外交礼儀を無視した文大統領の「反日劇」

2017年11月11日 11:30

竹島産のエビと元慰安婦の夕食会出席をテーマにコラムを書こうと考えたが、止めていた。そして3日後、やはり情報を資料にしておくためにまとめておくべきだと決めた。日本のメディアでは同テーマは既に大きく取り扱われている。当方もやはり看過できない出来事だと考える。

トランプ大統領と文大統領の共同記者会見(2017年11月7日、ソウルで、韓国大統領府公式サイトから)

先ず、事の経緯を簡単にまとめる。

トランプ大統領は7日、2泊3日の日本訪問後、1泊2日の訪韓のためソウル入りした。ホスト国の韓国の文在寅政権は同日夜、国賓ゲストのトランプ米大統領夫妻のための歓迎夕食会を開催し、そこに、元慰安婦の李容洙さん(88)を招待した。日本メディアによれば、李さんの夕食会参席については事前に米国側に報告されていなかったばかりか、韓国外務省も当日まで部外に置かれていたことが判明した。

常識的にみて、国賓歓迎夕食会に招いたゲスト・リストを土壇場まで自国の外務省に伝えない、といったことは考えられない。それでは誰がオーガナイズしていたのか。韓国大統領府だ。大統領府はホスト国の米国だけでなく、自国の外務省にも報告せずに李さんを勝手に招待し、トランプ大統領に会わせたのだ。

それでは、なぜ韓国大統領府は外務省に報告せず、李さんを招き、トランプ大統領に会わせたのか。文大統領は外務省が李さんの招待、トランプ氏との面会計画に難色を示すと考えたからだろう。

韓国外務省の立場は明確だったはずだ。トランプ大統領の訪韓は対北問題で日米韓の一体化を国際社会に向かってアピールする絶好のチャンスだ。李さんを歓迎会に招待し、トランプ氏に会わせれば、日本側は不快感を示すだろう。日米韓の3国結束という本来の外交目的と一致しない。外務省はトランプ氏の訪韓目的を危険にさらすような冒険は避けたいはずだ。

一方、文大統領は確信犯だ。外務省の抵抗、トランプ氏の訪韓目的などを全て熟知したうえで、李さんを招き、トランプ氏に会わせたのだ。その結果、韓国は日米韓の3国結束という外交目的を台無しにしたばかりか、日韓に不協和音を再発させてしまったのだ。

なぜ文大統領は外交面で非礼となる危険を冒してまで李さんを招き、トランプ氏に会わせたのか。文大統領は就任後も機会ある度に、「2015年の日韓両国の合意には国内で少なからずの反対がある」と指摘し、その見直しを強く示唆してきた張本人だからだ。

当時の岸田文雄外相と尹炳世韓国外相は2015年12月28日、ソウルの外務省で会談し、慰安婦問題の解決で合意に達した。会談後の共同記者会見で、岸田外相は、「日韓両政府は、慰安婦問題について不可逆的に解決することを確認するとともに、互いに非難することを控えることで一致した」と表明。尹外相は、両政府による合意事項の履行を前提に、「この問題が最終的、不可逆的に解決することを確認する」と述べた(読売新聞と時事通信の電子版参考)。

文大統領は最高統治者だ。一部の国民が反対したとしても他国との間で合意した外交内容を維持しなければならない立場だ。国民の一部の声に迎合し、合意内容を一方的に破棄することは統治者として取るべきことではない。にもかかわらず、文大統領は今回、内政問題を外交の世界に持ち込み、外交礼儀を無視したわけだ。

国際通信社が配信したトランプ氏と李さんの出会い写真をみてほしい。写真には文大統領の背中が写っているが、文大統領の笑みが微かに見える。李さんも少し笑みを見せながらトランプ大統領と会っている。韓国紙中央日報(日本語電子版、10日付)によると、ゲストを大統領に紹介する際、トランプ氏の周囲には通訳がいなかったという。極論すれば、トランプ大統領は元慰安婦が夕食会に招待されていること、自分に挨拶した女性が李さんであった事実を知らされていなかった可能性があるのだ。

文大統領が慰安婦問題を米国側に伝えたいとシリアスに考えていたとすれば、李女史が誰で、元慰安婦だったという事実をトランプ氏に通達すべきであったはずだ。文大統領にとってそんなことはどうでも良かったのかもしれない。慰安婦問題は単なる反日攻撃のテーマに過ぎず、日本を国際社会の檜舞台で叩く材料に過ぎないからではないか、といった憶測すら生まれてくるのだ。

夕食会に元慰安婦を招待したことについて、韓国大統領府関係者は、「日韓には慰安婦問題や歴史問題がある。両方を訪れたトランプ大統領にバランスのとれた視野をもってもらう意味がある」と説明したというが、トランプ大統領の訪韓目的には日韓の慰安婦問題は議題に入っていない。穿った見方をすれば、文大統領も李さんも恣意的に間違った場所でその身元を明確にすることなく、「トランプ米大統領が元慰安婦に会った」という事実だけを願ってトランプ氏に近づいたのではなかったか。

竹島産エビ問題は余りにも子供っぽいテーマだ。日本と韓国が領有権を主張する島根県の竹島でとれたエビを料理しなくても、素晴らしい韓国料理が多数あるはずだ。文大統領の国内の反日活動家向けのアリバイ工作に過ぎない。ちなみに、文大統領が李さんを招き、竹島エビを夕食のメニューに忍ばせた反日劇を最も大声で笑っているのは北朝鮮ではないだろうか。

韓国の外交は文政権下では内政によって変質され、大統領は国民を啓蒙するどころか、一部勢力に迎合するだけだ。韓国に高い見地からの外交は期待できないことを再度、明らかにしてしまった。

日韓両国に横たわっている問題は、「歴史問題の認識」ではなく、韓国側の日本民族への消し難い劣等感だ。竹島産エビも李さんの招待も、そのことを悲しいほど端的に示している。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年11月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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