行政事業レビューでEBPMを取り上げた

秋の年次公開検証(秋のレビュー)は15日に二日目を迎えた。午前中は「EBPMの試行的検証」と題して、梶山担当大臣も出席し2コマにわたって議論が行われた。

EBPM(Evidence Based Policy Making:根拠に基づく政策形成)は行政事業レビューでは初めての試みである。

政策は最初に「そもそも行うべきか?」を考える必要がある。Yesであれば「ヒト、モノ、カネ」が投入され計画した事業が実施される。政策目標を達成する方法は一つとは限らないため、最適な方法を選択するために期間や対象を限定していくつかのモデル事業を実施する場合がある。それでは、どのモデル事業が成果をあげ、全国展開に適したものなのだろうか。

1コマ目で検証の対象となったモデル事業の中には、成果指標が事前に明確に定められていないであるとか、成果指標の評価方法があいまいなものが見受けられた。たとえば、情報通信技術を利用することで製造業を強化する「スマート工場」の取り組みであれば、生産性がどれほど改善されたかが成果指標のはずだ。しかし、工場における生産性は秘密性が高いという理由で、対象事業は生産性で直接評価するのを避けていた。これでは複数のモデル事業の優劣は判断できない。

評価指標があると優劣がわかるが、その結果「失敗」と評価されるものも出るだろう。そのモデル事業を実施したことは「行政の無駄遣い」だろうか。それは違う。早い段階で失敗と棄却できるのは大々的に実施してから失敗が判明するよりもずっとまし。複数のモデル事業が試行されていれば、社会的なインパクトが高まると期待される方法が選択されて全国展開される。EBPMでは、行政は失敗しない(行政の無謬性)という「神話」を捨て去る必要がある。

評価指標をあらかじめ定める重要性については評価者が繰り返し指摘し、梶山大臣もまとめの中で言及された。また、梶山大臣は事業の直接的な結果と外部要因が生み出した結果を分別する重要性も指摘された。

政府組織について縦割りの弊害が繰り返し指摘されてきた。これに対して、省を超えてロジックモデル(事業を開始するところから社会的なインパクトが生まれるまでのストーリー)や評価指標が整合するように求めることにEBPMの特徴がある。これを象徴するのが2コマ目に取り上げた厚生労働省と国土交通省による建設業の人材確保・育成事業である。

複数の府省が同じ目的で異なる施策を展開しているわけだが、そもそも、建設業に従事する労働者数について政府はどのような目標を持っているのだろうか。両省の事業はその目標達成に何割ずつ貢献するのであろうか。ロジックモデルを両省で共有しているだろうか。事業の成果を評価する指標は共通しているか。

わが国でのEBPMの取り組みは緒についたばかりである。今回のレビューでも「試行」という言葉が添えられた。しかし、この記事に紹介したようにEBPMが定着していけば、より論理的に、より効果と効率が高い政策が省の壁を越えて選択されていく可能性が増していく。