に生まれた人たちだ。彼らは幼い頃からパソコン、インターネットを使いこなしている。そして、既成のメディアにあまり影響されず、ネット上で世界の若者とつながっている。だから、「グローバルな共同体への帰属意識が強い」という。

「『ポスト・トランプ』に颯爽と登場する、『別のアメリカ』。その中心軸はミレニアム世代」だと、高濱さんは期待を込めて語る。長きにわたってもやもやしていた、トランプについての疑問がようやく理解できた。高濱さんの新刊、『結局、トランプのアメリカとは何なのか』、ぜひとも読んでほしい。


編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2017年11月10日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。

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