主張も批判も、「反証」を取り入れれば格段にレベルが上がる!

次の問題を考えてみてさい。

各カードの一面にはアルファベットが、反対の面には数字が書かれており、カードの両面の関係はある規則が成立している。「もし、カードの片面がアルファベットの母音ならば、そのカードの裏面は偶数である」という規則が成立しているかどうかを調べるために、以下の4枚のカードのうち、少なくともどのカードをめくればいいか?

E  K  4  7

多くの人にこの課題を与えたところ、大多数がEと4を選択したそうです。
母音のアルファベットEのカードをめくって奇数ならば規則は成立しません。偶数ならば一応成立しそうです。

偶数のカード4の裏が母音のアルファベットであれば、規則が成立しているという仮説が支持されるからでしょう。

しかし、Eのカードをめくって偶数が出たなら、7のカードをめくる必要があるのです。
「E→偶数」であれば、前提となる規則が成立しているように見えます。
しかし、「7→母音のアルファベット」であれば規則は成立していないことになるのです。
つまり7をめくることは「反証」の存否を確認する作業なのです。

これは対偶でも説明できます。
「人間なら動物だ」の対偶は「動物でなければ人間ではない」というふうに、「A→B」に対する対偶は「Bでない→Aでない」というものです。
反証とは対偶が成立するか否か確認する作業です。
「偶数ではない7→母音ではないアルファベット」というように。

どうして大多数の人がEのカードの次に4のカードを選択したのでしょう?
これは「確証バイアス」といって、自分の選択を補強する証拠を探そうとする人間心理の傾向なのです。

ぶっちゃけていえば、自分が立てた仮説を支持する材料ばかり集めるようなもので、ネット検索が容易にできるようになってから、その傾向がますます強まったようです。
逆に、反証を探そうとしない傾向も増えています。

もちろん私も「確証バイアス」から逃れることはできません。
具体例として、昨日の記事の「不動産仲介手数料を実質自由化して競争を促せば、不動産の流動性が高まる」という仮説の反証を考えてみましょう。
反証は「不動産の流動性が低ければ、仲介手数料は高止まりして競争は起こらない」となります。

私としては、不動産の流動性が低ければ、仲介業者の案件数が減少するので一件あたりの仲介手数料を高めにとって事業継続のインセンティブが働くと考えました。

しかし、この反証はとても心もとないものです。
「不動産の流動性が低くなれば、案件の奪い合いになって仲介手数料の引き下げ合戦が起こる」と考えることもできるからです。

しかし、そうなるとゲーム理論の安売り合戦のように業界全体が消耗してしまいます。
おそらく全宅連が(非公式に)手数料引き下げ合戦を牽制するのではないかと考えました。

ともあれ、持論を主張するときには「確証バイアス」にとらわれて補強証拠ばかり探すのではなく、反証が成立するか否かを確認することが重要です。

主張に対する批判も、「反証の成立」を示すことこそが最も重要です。
感情的な批判をする前に、是非とも考えてみてくださいね。

説得の戦略 交渉心理学入門 (ディスカヴァー携書)
荘司 雅彦
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2017-06-22

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年11月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。